はあちゅう、電通、伊藤詩織さん……全方位を愚弄する竹内結子『QUEEN』の“激ヤバ”度

日刊サイゾー

2019/1/24 23:00


 これは、本当にヤバい作品かもしれない。17日に放送された竹内結子主演のドラマ『スキャンダル専門弁護士QUEEN』(フジテレビ系)第2話の視聴率は、初回から半減しての5.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。本当に、下がってよかったと思います。すごく人を傷つけるよ、こういうドラマは。前回はアイドルを職業とする女の子たちを丸めて「どうせ全員、色情魔のズベ公だろ」と切って捨てた『QUEEN』でしたが、今回もまたやりました。現実の出来事をモチーフにするなら、これは本当にやっちゃいけないレベルのマナー違反ですよ。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

■はあちゅうと伊藤詩織さんのハイブリッド


 今回、スキャンダル専門弁護士たちのクライアントは、電通をモデルにしたD社という大手広告代理店のトップクリエイター。モデルは東京五輪のロゴデザインでパクリ騒動を起こした佐野研二郎さんです。

その佐野さん……じゃなくて、谷さん(波岡一喜)が、部下の派遣社員の女性にセクハラをしたとかしないとかで週刊誌にスッパ抜かれ、世の女性たちが抗議デモを起こしているところから始まります。

匿名で被害を訴え出たのは、はあちゅうをモデルにした佐藤瑠璃(成海璃子)という人物。さらには伊藤詩織さんのように、セクハラを告発する本を出版するというので、D社は大慌てです。

なお、ここまで「モデルにした」と断定調で書いていますが、別にフジテレビがそれらを「モデルにしました」と明言しているわけではないので、誤解なきよう。ただ、広告代理店がD社だったり、パクリ騒動が五輪ロゴだったり、告白本のタイトルが『ブラックダイアリー』だったりするので(伊藤さんの告発本のタイトルは『ブラックボックス』)、「モデルじゃないよ」は通らないだろうなと思って断定しています。

続けます。

瑠璃さんは、谷さんとD社に謝罪を求めていますが、D社側はそれには応じないといいます。そのD社が主人公・氷見(竹内)たちに依頼したのが、「謝罪はしない、沈静化しろ」というリスク回避の仕事でした。ちなみにD社は否定していますが、実際、谷さんは瑠璃さんにセクハラ・パワハラをしているというお話です。

最初は匿名だった瑠璃さんでしたが、意を決して顔出しでテレビの取材に応えます。ここも伊藤詩織さんからの引用でしょう。

成海璃子が美人だからなのかなんなのか、世間からは瑠璃さんへの批判が殺到します。「売名行為」「したたかな女」など、ネットは大炎上。瑠璃さんのキラキラインスタを見つけた氷見たちも「これで風向きが変わる(矛先が瑠璃さんに向く)」とニンマリです。ニンマリて。

ちなみにドラマが、はあちゅう、もとい伊藤さん、もとい瑠璃さんの告発について表明した論調は、以下のようなものです。

「契約を切られたときに被害者意識を持ったってことなんでしょうね」
「悲劇のヒロインが戦う本です」
「あざとすぎましたね」
「あーいう女には絶対裏がある」
「野心の塊」

えっぐい。悪口じゃんね。

ちなみに、いろいろあってD社と谷さんは謝罪会見を開くわけですが、最後までドラマの瑠璃さんへの評価は変わりません。瑠璃さんが谷さんと過去に付き合っていたことを引き合いに出して「付き合ってたんだったら、セクハラっつってもねえ……」みたいな謎理論で谷さんの卑劣な行為への断罪を切り上げると、「そもそもこれは周りを巻き込まなくても2人が話し合えば解決できる問題じゃないんですか」「セクハラがあったことは事実です。でもそれを利用して人を貶め、周りを振り回す必要までありますか?」などと告発そのものの意義を貶める説得を試み、さらには氷見たちが所属する法律事務所の副所長役であるバカリズムに「元カノが性格悪かったって話でしょ?」と吐き捨てさせます。

完全に悪意です。視聴者に現実のニュースを連想させている時点で、この悪意は、はあちゅうや伊藤詩織さんに向けられたものでもあります。作り手にどんな意図があろうと、見る側は現実を投影するからです。

もっともヤバいと感じたのは、瑠璃さんと谷さんが過去に交際していたことが“真実”として報じられ、それによって『ブラックダイアリー』が発売中止となったことです。

いったい、いつから元カノへのセクハラは“痛み分け”ということになったのでしょう。このドラマを作った人たちは、一度でもヤッたことがある女には何をしても許されると思っているのでしょうか。「ステキな思いもしたでしょう(だから事を荒立てるな)」と竹内結子が成海璃子を諭すシーンなど、サイコホラーの趣きです。

前回、『QUEEN』における女性へのゲスな視点について「オッサン的」と書きましたが、もはやオッサンでもない、聞いたこともない醜悪な価値観です。怖いよ。

そのほか、D社の人事部長役には50歳を超えて今なお妖艶の極みにある国生さゆりを据え、「仕事に人生を捧げてきた女は惨めである」「若くて美しい男に誘惑されると、ガードがゆるくなる」といったシーンを演じさせる場面もありました。そして、その若い男に「俺はババアを楽しませるために弁護士になったんじゃない!」と吐き捨てさせます。このあたりになってくると、何を見せられているのかわからなくなってきます。

氷見さんたちは、あくまで「なぁなぁ」な着地を試みます。どっちもどっちだろ、というスタンスを崩しません。意図としてはシニカルかつニヒルに、扇動に弱いネット民たちを皮肉ったつもりなのでしょうが、完全に失敗しているし、竹内結子がいちいち芝居が上手いもんだから、本当に心無い人に見えてくる。大損ですよ。

■何がヤバいって……


 かくして、今後も猛毒をまき散らしそうな『QUEEN』ですが、何がヤバいって脚本家が女性だということです。女性が、ここまで女性の尊厳を踏みにじるセリフを書いている。しかも、倉光泰子さんという人は前回担当した『刑事ゆがみ』で、実に繊細に女性の自意識に寄り添って見せた健筆の人です。これ(記事参照)と同じ人が書いていると思うと、上からの強烈なディレクションを感じるし、むしろそこに本当のパワハラがあるんじゃないかと勘繰りたくなるくらいです。

あー。あと10回くらいこんな論調の原稿を納品しなければならないのかと思うと、気が重いですよ!

(文=どらまっ子AKIちゃん)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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