高須幹弥先生と考える、「扇風機おばさん」ハン・ヘギョンさんが教えてくれたこと


【第79回】「高須幹弥センセイ、ヘギョンさんはどうして整形に依存しちゃったんですか?」

整形依存によって顔面が肥大し、その見た目から「扇風機おばさん」と呼ばれていた韓国のハン・ヘギョンさんが、昨年12月15日に亡くなった。闇医者での施術をきっかけに、注射器を用いて自ら大豆油やパラフィン、工業用シリコンなどの注入を繰り返したことで異物が蓄積。韓国や日本で除去手術を行ってかなり改善はしたものの、元に戻ることはなかった。そんな彼女の姿は日本のメディアでも度々紹介されたため、整形依存の恐ろしさを垣間見た人も少なくなかったはずだ。

高須クリニック名古屋院院長の高須幹弥先生、追悼の意を込め、ヘギョンさんの実例をもとに、整形依存に潜む危険性について解説をお願いします!

■自己流の整形は危険が伴う
 ハン・ヘギョンさんは、ただの醜形恐怖症や整形依存ではなく、統合失調症も患っていたんだそうです。その症状で幻聴に悩まされ、自己注入に歯止めが効かなくなっていたようです。

ただ、自己注入は、材料費のみで安くできるし、自由になんでもできますから、依存に拍車がかかってしまうのはヘギョンさんに限ったことではないでしょう。僕のところへも、裏ルートでヒアルロン酸を入手して、自己注入や友だちと注入し合った結果ボコボコになってしまったという人がたまに来ます。

しかし、思い通りのカタチにするには、やはりそれなりの技術が必要ですし、細菌が入るなど感染のリスクも高いうえ、誤って動脈に注入してしまうと、皮膚が壊死したり、失明したりすることもある危険な行為なので、絶対にやってはいけません。

なお、自己流の整形では、ほかにも、ピンで二重のラインをつくろうとしてまぶたが傷だらけになった人や、「鼻を叩くと高くなる」というネットのウワサを信じて何百回も強く叩いてしまい、皮膚が厚くなって赤みを伴ったひどい状態の人もいました。鼻は叩いても高くなりません。ネットのデマに惑わされないようにしてくださいね。

ヘギョンさんの場合は、注入物もよくなかったですね。

注入物には“吸収性”と”非吸収性“があり、ヒアルロン酸やコラーゲンは、基本的にはいずれ吸収されてなくなる”吸収性”なので、正しい使い方をすれば安心で安全です。一方、ヘギョンさんが注入していた大豆油やパラフィン、工業用シリコンなどは、永久に残る“非吸収性”。パラフィンやシリコンは、注入すると脂肪や皮膚に浸潤して固まってしまうため、取り出すこともできないし、皮膚自体がカチカチになって、除去する場合は皮膚ごと取り除かないといけなくなります。

ただ、パラフィンや医療用のシリコンなどは、日本でも美容整形の黎明期には使っていたところもあるんです。現在は危険性の高さから使われていませんが、同じ”非吸収性“でも、医療材料を注入していたら少しはマシだったかもしれません。

■闇医者や悪徳医師に注意

さらにヘギョンさんが最悪なのは、最初のほうで闇医者にかかってしまったこと。もし最初に訪れた美容整形外科がまっとうな医師のところだったら、コテコテの整形顔になった程度で、あそこまでひどくはならなかったはずです。

現在の日本では、闇医者はかなり減っていますが、いまだに「闇医者で得体のしれないものを注入された」と来られる方はいます。闇医者は、医師免許を持たない人がマンションの一室などで勝手にやっているだけ。医者ではありませんから、近寄らないのがいちばんです。

ただ、韓国旅行で、闇医者ではないはずのクリニックで異物を注入されたという人も少なくないんです。韓国は美容整形が盛んなだけに闇医者も多いですが、異様に安いなど、ちょっと怪しいクリニックでも注意が必要です。というのも、日本人はカモにされやすいから。

ヒアルロン酸やコラーゲン製剤は原価が高いので、悪徳な医師は、原価の安い得体のしれないものを使って利益を得ようとします。本来ならすぐに問題化しますが、日本人なら、帰国した後わざわざクレームを言いに戻って来る可能性が低いし、訴えたくても言葉の壁や裁判の起こし方がわからないなどの理由からあきらめる人も多い。日本人の国民性として泣き寝入りしやすいということもあり、ターゲットにされやすいんですよ。

恐らくお金がなかったからなのでしょうが、ヘギョンさんは、闇医者や自己注入に走ったことで、最悪の極致といえる状況になってしまいました。通常なら容姿が醜くなってきた段階でストップできますが、あそこまでエスカレートしてしまったのは、整形依存症のほかに“ボディイメージ障害”もあったのではないかと思います。

ボディイメージ障害とは、例えば拒食症の人がガリガリになっても「もっと痩せなきゃ」と拒食を続けるように、脳の思い込みによって、他人に指摘されたとしても本来の姿に気づくことができない障害です。ヘギョンさんは、整形依存症と統合失調症に、ボディイメージ障害も合わさって、最悪な方向にいってしまったのかもしれませんね。

■整形依存に陥らない、大切な人を陥らせないために必要なこと

もし醜形恐怖症や整形依存に陥ってしまったら、脱するには認知療法で治療するほかありません。そのような状況にならないためにも、整形時の医師選びは大切です。

なぜなら、金儲け主義ではなく、人間的にもまともな医者であれば、必要最低限の手術だけをして、ある程度整った段階で「もう何もしなくていいよ」と言ってくれるから。悪徳な医師だと、利益のために不要な施術を勧めてきたり、おかしくなるとわかっていながら話を進めたりするので、依存しやすくなってしまうんです。金儲け主義の医師ほど、自己アピールや宣伝をよくするし、SNSやインフルエンサーの使い方もうまいので人気がありますが、そのようなことに流されず、よく見極めるようにしてくださいね。

また、身近に整形依存の人がいたら、周囲の人も状況をきちんと教えてあげてください。特に女性同士の場合、陰ではウワサするのに、本人の前では「かわいい」「いいじゃん」などと言いがちです。人間関係を悪くしたくないのはわかりますが、本当にその人のことを思っているなら、「おかしいよ」「やめたほうがいいよ」と言ってあげるべき。本当なら家族がいちばん指摘しやすいのですが、最近は「娘に嫌われるのが怖くて言えない」など、おかしな親も多いので……。

当事者においては、思い込みが激しくなって「なんでそんなひどいことを言うの!」などと思いがちですが、もし周囲から指摘されたら、大切な人を失わないためにも、素直に受け入れる姿勢を持ってほしいと思います。

高須幹弥(たかす・みきや)
美容外科「高須クリニック」名古屋院・院長。オールマイティーに美容外科治療を担当し、全国から患者が集まる。美容整形について真摯につづられたブログが好評。
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当記事はサイゾーウーマンの提供記事です。

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