竹内結子『QUEEN』1ケタ発進! 「すごくつまんなかった」理由を真面目に考えてみた

日刊サイゾー

2019/1/17 23:00


 10日にスタートしたドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)。第1話の視聴率は9.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まあまあそれなりでした。

物語の主人公は、危機管理を専門にしているという法律事務所で働く弁護士・氷見さん(竹内結子)。彼女と、その仲間たちがクライアントからの依頼を受けて危機管理に奔走するようです。

脚本は、かつて福山雅治主演の月9『ラヴソング』(同=最終回レビュー)で当時の月9史上最低視聴率を記録し、その後、西内まりやの『突然ですが、明日結婚します』(同=最終回レビュー)で最低記録を更新。『刑事ゆがみ』(同=最終回レビュー)でも大コケをかましたものの、フジテレビの期待を一身に背負う「フジテレビヤングシナリオ大賞」出身の倉光泰子さん。それに、こちらも若手の三浦駿斗さんが名を連ねます。

さらに演出にはPerfumeのMVで名を馳せた関和亮さんがクレジットされるなど、フジテレビ制作の「新しいことをやろう」「若い人を育てよう」という意向がうかがえるスタッフィング。特に倉光さんはね、先にリンクした各ドラマの最終回レビューを読んでいただければわかると思うんですけど、個人的にすごく期待しているライターさんなので、ワクワクで放送開始を待っておりました。

で、いきなり結論ですが、第1話に限ってという希望的観測も含めて書きますけど、まあ驚くほどに、ここまでかと思うほどに、すごくつまんなかったです。何これ。ホントに2019年のドラマなのかしら。では、振り返りましょう!

■浅いのは、被写界深度だけじゃない


 基本的に1話完結のようですが、今回のクライアントはテレビ局のアイドル番組でした。フォレストという4人組アイドルに不仲が報じられていて、番組中にモメだしたりでファン激怒。殺害予告のメールが送られてきたので、「万が一に備えて」ほしいという依頼です。で、なんやかんやあってハッピーエンドでした。

アイドルグループのメンバー間の不仲とか、それでメンバーが危害を加えられてどうとか、最近日本海側で似たような事案が発生してしまったために、ドラマが現実に追い越されたという不運はあったと思います。それにせよ、この作品で描かれる「アイドルの虚像と自我がドウシタコウシタ」という話は、もう何度コスられたかわからないテーマです。「虚像にハメ込まれるのは、誰だって嫌だよね」なんてセリフまで出てくるわけですが、まったく目新しさがないどころか、ファンの声や殺害予告的なパートにSNSが活用されているにもかかわらず「メンバーがSNSで発信して云々」がないので、逆に古い物語にすら見えてしまう。

別に、現代ドラマだからSNSを使えよという話でもないのですが、人気YouTuber・ラファエルの意匠(衣装も)を丸パクリして“殺人予告したネットのヤベーやつ”という造形を作る周到さというか、浅ましさというか、「イマ媚び」をしてるんだから、だったら「アイドルとSNS」についても少しは考えればいいのに、と思うんです。断片だけパクってくるから、手抜き感がひどくなってしまっている。あー、ちゃんと考えて作ろうとしてないな、というのがバレてしまっている。

映像はいかにもボケ強め、被写界深度浅めでアップショット切り返し、くるくる気持ちよくオシャレですが、F値だけじゃなく考えも浅いよなーと思いました。考えが浅いというより、考えて伝えようという意思の浅さを感じます。すごく残念。

■価値観がオッサン


 MeTooっぽい設定があったり、メンバーの一人がトランスジェンダーだったり、今風のモチーフを取り入れようとしてもいるわけですが、これもすべからくスベっています。本稿の最初の方で「若い人を育てようという座組み」なんて書きましたけど、登場するすべての価値観が古い、オッサンくさい、ステレオタイプばかりなんです。全然、若い物語を作ろうという決意が見えてこない。もういいかげん、会議で脚本決めるのやめたほうがいいと思う。これにGO出した人、才能ないですよ。

特に危なっかしいと感じたのが、そのトランスジェンダーの女の子・桃子のくだりです。

まず、桃子の性同一性についての説明が「男装が好き」という一点のみで描かれます。その後、男装してほかのメンバー(もちろん女子)と一緒に歩いているときに「彼氏に間違えられるかも」「いや、タイプじゃないし」という会話がある。

つまり、ドラマは画一的に「男装好きの女性」=「レズビアン」と決めつけているわけです。その「=」の間には、複雑な感情や個性は何もないと思っている。男の服を着ている女はレズに決まってるだろ、え? 違う場合もあるの? まさか! と思ってるんです。

本来、ドラマという媒体が描くべきはその「=」の間にあるもののはずなんです。確かに男装好きでレズの人もいるだろうけど、そうじゃない人もいる。その可能性を切り捨てたら、もう人間を描くつもりがないと受け取られても仕方ないと思う。

で、その桃子がアイドルを辞めたがっているわけですが、その理由も「トランスジェンダーだから」の一点張りです。ほかに何も言わなくても「トランスジェンダーだからアイドルを辞めたい」で、視聴者を説得できると思ってる。

ここにはドラマの考える「アイドル像」に関しての問題があります。

まず、トランスジェンダーの女の子は「絶対にアイドルを辞めたがっている」と主張している点。彼女は幼いころからその自覚があったと言っているわけで、だとしたらアイドルになった動機がない。で、なったらなったで、そういう女の子がアイドルでいられるわけがないとされる。

アイドルなんて所詮、性としてのメスを売り物にして、男社会に媚と色気を売ることでしか生き残れない、それができない女は辞めるしかないんだと、そう言っているんです。

「この桃子というメンバーは男装が好きです。だから当然レズです。レズだからアイドルできなくて当然です。そうでしょ、視聴者のみなさん!」

それが『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』という物語が伝えたアイドル像です。つまりこのドラマは、レズの子がアイドルとして歌や踊りでファンを魅了する可能性を「ゼロだ」と言い切ってる。アイドルは全員男好きで、個性的な性的指向や嗜好を持っている人間はひとりもいなくて、いても全員辞めるべきだと、そう言い切っている。しかもそう言い切ってることに完全に無自覚で、あたかもアイドル側の自我に寄り添ったような顔をしている。なんと思慮が浅く、卑しい創作行為だと思いますよ。

はー。なぜこんな論調になるかというと、『刑事ゆがみ』のときや『ラヴソング』の序盤のころの倉光脚本は、そこらへんの個々人の機微を慎重にすくい取って、生き生きと人間を描いて、それを物語に落とし込んでいたからです。確かに個人に寄り添っていたからです。やればできる子なのに! と思うんですよ。

まあ、まだ始まったばかりですし、進んでいくうちに変わっていくこともあるでしょう。『ラヴソング』では4話以降、よろしくない方向に転換してしまいましたが、今回はよい方向に転換していくことを期待しつつ、第2話は今夜放送です。あと、弁護士っぽい仕事をまったくしてなかったみたいだけど、大丈夫かな!
(文=どらまっ子AKIちゃん)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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