韓国アパレル業界で活躍する日本人女性。感覚や文化の違いはトラブルから学んでいく

日刊SPA!

2019/2/13 15:51



いま世界でも注目を集める韓国のファッション市場。韓国では、誰でも商品が販売できるオープンマーケットが盛んで、アパレルECサイトが混在する。また、韓国の卸売市場に買い付けにくる日本人も多い。そんな中、日本を飛び出し、韓国を拠点にアパレルOEMの会社を立ち上げたふたりの日本人女性に出会った。

アパレルOEMとは、生地の提案・デザイン・検品や生産などを行うこと。現在、会社を立ち上げてから約1年半。当然、日本と韓国では文化や考え方が大きく異なるはずだ。ふたりはなぜ日本を離れて韓国のアパレル業界で挑戦しようと思ったのだろうか。

◆日本を飛び出し、韓国のアパレル業界へ…

共通の友人を通して韓国で出会ったサユさん(30代)とダニョンさん(30代)。それまでは、名古屋と東京に住んでいたふたり。異なった地域で同じアパレルブランドで働いていたが、名前は知っていても顔を合わせることはなかったという。

サユさんは日本に住んでいた頃、ショップ店員の仕事をやりつつ、休日は自身が立ち上げたECサイトの運営のため、韓国で買い付けをして販売をする、といった生活をしていた。

韓国の市場にある問屋では、個人で買い付けをして販売することができるが、日本ではできない。そこにサユさんは韓国のメリットを感じ、いつか韓国を拠点に仕事をしてみたいと考えていたのだ。

そして、そのECサイトがうまく軌道にのり、ショップ店員を辞めて韓国にやって来た。

昼間は語学学校に通い、夜は買い付けに行く。そんな日々を送っていたが、同じ繰り返しに飽きてしまったという。そこで、ワーキングホリデービザを使って現地企業で働いてみることにしたのだ。

サユさんが最初に入社したのは、日本のベビー服を韓国に販売する会社だ。ここで与えられた仕事は、韓国語がままならないにも関わらず、営業やクレーム電話の対応だった。そこで容赦なく言葉の壁にぶち当たった。

「お客様の名前を確認するのも大変でしたよ。クレーム対応どころか、まともに韓国語が話せないのに電話対応をしていました。こんな仕事で平気なの? と思いながら、半年間は働きましたね……」

次に働いたのは、日本のアパレル企業を対象としたOEMの会社だ。工場関連の仕事は韓国人が取り扱い、サユさんは日本人のお客様とやり取りをする仕事に就いた。

工場での交渉に同行したり、日本人との細かな打ち合わせなどを重ねるにつれて“この仕事なら、私も韓国で出来るかも?”と、直感を抱いた。

ちょうど同じ時期、ダニョンさんは韓国で働きながら語学を学んでいた。マーケティング会社やサユさんと同じくOEMの会社で仕事をしていたという。

サユさんは、ワーキングホリデービザが終了するまでの残りの期間を、韓国で働きながらOEMのノウハウを学び、会社を設立するための準備をはじめた。

そして、東大門の近くに、日本円でおよそ7万円の4畳ほどのレンタルオフィスを借り、友人とOEM会社『アイエルケイアール』を設立。その友人が退職したタイミングでダニョンさんを誘い、OEM業にプラスして、独自のブランド『105tenfive (テンファイブ)』もスタートさせた。

会社設立にあたり、投資ビザの準備もはじめたが、日本でマイナンバー交付の時期と重なったこともあり、通常では国際銀行振込で済む話も、現金を直接韓国に持ち込み、さらには証明書の発行をする必要があるなど難航したという。

サユさんは投資ビザが降りるまでの間、日本と韓国を行ったり来たりしながらの生活を続けていたが、日本人にしかわからないデザインへのこだわりや、緻密な縫製方法などが人気を博し、口コミで仕事が舞い込むようになっていった。

仕事が多忙になるにつれ、4畳のスペースが手狭になってきた頃、韓国人の卸業者の社長に「私の会社のスペースを一部貸すので、一緒に仕事をやらないか?」と声をかけられた。どうやら、日本人を対象に商品を売る手伝いをしてもらい、その代わりにスペースを貸すといった条件だった。ふたりはこの条件をすぐさま飲み込んで事務所を引っ越したが、このあと想像もできない事態に直面することになる。

◆日本人と韓国人の“商品基準のズレ”が問題に

事務所を移転して数か月後が経った頃だ。

「今すぐ、ここを出なくてはならない……」

ダニョンさんのところにサユさんから連絡が入った。理由は、韓国側が思う商品の完成基準と、日本側が求める商品の基準が合わなかったことが原因だ。

韓国人の社長から事務所を出て行ってほしいと通告された。彼の言い分は「日本人の細かいこだわり、度重なる修正とクレームが割に合わない」ということだった。

こういった感覚や認識の違いは今でも起こるという。たとえば、日本では「いったん考えます」などの“遠回しに断っている”フレーズは、韓国では通用しない。それでは断ったことにはならないのだ。

後日、「考えてくれましたか?」と当然のごとく連絡が入る。なかには、返事をもらえるまで毎日のように食べ物や品物を持って交渉にくる業者もいたとか。韓国では、このような挨拶まわりが多いのも特徴だ。仕事に関して、人脈や情を重要視している文化が感じとれる。

◆感覚や文化の違いはトラブルごとに学んでいく

ふたりは韓国に住み、拠点を日本から完全に移したが、それでも感覚や文化の違いには慣れないという。ダニョンさんにとって、韓国側の市場や工場が約束を守ってくれないことが悩みだ。

「日本は確実に期日を守る文化が強いですが、韓国は“固いこと言ってるんじゃないよ!” といった雰囲気なんです。突然、工場と連絡が取れなくなったり、縫製アップの日に商品があがってこなかったり……ってこともありました」

それでも今は、両国のスケジュール感を理解し、期日に合わせて調整するようにまでなったという。

代表取締役でもあるサユさんは、“外国人社長”ということで韓国の銀行でローンが組めないことが悩みだ。したがって、取引の開始はすべて自身の持ち出しで仕事を始める。韓国の工場に依頼をするときもだが、日本側でも信頼できる相手かどうか見極めることが重要だという。

日本と韓国の感覚の違いや文化の違いを噛み締めながら生きているふたり。今後はどのように考えているのだろうか。

「日本の女性はカワイイ文化で、韓国の女性はどこかセックスアピールのある洋服を好みます。そういった好みの違いを、これからはOEM業だけでなく、自社のオリジナルブランドにもバランスよく取り入れていければと考えています。現在は、ありがたいことに取引先や仕事の量も増えました。ステップアップというよりも、今ある仕事を必死にこなしていく。大変なこともありますが、まだまだ韓国で生きていこうと思っています」<取材・文/南沙織>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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