シンガポール「ティラミスヒーロー」パクリ疑惑……「HERO'S」は法的に罰せられるか、弁護士解説


 1月20日に、ティラミスブランド「HERO'S(ヒーローズ)」の1号店が、東京・表参道にオープンした。同17日には、俳優の三浦翔平が登壇する初出店記念イベントも開催され、早くもスイーツファンの間で注目が集まっているが、そんな中、店頭で売られるティラミスや猫のキャラクター、ブランドロゴなどが、シンガポール発のティラミスブランド「ティラミスヒーロー」のものと“酷似”していると、ネット上で炎上している。

2012年、シンガポールで創業した「The Tiramisu Hero」は、13年8月から日本で瓶入りティラミス「ティラミスヒーロー」の販売を開始し、14年からは、日本の百貨店やジェイアール名古屋タカシマヤをはじめとするJR各社などとの取引もスタート。「アントニオ」という名前の猫が同ブランドのキャラクターとなっている。一方、1号店がオープンしたばかりの「HERO'S」も、同じく瓶入りティラミスを展開し、“ヒーロー”だという猫をイメージキャラクターとしている。

昨年末には「ティラミスヒーロー」の公式Twitterが、「2012年にシンガポールでつくった私達のオリジナルブランドロゴがコピーされ、只今日本で使用できなくなってしまいました。私達が大好きな日本でこのような事が起きた事を、大変残念に思っています。でも、アントニオは負けません!(中略)さらにアントニオヒーローは新しい称号を手に入れました。その名は【ティラミススター】」と報告していることから、ネット上では現在、「HERO'S」が意図的に「ティラミスヒーロー」に似せているのではないかと、盛んに指摘されている状況だ。

なぜ、本家であるはずの「ティラミスヒーロー」が改名に至らなければいけないのか、そして、ネット上で高まる「『HERO'S』を罰することはできないのか?」という疑問について、今回、弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を聞いた。

まず、今回の騒動をひもとくカギは、山岸氏いわく「商標登録」。シンガポールの「ティラミスヒーロー」が日本で商標登録を行っておらず、「HERO'S」が先手を打ったことにより起きた“悲劇”だという。確かに、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で商標検索をすると、「HERO'S」の社長・高田雄史氏が代表取締役を務める株式会社gramが、17年6月に商標を出願、18年3月に登録という情報が出てくる。

「商標などの権利は、国ごとに取り決められるものなので、たとえシンガポールの法律で『商標』として登録されているロゴや商品名であっても、日本の法律で『商標』として登録されていないロゴや商品名は、日本では使用できてしまうのです。逆もまたしかりで、これを、『属地主義』(法の適用範囲に関する立法主義の1つで、自国領域内に場所的に限定するもの)といいます」

それでは、“本家”が泣き寝入りするケースが多発してしまうように思うが、それをフォローする「『マドリッド協定』という、たくさんの国が参加している条約がある」という。

「自国の法律で『商標』登録した後、もし将来、海外でもその『商標』を使った商品を販売する予定があるのであれば、このマドリッド協定にしたがって、『国際登録』をすることで、将来、海外(特定の国)でも『商標』の権利を主張することができるようになります」

そういった法的な背景を考えるに、今回シンガポールの「ティラミスヒーロー」は、「この『国際登録』をしていなかったのでしょう」と山岸氏は指摘する。

「日本では、13年8月から、シンガポール発の『ティラミスヒーロー』が販売されていたようですが、この時に、しっかりと『商標登録』なり、『国際登録』の手続きをしていなかったものとみられます。そのため、『HERO'S』が、先に日本で登録をすることができたわけです。これは、シンガポールの『ティラミスヒーロー』側のミスと言えるでしょう」

では、「HERO'S」が法的に罰せられる可能性はといえば、「商標上、正しいことをしているので、罰せられません」ときっぱり。

「卑怯と言えば卑怯ですが、『商標』というものが、原則として国ごとに制度化されているものである以上、仕方がありません。恐らく、『HERO'S』の関係者が、過去にシンガポールに行った際などに『ティラミスヒーロー』を見つけてきて、国ごとに『商標制度』があるということを知った上で、先に『商標』を確保したと考えられます」

シンガポールの「ティラミスヒーロー」側は、法的には“手も足も出ない”状況というわけだが、山岸氏は「HERO'S」の手法について、「いくら法律的に正しくても、ビジネス的には好まれません」と持論を述べる。

「HERO'S」側は21日、公式サイトで、「多彩なキャラクターと本物のティラミスの味わいを特徴に、『ティラミスヒーロー』やキャラクターの商号・ロゴを取得して展開を進めております」「他社のティラミスに関する商品とは関係ありませんので、他社の商品と混同されませんようお気をつけ下さい」とコメントしているが、「たとえ商品開発の過程で『シンガポールの「ティラミスヒーロー」を見てインスピレーションを得た』というようなことがあったとしても、どういう経緯で、商品を生み出したのか、もっとちゃんと説明すべきだと思います。シンガポールの『ティラミスヒーロー』の関係者の方に敬意を払う必要があるのでは」

このような“パクリ騒動”は珍しいことではないが、「日本の商品やサービスは、世界的にとても優秀であることから、近くの国にフリーライド“される”ということの方が、圧倒的に多い」と山岸氏は指摘する。確かに過去には、江崎グリコが、同社のチョコ菓子「バトンドール」を模したような商品を、韓国のロッテグループが販売しているとして、韓国の裁判所に提訴した事件もあったが、今回は日本側がフリーライド“した”騒動の可能性がある。「HERO'S」には、シンガポールの「ティラミスヒーロー」に、ぜひ誠意ある対応をしてもらいたいものだが……。

当記事はサイゾーウーマンの提供記事です。

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