日産、ゴーン派役員への粛清で次々退任…ルノー、日産の“独立”阻止に必死の牽制


 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に続いて会社法違反(特別背任)で起訴された事件によって、同社内が揺れている。ゴーン氏の側近だった役員が相次いで職を外されており、ゴーン派に対する粛清が本格化する様相を見せている。さらに、一部メディアで日産・ルノー・三菱自動車連合の統括会社、ルノー・日産BV(オランダ)からルノーの副社長に対して不透明な報酬が支払われていたこと報じられ、日産・ルノー間でお互いに不信感が増幅している。

ゴーン氏の会長解任を決める取締役会が開かれた昨年11月22日、「ある役員が横浜市のグローバル本社1階のショールームで、深刻な表情でずっと携帯電話で話し込んでいた」(全国紙記者)という。社内の目をはばかるように、あえて一般の人しかいない場所でコソコソと電話していた人物こそ、日産CPO(チーフ・パフォーマンス・オフィサー)のホセ・ムニョス執行役員だ。ムニュス氏はその後、辞職したことが明らかになった。

ムニョス氏はトヨタ自動車から日産に移り、北米責任者の時、ゴーン氏に気に入られた。その後、CPOに昇格するとともに日産にとって最重要市場である中国などを担当するなど、上級幹部のひとりとしてゴーン帝国を支えてきた。日産ではゴーン氏、西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)に次ぐ事実上のナンバー3だ。

ムニュス氏は1月初旬に米国ラスベガスで開催されたITの見本市「CES 2019」に出席する予定だったが取りやめた。日産ではムニュス氏が中国などの担当から外れ「特命を担当する」と説明、特命の内容は明らかにしていなかった。実質的には自宅待機だった模様で、その後に辞職した。また、日産でアライアンスを担当するアルン・バジャージュ専務執行役員も担当を外れ「実質的に自宅待機を命じられている」(経済ジャーナリスト)という。バジャージュ氏もゴーン氏の側近のひとりとされている。

報酬を誤魔化していただけでなく、個人的な損失を日産に付け替えようとしていたことなどからゴーン氏の社内での求心力は地に落ち、さらにアライアンスの先行きも微妙となるなか、社員は日産社内でゴーン派に対する粛清が本格化すると懸念している。

多くの製造業で仕事始めとなった1月7日、日産の志賀俊之取締役が今年6月の任期満了で取締役を退任する意向を示したのも、こうした動きを感じ取ってのことと見られる。志賀氏はゴーン氏が日産の社長兼会長兼CEOだった時のCOO(最高執行責任者)で、一時期は日産のナンバー2だった。ゴーン氏からの信頼が厚く後継者と見られていたが、2013年に日産の業績が悪化するとゴーン元会長の手で副会長に更迭された。

ただ、志賀氏の後任となった西川氏とは年齢が近く、ライバル関係にあることから両者の仲が悪いことは業界では有名。「西川氏が日本人でゴーン氏のもっとも信頼の厚かった志賀氏のクビを切る」(日産系サプライヤー首脳)のを察知した志賀氏は、次の定時株主総会で自分の意思で退任することを表明したとみられる。

●アライアンス崩壊の可能性も

日産社内でゴーン派に対する粛清が進むなか、ゴーン氏の会長兼CEO職の解任を見送っているルノーとの関係もギクシャクしてきた。ルノー・日産BVがゴーン氏の側近のひとりであるルノーのムナ・セペリ副社長に対して12年から5年間で総額50万ユーロ(約6200万円)の不透明な報酬を支払っていたことが明らかになった。報酬はゴーン氏の一存で決められた模様で、セペリ氏がゴーン氏の不正に関与しているとの疑念も持たれている。

ルノーは、17年と18年に役員に支払われた報酬に関して不正はなかったとの社内調査結果を発表したが、セペリ氏の件は今後調査する見通し。

ただ、ルノーはゴーン氏不在でも日産への支配力を維持するため、日産に対して2度にわたって臨時株主総会の開催を要請するなど、独立心を高める日産を牽制。ゴーン派を粛清している日産を複雑な思いで見ている。日産はセペリ氏の不透明な報酬のほか、経営統合を目論むルノー経営陣に対して不信感を強めている。当面、ゴーン元会長逮捕後も「アライアンスを維持する」ことで合意したルノー・日産・三菱自だが、相互不信に陥ればアライアンスが崩壊する可能性もゼロではない。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

当記事はビジネスジャーナルの提供記事です。

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