弁護士が解説! 「仮想通貨に関する法規制の今後」と「投資する際の注意点」


●2019年は仮想通貨に関する法律が変わる?
近年、仮想通貨の普及は世界中で進んでいます。仮想通貨を発行することで資金を調達する「ICO(Initial Coin Offering)」と呼ばれる方法なども登場し、仮想通貨に関連するビジネスもさまざまな形で急速に増えています。しかし、仮想通貨に関する法規制は完全に整っているとは言い難い状況であり、今後の動向からも目が離せない分野だと言えるでしょう。

そこで本稿では「仮想通貨に関する法規制の今後」について、仮想通貨やブロックチェーン法務に精通しているグローウィル国際法律事務所の中野秀俊弁護士にお話を伺いました。

○仮想通貨に関する日本の法律はまだまだ曖昧

――中野弁護士が仮想通貨の存在を知ったのはいつごろだったんですか?

初めて知ったのは、2012,3年頃です。仕事として仮想通貨に関わるようになったのは2015年頃からで、特にご相談が多かったのは2017年から2018年の前半ですね。ブログを書いているので、その記事を見てお問い合わせをいただいたり、ご紹介いただいたりすることも多いです。

――どんな相談内容が多いのでしょうか?

企業様からのご相談が多いですね。「日本のライセンスを取りたい」「ICOを始めたい」「ブロックチェーンを使ったサービスを始めたい」という内容が多いです。企業様だけでなく、個人の方からもご相談いただいています。

――日本では2017年4月に改正資金決済法が施行され、いわゆる取引所については仮想通貨交換業者として金融庁への登録が必要になりましたが、ICOについての規制はないですよね? ICOを全面禁止している国もありますが。

日本ではICOに関する法律はなく、解釈で規制しているのが現状です。2017年10月27日に、「ICOについて ~利用者及び事業者に対する注意喚起~」という文書が金融庁から出されています。解釈で規制するのは限界がありますから、今年の1~6月の通常国会で仮想通貨やICOに関する法律が成立するのではないかと言われていますね。2019年は、日本の法律的な観点では仮想通貨にとって重要な年になると思います。

「発行するトークンが法律上の仮想通貨に該当するか?」という問題はあるのですが、今後はICOを行う企業にも仮想通貨交換業者の登録が義務付けられるかもしれません。

あまり知られていないかもしれませんが、法律上の仮想通貨には「1号仮想通貨」と「2号仮想通貨」という分類があります。

■1号仮想通貨物品を購入、もしくは借り受け、またはサービスの提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの■2号仮想通貨不特定の者を相手方としてビットコインなどの仮想通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

1号・2号ともに、「不特定の者に対して」というのがポイントですね。この「不特定の者」というのは、金融庁ガイドラインでは以下のような要素を考慮するとされています。

・発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか

・発行者による制限なく、本邦通貨または外国通貨との交換を行うことができるか

法律上の定義は曖昧なのですが、「トークンは仮想通貨である」という解釈で規制されているのが現状です。早ければ、今年の国会でそのあたりが明確になっていくと思います。

――法律が曖昧ということですが、それに対して仮想通貨の関連企業やICOを行う企業が訴訟を起こすことはないんでしょうか?

刑事罰になったケースはないです。裁判になると法律の解釈論になるのですが、無罪になるとある意味お墨付きを与えることになりますから、解釈による規制でプレッシャーをかけているような状況ですね。

「発行者がいる場合は仮想通貨ではない」という解釈も出ているのですが、2017年に施行された改正資金決済法は、ビットコインなどのメジャーな仮想通貨を想定して定義されています。ICOは想定していなかったのでしょう。しかし、ICOによる被害者が出ている。政府としては、被害の拡大を止めたい。にも関わらずICOに関する法律がない。だから、解釈による規制で止めている。というのが現状です。

――政府としてもなかなか悩ましいのでしょうね。既存の法律では規制できないのでしょうか。

ファンドの場合は、金商法(金融商品取引法)の範囲になります。第二種金融商品取引業の登録が必要になりますね。しかし、投資家から仮想通貨を集めて事業を行い、投資家へ分配することについてはグレーです。仮想通貨については金商法に書かれていません。書かれていないからOKなのかNGなのか、これも解釈になってしまいます。抜け穴をなくすためにも、既存の法律で仮想通貨を規制するより新たに法律を作るほうが良いというのが政府の考えなのだと思います。

過去には例えば、セナー(SENER)事件という出来事がありました。仮想通貨で出資を募り、配当を出すと謳っていた投資グループ「セナー」を運営していた日本人が逮捕された事件です。全国で5,800人以上が仮想通貨や現金で投資を行い、約83億円が回収不能になっているとされています。

この事件で立件されたのは、現金で出資されていた部分のみでした。仮想通貨での出資は法律で明記されていないので、立件しても裁判で無罪になる可能性があります。そのため、確実に法律に違反している現金での出資のみでの立件となった、というわけです。もし全てが仮想通貨での出資であれば、立件できなかったのではないかとも言われています。

●仮想通貨に投資する際の心得
○ICOに投資するとき、絶対にやってはいけないこと

――これからICOに投資をする人は、どんなことに注意すれば良いのでしょうか?

日本企業や日本の代理店がICOを行う場合は、日本の法律が適用されます。「法律を守っていない企業のICOには投資しない」というのも重要ですね。違法性がある企業に投資するのは、投資家であれば避けるのが普通だと思います。金融庁から指摘が入るかもしれませんし、現金での出資を行うファンドは第二種金融商品取引業の登録がないと金商法違反になります。指摘や違法行為によって、ICOプロジェクトがおじゃんになる可能性がありますからね。

――私は友人からICOへの投資話を提案されることも多いのですが、中野弁護士だったらそのような話をどう判断しますか?

日本で登記している日本法人が行うICOの場合は注意が必要ですね。日本の法律が適用されますので、今後は金融庁への登録が必要になるはずです。海外法人のICOでも、日本での営業活動はNG。これは保険商品と一緒です。日本支社が必要になり、日本支社が金融庁へ登録する必要が出てくるでしょうから。法律が施行されると、日本でのICOはかなり規制が厳しくなると思います。それに耐えうる企業かどうかが判断ポイントになるかもしれませんね。

――投資する側が罰せられることはあるのでしょうか?

投資家は、買う分には罰せられません。投資はあくまでも自己責任ですから。仮想通貨投資やICO投資は株式投資と似た部分がありますが、ICOの成功確率が下がっているというのは、株式投資でいえば企業の倒産リスクが高まっているということです。株式投資の場合は、証券取引所に上場するまでさまざまな審査を経ています。しかし、仮想通貨の場合は必ずしもそうではありません。

例えば、私が「NAKANOコイン」を発行して、日本の取引所(仮想通貨交換業者)に上場させるとします。その場合、取引所は金融庁からNAKANOコイン取り扱いの了承を得ないといけません。しかし海外の取引所では、お金を払えば上場できてしまう可能性もあります。取引所に上場したからといって、イコール安全なコインではないんです。

――日本のように取引所(仮想通貨交換業者)の登録の義務がない国も多いですからね。

そうですね。日本で仮想通貨を買おうと思ったら、日本の取引所で買うのが一般的だと思います。2017年のコインチェック事件以降、既存の取引所も指摘を受けて改善に向けて努力しています。仮想通貨交換業者の一覧は金融庁のホームページで見られますから、投資する側としてそこは最低限チェックしないといけませんね。価格の保証はできませんが、日本で登録されている仮想通貨交換業者で扱われている仮想通貨は、少なくとも金融庁が存在を確認した仮想通貨ではある、ということです。
○自己管理できないなら、仮想通貨に投資してはいけない

――中野弁護士は仮想通貨をどのように保管していますか?

自分のウォレットで管理しています。どう保管するかは重要ですよね。コインチェック事件のような流出事件が起こると、取引所が業務停止となり、自分の仮想通貨を引き出せなくなるかもしれませんので。また、取引所を運営している企業の倒産リスクもあります。破産手続きを行う場合は余った財産を分配する形になりますが、倒産するということは財産がないケースも多いですから、投資したお金が返ってくるほうが稀です。

実は、「海外の取引所に仮想通貨を預けたままにしており、返ってこない。引き出せない」というご相談をいただくことも多いです。海外の取引所ですとメールや書類は英文ですので、英語が読めない方や自信のない方からのご相談もいただいています。

そのほかに多いケースは、「マネーロンダリング防止の観点から、お金の出所(ルート)を明確にしてほしい」という海外の取引所からの連絡です。弁護士の認証が必要な場合もあり、それについては弊社で対応可能です。英語の長文なので不安になると思いますが、しっかりと対応すれば引き出せることもありますので、まずはご相談していただきたいですね。

――基本的には自己管理が大切ですね。

そのとおりです。取引所にはなるべく置かない。自分のウォレットで管理する。英語の長文に萎縮せずしっかり対応する。といった自己管理の姿勢が大切だと思います。株式投資や銀行預金とは違い、仮想通貨の投資や管理はまだまだ自己管理が重要です。
○専門弁護士でも難しい仮想通貨やICOの見極め

――中野弁護士から見て、仮想通貨にはどんな課題があると感じますか?

冒頭にも述べましたが、法規制が不明確であることですね。解釈によって規制している状況は徐々に変わってくると思いますが、仮想通貨は新しい技術ですから、法整備が追い付かない可能性もあるでしょう。規制が緩いということは、メリットとデメリットがあります。

メリットは、大きく成長する・価値上昇する可能性があること。デメリットは、ICOプロジェクトが中止になったり、取引所の運営会社が倒産したりして投資した資産を失う可能性があることです。

仮想通貨やICOは法的にグレーな部分もまだまだ多いですが、投資家として法律に抵触する可能性があるものに投資するのは疑問ですよね。登録している取引所でも問題は起こっていますので、「株やFXなどの既存の投資とは違う」という認識を持つことが大切だと思います。

――2017年は仮想通貨祭りのような熱狂的な状況でしたが、ブームに乗ろうと盲目にならずに、投資における基本的な姿勢やマイルールを持つことが重要かもしれませんね。

全資産を仮想通貨に投資した人もいたと思います。それは自殺行為ですし、投資というよりも投機ですよね。生活費まで突っ込むようなことは止めてほしいです。月に数万円を積立方式で投資するなら悪くないかもしれませんけど。
○知らないものに投資するのは絶対にダメ

――取引所やICOの見極めについてはどう思いますか?

日本の取引所については、必ず金融庁のホームページで登録業者であるかどうかを確認していただきたいです。

海外の取引所については、仮想通貨の種類が豊富などのメリットはあるのですが、当然リスクもあります。一定期間取引をしていないと、取引停止になることがあります。メールで通知が届くはずですが、その英文を読めず対応できない方もいらっしゃると思います。そのような事態を想定して、相談できる人を側に置くことも大切ですね。ただ、海外の取引所の場合は日本のように規制がない国もありますので、判断はなかなか難しいと思います。

ICOについても、判断は難しいです。「ICO詐欺に遭った」「塩漬け状態になっている」「発行元と音信不通になった」「ICOプロジェクトが頓挫した」というご相談もいただきます。案外多いのは、「よくわからないけど儲かりそうだから投資した」というケースです。

最低でも、ICOを行う企業が発行しているホワイトペーパー(事業計画書)はよく読むべきです。英文なのでハードルはあるのですが、投資対象のビジョンや仕組み、発行枚数などは知るべきだと思います。「知らないものには投資しない」という基本姿勢を持つことですね。仮想通貨バブルがあったので、「乗り遅れちゃいけない」という心理が働いてしまうのだと思いますが、冷静になっていただきたいです。株式投資なら絶対やらないことなのに、仮想通貨投資だとやってしまうんですよね。

企業に投資する際は、事業計画や実績、経営者のプロフィールなどを確認すると思います。それと同じことを仮想通貨やICO投資でもやるべきなんです。もちろん、絵(ホワイトペーパー)を描くだけならできてしまいますし、ICO専門のコンサル会社もありますので、ホワイトペーパーだけで信頼度合いを測ることは難しいのですが……。それでも、CEOやCOO、CTOなどの経営メンバーの経歴はネットで調べてみたほうがいいと思います。
○投資の原点を忘れてはいけない

――仮想通貨に関する法規制が変わっていくかもしれないということですが、仮想通貨の未来はどうなると思いますか?

よく聞かれるのですが、未来は誰にもわかりません(笑)。どの仮想通貨が値上がりするかも、判断は難しいですよね。何百倍・何千倍を狙うならICOしかないのかもしれませんが、当然リスクは高いです。「コインマーケットキャップに掲載されている仮想通貨で、ランクが下のほうにある仮想通貨を買う」という方法もあると思います。しかし、それもICOよりは安全かもしれませんが絶対に安全というわけではないです。それこそ、お金を払えば載せることができてしまう可能性は否定できませんので。

仮想通貨は手元に形のないデータ資産ですから、まずは知識をつけることが重要だと思います。法整備もまだこれからですし、あくまでも自己責任・自己管理で行うことですね。ノリで投資してはいけないと思います。「どの取引所に預けたか忘れてしまった」「ウォレットのパスワードを忘れてしまった」というケースは、弁護士でもどうにもできません。

「投資の判断基準を明確にする」「基準に合致しなければ投資しない」「理解できないものには投資しない」など、まずは自分なりのルールを作ることから始めてみるといいかもしれません。

――そもそも、中野弁護士はどうして仮想通貨を買おうと思ったんですか?

私は、仮想通貨によって描かれるビジョンや世界観が好きで投資しています。もちろん、自分なりにいろいろと調べたうえで投資対象は選んでいますが。

――「イーロン・マスクが好きだからテスラの株を買う」みたいな感じですかね。ロマンに投資していると言いますか、未来を夢見る投資スタイルという感じで素敵ですね。

「最悪ゼロになってもいい」と思えるかどうかですよね。仮想通貨はボラティリティ(価格の変動性)が高いので、精神衛生上良くない部分もあると思います。普通は1日に何十%も値動きしたら正気ではいられませんよ。一喜一憂せず、信じて放置。長期保有できる投資対象を選んだほうが、精神衛生的にも良いと思います。

2019年以降は、法律的には規制が厳しくなるはずです。規制が厳しくなることで市場が活性化するのか、落ち込むのかはわかりません。淘汰される仮想通貨も出てくるでしょう。仮想通貨とどう付き合っていくのか、決めるのは自分次第だと思います。

――そうですよね。私も長期保有派なので、ペーパーウォレットにできる仮想通貨は紙にして銀行の貸金庫に入れています。家が火事になるリスクもありますからね。妻がゴミと間違えて捨ててしまうかもしれないし、子どもがビリビリ破いてしまうこともありえますので(笑)

そのリスクはありますね。お互い子どもが小さいですからね(笑)。

○執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。マイナビニュース別稿にて仮想通貨の基礎知識に関する連載を執筆中。オフィシャルブログも運営している。

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ