元気の連鎖が生み出す幸せな関係――ドラマ『初めて恋をした日に読む話』第5話

日刊サイゾー

2019/2/13 23:00


(前回までのレビューはこちらから) 

愛にはいろいろな種類がある。

男女の情愛、親子愛、師弟愛など、「相手を思い、慈しむ」という点では共通しているが、それぞれに微妙な感情の違いが出てくる。

ただし、それが、どの愛なのか明確にするのは難しい。なぜなら、多くの場合、一つの感情だけではなく、複数の思いが複雑に絡まっているからだ。

時として人は、その愛がどのような種類のものなのか、理解しきれずに悩んでしまったりする。ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第5話。登場する人たちはみな、そんな思いに振り回されているようだった。

塾の強化合宿中、インフルエンザになってしまった順子(深田恭子)と匡平(横浜流星)。隔離された部屋で寝ていた二人だったが、それを知った従兄弟の雅志(永山絢斗)は、その部屋で一緒に寝て、インフルエンザを移されてしまう。

もちろん、雅志の行動は、順子と匡平の仲を心配してのことだが、相変わらず無自覚な順子は、そんな雅志を「父性本能によるもの」と思い込む。そして、合宿中に見られた、匡平からのアクションも、全て「師弟愛」によるものだと考えているのだ。

ここで、「いやいや、匡平の思いは完全に恋愛感情だろ!」とツッコミを入れることは簡単である。ただ、ちょっと考えてみてほしい。彼の中には、本当に恋愛感情しかないのだろうか?

女性としての順子に魅力を感じていることは確かだろう、しかし、いざとなった時に自分を守り、悠然と意見を言う姿に、「人間愛」のようなものも感じてはいないだろうか。そして、順子の思っている「師弟愛」だって感じているはずである。それは、自分に生き方を教えてくれた人に感じる、自然な感情だから。

つまり、匡平の順子への思いは、それらの複雑な感情が絡み合ってできている。そして多分、匡平自身も、その気持の整理ができていないのだ。

今回、もう一つキーになっているのは「元気が出る」という言葉だ。

学校の図書室で勉強中、スマホで順子の写真を見る匡平。その姿を見た担任の山下(中村倫也)に問われると、「元気が出るんです」と答える。

「好きなんです」でも「ずっと見ていたいんです」でもない。しかし、それは、どんな言葉よりも強く、彼の気持ちを表しているように思える。

塾では、現代文の教習が行われていた。文章を読んで、作者の意図を答えるという問題。順子は、「自分の主観はなくし、相手の気持を先入観なく理解しなければならない」と教える。このシーンは非常に面白いところだ。なぜなら、周りの人の自分に対する思いを一番理解できていないのは、他ならぬ順子なのだから。

模試に向けて、数学の強化が必須だと考えた順子は、雅志に指導を仰ぐことにした。雅志がアドバイスしたこと、それは、「徹夜はしない」「テスト時間に合わせ、朝方生活をする」「数学はスケッチブックを使う」ということだった。

雅志の家からの帰り、匡平とともに自宅に寄った順子は、母親(檀ふみ)と遭遇する。匡平を見た母は、「あんな子が簡単に東大に受かるわけない」と言う。それに対し、順子は「私の生徒を否定することは許さない!」と強く言い返したのだった。自分が責められたときよりも、はっきりと感情をぶつける順子。そんな姿に母親も戸惑う。

母親との関係がこじれた順子を心配し、匡平は電話をかける。そして言うのだ。「元気?」

順子は答える。「今元気になった」

匡平の言葉によって、順子が励まされ、順子の言葉によって匡平はまた励まされる。相手を思いやった上で、励ましが連鎖となり、元気もまた連鎖する。実に美しい姿だ。愛の作用というのは、実はこういうことではないかと思う。

一方、山下は妻との離婚を決断し、バツイチとなった。離婚届を提出したことを伝え、相手を案じる山下に、妻から届いた返信は「ここ数年で一番元気なくらいです」というもの。ここでもまた、「元気」という言葉が使われる。彼と別れて自由になり、そして元気になる。愛情がなくなっていることを示すものだろう。

順子と飲みに行った山下は、そこで離婚したことを告げる。順子は「無理して笑わなくていいよ」と言って、杯を重ねるのだった。酔いつぶれて、帰途についた二人は、順子の部屋までたどり着き、そこで寝入ってしまう。

翌朝、目覚めた順子は、驚いて、一緒に寝ていた山下のことを布団とテープでぐるぐる巻きにしてしまうのだ。

落ち着いた二人は、家を出て向かい合う。その様子を、訪ねてきた匡平に見られてしまう。匡平は、自分に合わせて早起きをしているという順子を思い、毎朝彼女の家の前に来ていたのだ。山下に、匡平の気持ちについて諭された順子は、今までの出来事を振り返り、自分がこれまで匡平の思いを弄んでいたような行動をとっていたことに気づき、頭を抱えるのだった。

今回は、山下が順子にぐるぐる巻きにされているというシーンから始まり、その「タネ明かし」をするような構成で物語が進んでいった。毎回、何かしらのギミックを入れてくるところに、制作側の工夫が感じられる。

そして、その工夫は、深田恭子の魅力をどう引き出すか、という点にも置かれている。今回で言えば、順子が林修のキャラを真似て「今でしょ!」というシーンや、ラストの、今まで匡平にしてきたことを思い出し、「私、全部0点じゃーん!」と叫ぶシーンなど。彼女のコメディエンヌとしてのキャラを存分に引き立てている。

来週以降、三人のバトルは激しさを増し、順子も身の振り方を考えざるをえなくなるだろう。巧みな構成によって、深田恭子自身の魅力をどう引き出してくれるかも含め、期待していきたい。

(文=プレヤード)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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