恋愛で傷つきたくない女子たちよ、マジそれで後悔しないのか、本気なのか

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』2巻16ページより

少女マンガ研究家の和久井香菜子さんが、マンガの登場人物にフォーカスし、恋愛を読み解いていくこの連載。
イケメンキャラや恋愛模様に萌えつつ、ちょっぴり自分の人生を一緒に見つめていきましょう。

第12回目のテーマは『黒薔薇アリス』の菊川梓と生島光哉です。

前回:イケメンや憧れの相手とは少し距離を置いたほうが幸せな理由

恋愛がずっとうまくいくかなんてわからないよね

仕事で恋愛専門の探偵さんに取材に行ったときに聞いたのですが、恋愛って歳をとるほど長続きするらしいです。

確かに年齢を経ると人との距離の取り方も分かってくるし、相手に過剰な期待もしなくなる。付き合うまでの敷居は高くなるけど、付き合い始めたらじっくりいくそうです。

『黒薔薇アリス』のヴァンパイアたちは、永遠の命ではないけれど、人間に比べればずっと長い。そして「この人」と決めた相手と沿うのだそうです。なんかめっちゃステキですね。

リアルでは、相手の気持ちが永遠に続くかなんて分からないけど、相手の気持ちが真剣かどうかは心配です。でも「ずっと私のこと好き?」とか聞いても意味ないですよね。未来のことなんて誰も約束できません。だいたい調子のいいこと言う人ほど信頼できない気もするし。

  

相手の気持ちが分からないもどかしさ

だから、最初から「可能性の低い相手」を排除してしまう人もいるようです。

そういう「大人の判断」をして、狂おしいほど言い寄ってきた男子の思いを受け止められなかったのが、『黒薔薇アリス』の高校教師・菊川梓。教え子・生島光哉は、不器用で実直な梓に惹かれ、猛烈にプッシュします。

でもそれを梓は真に受けないように、真剣にならないように自分に言い聞かせます。なぜなら2人とも「魂が魂に惹かれた」というくらい恋をしていたからです。

うう、切ない……。

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』2巻30ページより

この世に「相手の気持ちを確かめる方法」なんてないんですよね。カメラのようなものを覗いたら、相手の気持ちが文字になって見えたらいいのに。

だけどそんなことできないから「歳が違うから」「環境が違うから」って自分で理由をつけて、自分がなるべく傷つかないように先回りしちゃうんですよ。

昔は私も「なるべく傷つかないように安全パイな恋愛したい」なんて思ってました。

でも、そんなこと言ってたらチャンスを失うだけなんです。未来がどうなるかなんて分からないのだから、今、自分の心の底で願うことをすればいいんです。

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』2巻16ページより

「常識」に惑わされずに自分の気持ちを見つめて

たいていの人は、世間体とか常識に惑わされて、本当に自分がしたいことが見えません。常識なんて、時代や場所が変われば一変するのに!

今、常識的じゃないと言われることでも、10年後には当たり前になっているかもしれないんです。そんなことで自分の人生を決めてしまったらもったいないでしょう。

自分のことで言えば、子どもの頃は「マンガを読むとバカになる」なんて言われていました。マンガばっかり読んで怒られたりして。でも誰があの当時、将来「少女マンガ研究」なんて仕事ができるなんて考えたでしょうか。常識に囚われた親の言うことなんか無視して本当によかった。マンガが好きだからいっぱい読んだ……ただそれだけだけど、今に繋がっています。

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』2巻19ページより

さてここからは少しネタバレです。

梓は、自分の立場や相手の年齢を考えて、光哉の気持ちを真っ向から受け止めることができなかった。そうして別れ話をしている最中に、2人は事故に遭ってしまいます。光哉は亡くなり、梓は生き残るのですが、ヴァンパイアのディミトリが梓に、「光哉を生かす代わりに梓の魂を差し出し、抜け殻になったアニエスカの体に入り込んで欲しい」と駆け引きを持ち込みます。こうして光哉は生き残り、梓の身体は亡くなってしまいます。

光哉を想ってディミトリとの駆け引きに乗った梓ですが、それが光哉の人生を一変してしまった。自分が梓を追いかけたせいで事故に遭った、自分のせいで彼女を死なせてしまったと、光哉はずっと苦しみ続けているんです。

うう、切ない……。

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』2巻92ページより

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』2巻96ページより

恋は当たって砕けよう!

物語に「もし」というのもおかしな話ですが、少し考えてみましょう。もし梓が事故に遭い、光哉が亡くなってしまうことを知っていたら、どうするか。恐らく光哉の気持ちを正面から受け止めたのではないでしょうか。期限の見えている関係です。光哉の気持ちが冷めるんじゃないかとか、年齢がとか、余計なことは考えなかったはずなんです。

そこでもう1つ考えたいのです。あなたはもし明日、自分か相手が亡くなってしまったとして、それでも後悔しない選択をしていますか?

恋愛だけに限った話じゃないんですが、過去でもなく、未来でもなく、今現在を生きて楽まないといけないんです。「後悔」って、全力を尽くさなかったことに対して起きる感情ですから。

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』2巻20ページより

結局、梓が光哉を受け入れなかったことで、彼女は幸せにはなっていない。だったら、いずれ来るかもしれない恋の終わりを受け入れるのと、どちらが不幸だったかなんて分からないじゃないですか。

人生に一度くらい、我を忘れるくらい夢中になる恋をしてみたいですよね。

好きな人がいたら、当たって砕けましょう。もし傷ついたら少し休んで、次を探せばいいんだから。

水城せとな(著)『黒薔薇アリス』はこちら。

WRITER

  • 和久井香菜子
  •        

  • 大学の社会学系卒論で「少女漫画の女性像」を執筆、以来少女マンガ解説を生業にする。少女マンガの萌えを解説した『少女マンガで読み解く乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。視覚障害者によるテープ起こし事業「ブラインドライターズ」運営。

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