切らない手術より「子宮全摘出」が推奨されるワケ――「子宮筋腫」、婦人科医に聞く治療の選択肢



40代女性の3~4人に1人は持っている「子宮筋腫」。当連載では社会復帰の早さと対応医院の多さという観点に着目し、「子宮動脈塞栓術(以下、UAE)」と「腹腔鏡手術」、2つの手術について取材を行っている。UAE手術の2回目となる今回も、前回に引き続きUAE手術を1998年から行い3,500症例の実績を持つ調布keijinkaiクリニック・瀧康紀医師に気になる再発や費用について話を伺った。

子宮筋腫の5年目の再発率は5~10%


――前編で、子宮筋腫は多発するほど再発しやすい、とお話ありました。UAEの手術後の再発の状況について教えてください。

瀧康紀医師(以下、瀧) UAEの手術における子宮筋腫の5年目の再発率は5~10%です。若い人ほど閉経まで時間があるため、再発しやすいと言えます。

ですので、40歳の女性100人がUAEの手術を受けたら、5~10人が45歳で再発します。ただ、その次に手術をすると、5年後ですので、閉経のタイミングもやってきますから、手術をしなくても子宮筋腫が閉経で小さくなっていく、というケースもあるでしょう。

――UAEの手術において再発とは、一度壊死した子宮筋腫とはまた別の子宮筋腫が出てくるということでしょうか?

瀧 それもありますし、子宮筋腫につながる血管を塞がれて、枯れたと思われた子宮筋腫の一部に生きている細胞が残っていて、そこが再増大をはじめた、というケースもあります。子宮筋腫において「再発のない治療」というのは子宮を全摘出する以外にありません。胃潰瘍と一緒なんです。胃が残ってる限り、胃潰瘍になる可能性はありますよね。

おへその高さより高い筋腫はUAEの適応外


――大きくなりすぎた子宮筋腫はUAEでは不向きなのでしょうか。

瀧 『Williams 婦人科学』という世界中で読まれている医学書があるのですが、当院の治療法はこちらに則っています。この中で子宮筋腫における「禁忌(医学用語においては、「適応させていけない」という意味)」についても触れられており22~24週の妊娠子宮より大きいサイズの子宮は「相対的な禁忌」と書かれています。より具体的に言えば、おへその高さより高い位置にある子宮筋腫は、UAEの適応外になります。

――「相対的な禁忌」というのは?

瀧 「手術を行っても不利益が多い」ということですね。UAEに限らずどんな治療法も益と不益があります。益が不益を上回るときにその治療法は選択されます。

瀧 「UAE」は日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会が出している産婦人科診療ガイドラインにおいて、子宮筋腫の治療法において、現在3番目に上がっている治療法です。以前は5番目でした。

――2と3を比較すると、子宮摘出よりUAEは下なんですね。ガイドラインに沿えば、より上位で「子宮摘出」が選ばれることになります。

瀧 子宮摘出を何とかして避けたくて、ネットで調べて当院にいらっしゃる患者さんは多いですね。費用面でいうと、UAEは2014年から保険適応になり15万円です。基本的に全ての患者さんが保険適用です。尚、UAEは高額医療に該当し、還付金が受けられますので実際には8~10万円の出費ですね。

――UAEの手術後、壊死した子宮筋腫が膣から落ちてくる、というケースもあるとか。

瀧 筋腫の位置によっては、そういった壊死した子宮筋腫が膣から出てくる「筋腫分娩」になるケースもあります。ですが、このケースは限られており、粘膜下筋腫(子宮の粘膜に飛び出ている筋腫)がほとんどですね。

――どういった形で出てくるんでしょうか。

瀧 子宮口でつっかかることもありますが、患者さんの自力で出てくるケースもありますよ。6センチ以下の筋腫であれば出産経験ありなしかかわらず問題なく出てくると思います。出産経験者だと10センチぐらいまで出ますよ。

瀧 僕はUAEの手術を行っていますが、諸手を上げてUAEに賛成というわけではないんです。手術(子宮そのものの摘出や、子宮筋腫だけの核出手術)をした方がいい患者さんにはそうしたほうがいい、と伝えていますし、実際、当院の外来にいらっしゃる方の2割はUAEの適用外なんです。

――「子宮筋腫の大きさ」のほか、UAEの適応に該当しないケースがあるのですね。

瀧 例えばお子さんを欲しい方の場合、子宮筋腫が1つだけしかないなら、UAEよりは、子宮筋腫そのものを核出してしまった方が、妊娠出産に有利だということがわかる場合は核出手術を薦めています。一方、子宮筋腫が多発していて、現実的に摘出で取り除くのが不可能であったり、できたとしても平たく言えば、子宮があちこち傷だらけになってしまい妊娠出産を望めないだろうという場合は、UAEが有利になります。

また、子どもを望まない方でも、過去に何回か子宮筋腫の核出手術で開腹手術をしているケースは、腹腔内の癒着もあることが見込まれます。そういった人がまた手術、となると今度はシンプルに子宮全体を摘出することになる可能性もあります。それならば、その前にUAEはやる価値があると思います。

――子宮筋腫による症状、閉経までの年齢、妊娠の希望、それまでの手術歴を加味する必要があるんですね。ありがとうございました。
(石徹白未亜)

調布keijinkaiクリニックホームページ

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