自分の髪を抜く抜毛症は「こっちを向いて」のサイン! 医師に聞いた実態と治療法


 無意識のうちに髪の毛やまつ毛を抜いてしまう……。この行動は、抜毛症(トリコチロマニア)と呼ばれる病気の症状かもしれません。ヴィクシーモデルのサラ・サンパイオなど、有名人も続々とカミングアウトしているという「抜毛症」の実態と治療法について、横浜労災病院の皮膚科医師・齊藤典充先生にお聞きしました。

■抜毛症=精神の病とは言い切れない?

抜毛症とは、正常な毛(髪の毛、眉毛、まつ毛など)を抜いてしまう精神障害だといわれています。しかし、「抜毛症を“精神の病気”と一言でくくるのは難しい」と齊藤先生は指摘します。

「学術書では『ストレスのはけ口としての自傷行為』といわれることもありますが、リラックスしていて、ストレスを感じていないときに抜いてしまう人もいます。病気と単なるクセはストレスの有無によって厳密には区別できません。『自分で正常な毛を抜く』という行為自体が抜毛症の定義となるのです。もともと『髪を触っていると落ち着く』という人が、その延長で抜き始める場合もあります」

髪を抜く痛みはそんなに強くないために、快感になって抜いてしまいやすいそうです。では、抜毛症に、ほかの身体的疾患との関連性はあるのでしょうか?

「頭皮に湿疹があり、かくついでに毛を抜いてしまう、という人もいました。その場合は皮膚病を治してあげれば解決すると思います。また、抜毛していることを周りの人に知られたくないがために抜いた毛を食べてしまい、毛が消化されないで胃の中で固まって食欲減退を引き起こしていたケースもありました」

齊藤先生によれば、「抜毛症は本人が自覚している場合がほとんど」とのこと。髪が不規則な抜け方をしていたり、抜くのに失敗した切れ毛・ちぢれ毛が目立つので、外見的にも判別できるケースが多いようです。

「大人は『自分で抜いてしまうんです』と言って受診することが多いのですが、親に連れられてきたお子さんの場合、すぐに『ハイ、抜いてます』とは認めないことが多いです。親に怒られるかもしれないという心理もありますが、ストレス起因の抜毛症の場合、そのストレスの原因の半分は学校や職場といった外の環境で、もう半分は家庭内にあるんです」

子どもの場合、親の期待がプレッシャーとなって勉強中に毛を抜いてしまったり、両親が共働きでひとりぼっちの時間が多く、寂しさを紛らわすために抜いてしまうケースがあるそうです。本人の精神状態よりも、周囲の人の態度を変える必要がある場合も。

「素直でいい子がなりやすく、周りの人や物に当たれず、不満をひとりで抱え込んでしまいがちです。親に心配をかけたくないという気遣いから、誰にも見られない場所で抜きます。こういう子の場合、抜毛行為を『ダメ!』と否定してしまうと、隠れて余計に抜いてしまいます。大人の場合も、人に愚痴を言えなくて悩みを抱え込むタイプの人が多いですね」

それでは、自分や身の周りの人が抜毛症かもしれないと気づいたとき、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか?

「抜毛症は、手が毛を抜くことを覚えてしまっているので、とにかく頭を触らせないことです。頭にバンダナやタオルを巻いたり、帽子をかぶったりして髪の毛を隠すことで、抜く前に気づくことができます。触り心地の良いぬいぐるみを握るなど、別の手癖をつけるのもひとつの手です」

また、抜く行為を防ぐのも重要ですが、「抜かない環境づくりも重要」と齊藤先生は言います。

「どのタイミング・場所で抜いているのか把握するために、どこに毛がたくさん落ちているのか観察してみるといいです。お子さんの場合、勉強机の周りにたくさん落ちているのであれば、勉強をする場所を変えてみたり、リラックスする時間を作ってみてはいかがでしょう。そもそも、『勉強がストレスになっているかもしれない』というヒントの表れなので、過度に期待をかけるような発言は控えましょう」

抜毛症で医療機関を受診する場合は、基本的には皮膚科を受診し、必要に応じて精神科を受診する流れになるそうです。

「皮膚科では、皮膚病の場合を除き、初期の治療では主にカウンセリングを行います。そこでは抜かないためのアドバイスとともに、ストレスの原因がどこにあるのか、それを解消するにはどうしたらよいのかを患者さんと一緒に考えます」

たとえば大人で、職場にストレスの原因がある場合は、「誰か相談できる人はいないか」「気分転換できる方法はないか」「どうしてもつらかったら、職場をお休みすることも検討してみては」といった提案をする場合もあるのだとか。

「抜毛症は『こっちを見て』という周りの人へのアピールのこともあるので、その場合は本人のケアだけでなく、周囲が寄り添って話を聞いてあげることや本人を許容して認めてあげることが重要です。身近に話せる人がいない場合は、遠くにいる家族やネットの友だちでもいいし、それこそ医療機関を頼ってくれてもいい。8割はそういった話し合いを続けると症状が改善します。一定期間治療をして、どうしても不安が募って抜毛もやめられないという場合は、精神科で心が楽になるお薬を処方してもらうことも選択肢のひとつです。段階を踏んで、一歩一歩治していきましょう」

意外にも、薬なしで治る場合が多いという抜毛症。もしかして? と悩んでいる人は、まずは周りの人に相談し、皮膚科の受診を検討してみてはいかがでしょうか。
(松嶋千春/清談社)

齊藤典充(さいとう・のりみつ)
カリフォルニア大学サンディエゴ校留学・国立病院機構横浜医療センター皮膚科部長を経て、横浜労災病院皮膚科部長。なかでも脱毛症を専門とし、円形脱毛症や男性型脱毛症(AGA)など、デリケートな問題に悩む患者を救うべく診療を実施している。毛髪科学研究会世話人、日本臨床毛髪学会評議員。

横浜労災病院皮膚科

当記事はサイゾーウーマンの提供記事です。

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