「よしもとブサイク芸人ランキング」の是非を問う――“芸人だから”“男だから”ブサイクやハゲは笑える?

wezzy


  1月14日、毎年恒例の「よしもと男前・ブサイク芸人ランキング」が発表された。しかし、女性への容姿イジリに厳しい目が向けられている昨今、このランキングにも疑問符がつく。

今年、「男前ランキング」の1位を獲得したのは、漫才コンビ・アインシュタインの河井ゆずる。一方で、「ブサイクランキング」の1位には相方の稲田直樹が選ばれ、コンビ揃ってトップを飾ったことになる。稲田は3年連続1位で「ブサイク芸人」の殿堂入りを果たし、「ブサイクと言われる文化に誇りを持っている」とコメントした。

ちなみに稲田は12日放送の『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)に出演し、巧みな話術を披露。美容専門学生に女装メイクをされた際のエピソードがウケて、「MVS(Most Valuable すべらない話)」に選出されていた。SNSには、「顔にインパクトあるけど、松ちゃんにも引けを取らないくらい話が面白かった(笑)」「初めて知った芸人さんだけど、コントも見てみたくなった」という視聴者の応援が多く寄せられている。今年、活躍が期待される若手芸人のひとりだろう。

しかし、稲田が1位を飾った「ブサイクランキング」――これについては、議論の余地がある。稲田本人はもとより、ノミネートしている芸人全員が納得ずくで、かつ吉本興業が若手芸人のPRの場としてこのランキングを開催しているとしても……やはり今はもう、「ネタだからいいじゃん」とスルーできない時代に突入している。
女芸人「ぶちゃいくランキング」はわずか5年で廃止  
 2000年からスタートした「よしもと男前・ブサイク芸人ランキング」は、これまで「男前芸人」に徳井義実(チュートリアル)、井上聡(次長課長)、綾部祐二(ピース)らを選出。また、「ブサイク芸人」には、岩尾望(フットボールアワー)、 山里亮太(南海キャンディーズ)、井上裕介(NON STYLE)らが選ばれ、メディアで大きく取り上げられて話題を呼んできた。

この派生として、吉本興業は2010年に女芸人の「べっぴんランキング」「ぶちゃいくランキング」を新設。「べっぴん」の1位には友近や 馬場園梓(アジアン)、そして「ぶちゃいく」には隅田美保(アジアン)や、近藤春菜(ハリセンボン)が選ばれていた。しかし、この「べっぴんランキング」「ぶちゃいくランキング」は2015年、わずか5年で幕を閉じている。

吉本興業はその理由を明かしていないが、これには「ぶちゃいくランキング」の常連だったアジアンの隅田美保のテレビ出演休止を発表が関係していると見られる。隅田は2015年、「婚活に専念するため」との理由で表舞台を去ったが、視聴者の間ではバラエティ番組での過剰な「ブスいじり」に傷つき、テレビから遠ざかったというのが定説だった。たしかに、ついひと昔前のバラエティでは女芸人への「ブスいじり」は鉄板で、とくに隅田は「ぶちゃいくランキング」をネタでいじられることも多かった。これに不快感を覚える視聴者も徐々に増えつつあり、当時からSNSを中心に「ブスいじり」の是非について議論がなされていた。

「べっぴんランキング」「ぶちゃいくランキング」は、隅田の活動休止とほぼ同時に廃止されている。ちなみに、2016年には「ブサイク芸人ランキング」も一時中止されていた。隅田の活動休止をきっかけに、同ランキングに賛否両論が寄せられたことが理由とも考えられるだろう。

単純に、容姿を貶されて傷つかない人などいるだろうか。芸人だったら、「ブス」や「ブサイク」と言われても平気なのか――その不自然な光景を見て、心を痛める視聴者も多かったかもしれない。

今、視聴者は、違和感を覚えた視聴者はその思いをSNSで吐露し、議論を広めることができる。そんな今の世に、女性芸人の容姿をいじる、あまつさえランキングづけするような企画が通るとは思えないし、もし発表したところで厳しい批判を受けることは目に見えている。「べっぴんランキング」「ぶちゃいくランキング」が廃止されたのは、時代の趨勢だったといえよう。もはや「ブス」や「ブサイク」、あるいは「男前」「べっぴん」などとカテゴライズする、その笑いのセンスが古臭いことは、誰の目にも明白だ。

そこで今いちど問いたいのは、男性への「ブサイクいじり」はなぜ許されているのか、ということだ。女性への「ブスいじり」はたびたび物議を醸すにも関わらず、今回の「よしもとブサイク芸人ランキング」への異論の声は小さい。むしろ、女性へのそれに比べればないに等しいようなものだ。「ブサイク」も「ブス」も、人の外見をイジって笑いに変えようとする本質は同じなのに、男性への容姿イジリだけが見逃されている現状は不自然だ。

ただ、芸人にとっては「ブサイク」だろうが「ぶちゃいく」だろうが、すべて芸のこやしだ、という価値観は根強いだろう。その領域に、ポリコレだの何だのという概念を持ち込まれたくないという芸人も多いだろう。そこには、一般人には触れられない“芸人世界の理論”があるのかもしれない。

近藤春菜が2015年に「ぶちゃいく」3連覇で殿堂入りした際、「男芸人はブサイクと言われて仕事が増えるけど、女芸人はただ悪口を言われるだけ」とコメントしていたように、「ブサイク」は笑いを起こし、カネになる。

しかしそういう芸人の世界、要するにテレビ業界の論理に、視聴者まで付き合う義理はない。「ブサイクやハゲは笑える存在」という、よくよく考えればおぞましい不文律を、“あくまでも芸人が仕事としてやるなら”という注釈付きで受け入れ続ける必要はない。女性への「ブスいじり」が問題視されるのであれば、男性への「ブサイク・ハゲいじり」もまた、問題含みの視点ではないのか。当事者である男性芸人が傷ついているかどうかに限定せず、社会一般に与える影響力の面で、このランキングの是非を問うべき時期が来ている。

当記事はwezzyの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ