世界初のクラフトコーラ専門メーカー「伊良コーラ」を飲んできた【前編】

日刊サイゾー

2019/2/13 21:00



コーラが好きだ。無性に飲みたくなってコンビニに急ぎ、店の外に出るなりグビグビ飲む。すると、いつも「こんなおいしい飲み物って、ほかにないよな」と思う。私は酒が好きだが、ビールとコーラ、どっちがおいしいかと聞かれたら、迷わずコーラを選ぶ。ビールは苦い、コーラは旨い。

コーラといえば日本コカ・コーラ株式会社が販売する「コカ・コーラ」、サントリー食品インターナショナル株式会社が販売する「ペプシコーラ」が思い浮かぶ。また、そのほかにも国内外のさまざまな飲料メーカーが独自のコーラ飲料を作っていて、なんとなく“コーラ味”というところは共通していながら、それぞれに細かな風味の違いがある。筆者が子どもの頃、UCCから「ジョルトコーラ」というコーラ飲料が発売され、ちょっとほかとは違う刺激的な味で好きだった記憶がある。

一説によれば世界にはおよそ1万種類ものコーラ飲料が存在するそうなのだが、そんな中、日本にたった一人でゼロから作り上げた“クラフトコーラ”があるという情報を耳にした。そのコーラの名は「伊良(いよし)コーラ」。

その「伊良コーラ」を飲むためには都内を中心に主に土日に行っているというキッチンカーでの移動販売を利用するか、吉祥寺の映画館「アップリンク吉祥寺」で提供されているものを購入するという方法があるそうなのだが、今回は特別に「伊良コーラ」が作られている工房を訪ねて飲ませてもらうことができた。

こちらが東京都新宿区にある「伊良コーラ」の工房。

ドアを開けると、スパイスらしきものがたくさん入った瓶が目に入ってくる。

そしてこちらが、「伊良コーラ」の生みの親であるコーラ小林さん。

――今日は、よろしくお願いします!

「まずは『伊良コーラ』を飲んでいただくのが一番だと思いますので、ぜひ味わってみてください」

コーラ小林さんはそう言って、「伊良コーラ」のパッケージ を用意してくれた。底の方にたまっている濃い茶色の液体が「伊良コーラ」の原液。

ここに氷と炭酸水を注ぎ、レモン果汁を加える。

ちなみに普段、移動販売車で提供している「伊良コーラ」はオリジナルの炭酸水に輪切りのレモンを加えているが、今回は簡易版で作っていただいた。

グッと飲んでみる。

わっ旨い!

コーラといえば確かにコーラの味なのだが、もっと奥行きのある味わいなのだ。シナモンの風味が最初にきて、その後にさまざまなスパイスの味わいが時間差で口の中に広がっていくような。平面的な味わいではなく、いろいろな風味が絶妙なバランスで配合されているのがわかる複雑な味。

スパイスの粒々した感じが飲んでいて気持ちよく、なんだか体に良いものを飲んでいる、という感じ。移動販売では1パッケージ500円、「アップリンク吉祥寺」では550円で販売しているという。

――おいしいですね! コーラだけど、今まで飲んだことのあるコーラ飲料とは全然違います!

「ありがとうございます。だいたい15種類ぐらいのスパイスを独自の調合で混ぜ合わせて、コーラの実をすりつぶしたものを加えて味を作っています」

――その「コーラの実」というのが、この味を生んでいるんですね?

「いえ、コーラの実そのものは、あまり味には影響していないんですよ」

――あ、そうなんですか? コーラというからには、その「コーラの実」の味なのかと。

「『コカ・コーラ』は1886年にアメリカの薬剤師だったジョン・ペンバートンが開発したものなんですが、『コカの葉』と『コーラの実』を配合していたんです。その2つは薬効成分として入れられていたもので、当初は滋養強壮剤のように飲まれていたんです。『コカ・コーラ』という名前は、そういうものが配合された飲み物であることを示すセールスポイントをアピールした名前というか、例えば『リポビタンD』という名前だと、ビタミンが入っていることが伝わりやすいじゃないですか。そういう感覚でつけられた名前なんです。コーラの実の味自体は結構苦くて、あまりおいしいものではないんですよ」

――そうなんですね。いきなり勉強になりました!

「これがコーラの実です。日本では一般的には販売されていないもので、これを手に入れるのが大変なんです。私の場合はガーナの領事館に連絡していろいろとやりとりさせていただいた結果、個人で輸入することができたんです」

――貴重なものなんですね。コーラに入れる以外に、使い道はあるものなんですか?

「アフリカではそのままポリポリとかじって、滋養強壮に良いものとして食べられたりもしているんですけどね」

――そもそも「伊良コーラ」さんみたいに個人で作る「クラフトコーラ」っていうものは、ほかにも存在するものなんですか?

「いや、世界的にもないと思います。『簡単に手に入るものでコーラの味を再現してみよう!』みたいなことを試みとしてやっている人はいると思うんですが、コーラの実をわざわざ個人で輸入してすりつぶしてっていうのは、ないと思います」

――なぜ、そんなことをしようと思ったんですか?

「学生時代に世界のいろいろな国を放浪している時期がありまして、もともとコカ・コーラが好きだったんですが、世界のコーラを飲み比べて、味の違いを知ったりして、ますますコーラが好きになっていったんです。そんな感じでずっと一コーラマニアだったのです
が、ある日、たまたまコカ・コーラの秘伝のレシピがネット上に公開されているのを目に
して、作ってみようと」

――そのレシピ通りに作れば、「コカ・コーラ」の味になるものなんですか?

「いや、全然うまくいきません(笑)。例えばスパイスひとつとっても、ホール(スパイス本来の形)で使うか、すりつぶしてパウダーにして使うかで、味が全然違うんです。最初は、味がぼんやりしてしまって。ただ、私は北海道大学の農学部で勉強していたこともあって、自然の調味料であるスパイスにも興味がありましたし、漢方の職人をしていた祖父の影響もあって、何かを調合するということが好きだったんです」

――調合好き! なかなかいないですよね(笑)。

「そうですね。祖父の影響は、とても大きいんです。理想の味を作る上で、祖父が仕事で使っていた焙煎の技術を応用したらうまくいくようになりまして、それでも納得のいく味に近づけるのに3年ほどはかかりました」

――その漢方職人だったおじいさんは、どんな方だったんですか?

「祖父は伊東良太郎という和漢方の職人で、今のこの工房も、祖父が『伊良葯工(いよしやっこう)」』という工場をやっていた場所なんです」

「祖父は私が25歳の時に93歳で亡くなったのですが、私が幼稚園に通っていた頃、よく祖父の手伝いをしていたんです。祖父の仕事は、漢方薬の材料となる生薬を入手して、加工していろいろなところに卸すというものだったのですが、その作業をよく手伝っていたんです」

――幼稚園の頃にそんあ作業を手伝っていたと。それは……楽しかったんですか?

「それが結構楽しかったんです(笑)」

――幼い頃から漢方とか調合とか、そういうものに触れてこられたんですね。貴重な経験ですね。

「「ただ、それから小学生高学年になって中学高校と成長していく中で、弁護士や医者みた
いな、いわゆる社会的なステータスがあると言われる仕事をかっこいいと思い込むように
なり、祖父の仕事が時代遅れなものに感じたこともあったんです。好きでやっていた手伝いもしなくなって……。でも、大学に入って世界中の人々と知り合ったり、自分自身が会社に勤めるようになって、改めて祖父の仕事に対する姿勢を尊敬するようになってきました」

――それが今は同じ場所で、おじいさんの影響も受けながらオリジナルコーラを作っているわけですもんね。運命を感じるような話ですね。

「祖父は仕事に妥協しなかったですし、いつも自分の物差しを持っていたので、そういう姿勢には影響を受けています。それに漢方の原料である生薬とスパイスって、かなり近いんです。例えばシナモンは桂皮という生薬で、クローブは丁子ですし、共通するものが多いんです」

――コカ・コーラの味に影響を受けつつ、漢方の要素を取り入れたものが「伊良コーラ」ということですね。確かに、体に良いものを飲んでいるような気がしました。

「体に良いコーラ、体調を整えるコーラとして飲んでもらいたいんです。日々の仕事で疲れた時に飲んでもらったりとか。受験生が勉強で疲れた時に、お母さんが出したりするような。例えば、コーラの実だったらリラックス効果や滋養強壮、カルダモンだったら胃腸の調子を整える、コリアンダーだったらデトックスとか、いろいろなスパイスの効能がぜんぶ詰まってますから! 美味しさと機能面、両方を追求したいですね」

――さっき飲ませていただいて、心なしか体が温まってきたような気がします。

「ショウガも入っていますので、それはあると思います。冬はショウガを多めにしたりですとか、調合のバランスは、いろいろと今も変化しています」

――なるほど、調合のバランスで微妙に味わいを変えたりとか、そういうことができるのもクラフトコーラならではの面白さですね。

「そうです。特別なオーダーに応じて作り替えることもできます。例えば特定の地方の名産のフルーツを使って、その土地だけのオリジナルコーラを作ることもできますよ」

(後編へ続く/取材・文=スズキナオ)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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