『いだてん』“歌舞伎風”勘九郎の初登場シーン秘話、演出家が明かす


宮藤官九郎のオリジナル脚本によるNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)の第2回が、きょう13日に放送される。第1回の平均視聴率は、昨年の『西郷どん』の初回平均15.4%を0.1ポイント上回る15.5%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と好スタートを切った。ドラマのチーフ演出を務めるディレクターの井上剛氏を直撃し、第1回の撮影秘話や、今後の見どころについて聞いた。

『いだてん』は、日本が初参加した1912年のストックホルム五輪から1964年の東京五輪までの知られざる歴史を、ユーモアを交えて描く意欲作。前半で主演を務める中村勘九郎が、日本でオリンピックに初参加したマラソン選手・金栗四三役を、中盤から主演をバトンタッチする阿部サダヲが、1964年の東京オリンピック招致に活躍した田畑政治役を演じる。第2回では、金栗四三の幼少期が描かれる。

井上ディレクターは、社会現象をも巻き起こした『あまちゃん』でもチーフ演出を手掛けていて、宮藤とは2度目のタッグとなった。

――第1回は、どんなことを意識されて演出されたのですか?

最初だから0話みたいなつもりで作りました。いろんなものをミックスした回だし、キャストの豪華さをこれでもかとひけらかしたいと思って頑張りました(笑)。ものすごい複雑な構成の話ですが、現代の人が観て「ああ、東京オリンピックがやってくるんだ」ということと、当時の人の気分を上手くつなげられたらいいなと思いました。

――金栗四三の恩師・嘉納治五郎役の役所広司さんの存在感が圧巻でした。役所さんは1994年の『花の乱』以来、25年ぶり6度目の大河出演となりましたね。

役所さんのすさまじさは、今後も回を重ねるごとに上がっていきますが、こういうリーダーがいたら楽しいだろうなというリーダー像です。当時の嘉納治五郎は、とんでもないエリートで、外国語が堪能だし、時間を惜しまない人でした。時代劇で言えば、殿様の位置の役柄なので、「魅力的に見えるようにしたいですね」と、役所さんとは話しました。

――満島真之介さんたちが演じる応援団・天狗倶楽部のメンバーも強烈なインパクトを放っていました。

なるべく暑苦しく、痛快にやりたいというのがテーマでした(笑)。だから「うざい」「暑苦しい」というのは、最大の褒め言葉です。みなさんには「振り切ってお願いします」と言いました。

いわば『いだてん』は“スポーツ初めて物語”ですが、誰か応援する人がいないとスポーツは成り立たない。天狗倶楽部は、日本最初の応援団。こういう活気のある人たちが物事を作ってきたんですよという運びにしました。

――第1話のラストで、主人公・金栗四三役の中村勘九郎さんが初登場するシーンが話題となりました。雨に濡れた帽子の赤い染料が四三の顔に流れ、歌舞伎役者の隈取りのようになっていましたが、あのシーンの演出意図について聞かせてください。

実際に塗料が流れ落ちたというのは史実で、脚本にも赤い塗料が流れているとは書かれていました。ただ、頭のなかでそのシーンのイメージを描いた時、一番最初に主人公が出てきて、(赤色で)血だらけのようだったら、みんなドン引くだろうなと。史実としては面白いけど、それだけだとまずいことになるかもしれないと思いました。

――では、隈取りにするのは、井上ディレクターのアイディアだったのですか?

とっかかりはそうですね。でも、それは宮藤さんの文体があるからこそのもので、自分ひとりで思いついたものではないです。

確か勘九郎くんの歌舞伎を観に行った時だったと思いますが、隈取りにするのってありなのかなと思い、勘九郎くんに相談して、中村屋の隈取りの勉強をさせていただいて、そこからちょっとアレンジしました。

主役を血だらけで登場させて果たして笑えるだろうかと思ったので、ちょっとファニーに、ファンタジックにしました。土砂降りの雨のなかで登場するから、そんなに感動しないんじゃないかと思い、一か八かでやってみました。

でも、最初、勘九郎くんに引かれました。「隈取りって何ですか!?と(笑)。素顔じゃダメなんですか?と。え?登場からいきなりですか?すごい大河ですね」と言われました。

――1話の反響、今後の抱負について聞かせてください。

多くの人に観ていただいて、ありがたいなとひしひしと受け止めています。おふくろも面白いと言ってくれましたし。さらなる飛躍になっていくといいなと思っています。

第2話では、金栗四三の子ども時代が描かれる。幼少期を演じるのが久野倫太郎、少年期を演じるのは、船元大馳朗。久野は、地元の熊本のオーディションで抜擢された演技未経験の子役ということで、その演技に注目だ。

■プロフィール
井上剛(いのうえつよし)
熊本県出身のテレビディレクター、演出家。2013年に連続テレビ小説『あまちゃん』でチーフ演出を務め、東京ドラマアウォード2013 演出賞を受賞。2017年、『トットてれび』で第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。大河ドラマの演出は『利家とまつ~加賀百万石物語~』に続いて2本目だが、チーフ演出は初となった。

■著者プロフィール
山崎伸子
フリーライター、時々編集者、毎日呑兵衛。エリア情報誌、映画雑誌、映画サイトの編集者を経てフリーに。映画やドラマのインタビューやコラムを中心に執筆。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』、好きな俳優はブラッド・ピット。好きな監督は、クリストファー・ノーラン、ウディ・アレン、岩井俊二、宮崎駿、黒沢清、中村義洋。ドラマは朝ドラと大河をマスト視聴。

(C)NHK

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