オタク、研究者……理屈っぽい人ほどオシャレに向いている/トミヤマユキコ×MB対談

女子SPA!

2019/1/12 15:45



「グレーのパーカーの着方がわからない」「冬のタイツは『とりあえず黒』でいいのか?」「3着目のコートの選び方」など、大人の女性なら誰もが抱えるファッションの悩みにとことん真剣に向き合ったエッセイ『40歳までにオシャレになりたい!』の著者・トミヤマユキコさんと、『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論』など、オシャレの悩みを理論的に解説した著作で支持を集めるMBさん。「感覚ではなく、とことん理屈で考え抜いて法則や正解を導き出すことでオシャレを目指す」ことを重視する二人の対談、後編です。

◆会社と家の往復以外の「第三の空間」が大人にも必要

MB:僕はいま、ファッションをテーマにしたサロンをやっているんですけど、なんでサロンにこんなにニーズがあるんだろうなって考えたときに、「あ、みんな部活がしたいんだな」って気づいたんですよ。

学生のころって、教室と家の往復の間に「部活」があって、それが楽しみや息抜きになっていたと思うんですけど、大人になると、明確な趣味がある人以外は、職場と家の往復だけじゃない「第三の空間」てなくなっていきますよね。そういう人にとって、「ファッション」が第三の空間になったらすごくいいよなって。服は毎日着るものだし、毎日のファッションを楽しみながら働ければ、仕事が大変なときでも行き詰らずに過ごせる。

トミヤマ:女の人は、お茶したりお酒飲んだりしながら、ファッションやコスメについて高解像度のおしゃべりをする女子会文化があるけど、男の人は、友達同士でお茶することってほとんどないし、飲み会になると完全なハレの場になってテンション上がっちゃうから、あんまり「おしゃべり」って感じにならないイメージがあります。女子会って、否定的にとらえる男性もいるけど、人生のガス抜きとしてすごく有効だし、男性にももっと広がればいいのにって思います。

MB:そうなんですよ。同僚に「おまえ今日のシャツかっこいいな!」とか言わないですよね。だから、そういうことを話せるサロンを作ったんです。「意識を変えるためにはまず行動パターンを変えるべき」というのはよく言われることですけど、ファッションのサロンでオシャレ解像度の高い人と話す機会が増えれば、ますますオシャレになれる。でも、考えてみたらわざわざサロンを作らなくても日々のおしゃべりで情報交換ができる女子っていいですよね。

トミヤマさんは、そういった日々の女子会のなかで「オシャレだね!」って言われることは増えましたか?

トミヤマ:私は、オシャレ修行を始める前のトンチキファッションをビフォー、修行を始めた後のコンサバファッションをアフターと呼んでいるんですが、「今日はビフォーで来るの? アフターで来るの?」「アフターもいい感じじゃん!」とは言われるようになりました(笑)。

インスタにアップしてみんなに「いいね!」をもらいたいわけではなく、あくまでも自分のなかでの伸び率というか、友達や学生によくなったねって言われれば満足なので、そういう意味では成功してるなって思ってます。

MB:その割り切り方がいいですよね。

◆おしゃれは感覚じゃなくて法則で覚えるべき

トミヤマ:「オシャレになった私を見て!」ではなくて、みんな私の屍を乗り越えてオシャレになって! という気持ちなんです。オシャレの人体実験というか。もともとが研究者なので、試行錯誤の後に理論化していく作業が好きなんですよ。

「グレーのパーカーは若さと勢いで着るもの。大人っぽく着たいなら1枚で着てはダメ!」っていうのも、大量のファッション誌でパーカーのコーディネートをチェックした後に導き出された結論なんですけど、ファッション誌にはそんなことひと言も書いてないんです。でも、POPEYEとか見ると、シティボーイはみんなパーカーの下にシャツを着たり、コートを羽織ったり、うまく重ね着していて。その「言葉では書かれていないが重要な情報」をキャッチできたときは快感です。

MB:トミヤマさんは研究者ならではのアプローチで法則を導き出しているけど、オシャレ素人が写真メインのファッション誌を見てルールを理論化していくのってすごく難しいですよね。

トミヤマ:わたしの研究は「質より量」なので、みなさんも量をこなせばきっとできるようになるんですけど、まあやらないですよね普通(笑)。MBさんの本は、最初は「むちゃくちゃ文字が多いファッションの本って不思議だな」って思ったんですが、理論の本だから頭に残る。右も左もわからない素人に文字情報で基本ルールを教えてくれるのがすごいと思いました。

MB:ナチュラルボーンオシャレの人なら、ファッション誌の写真を見るだけで無意識にルールがわかるけど、ほとんどの人はいったん言語化したほうがわかりやすいんですよ。

トミヤマ:そうやってファッションのリテラシーを高めてから改めてファッション誌を読めば、入ってくる情報量も格段に増えますよね。自分が理屈の人間だから、理論が先にあると応用しやすいなと思います。

MB:そういう意味では、オタクの人って言うのは、ファッションの世界と相性がいいと思っているんですよ。細かく追及するのが好きな人たちが、ファッションの理論を学べば一気にオシャレになるんじゃないかなって。オシャレに興味のない人たちが多いと思うけど、本質的にはオシャレに向いている。

トミヤマ:オタクって、服になるべくカネを使いたくないじゃないですか。私も、10万する洋服を買うならそのカネでマンガを買いたいって思ってしまうからよくわかるんです。

でも、MB理論だったら、ユニクロやファストファッションを活用して、かなり安い費用でオシャレになれるから、理論的という意味でも、おカネを使わないという意味でもうまくハマりそうですね。今まで服に興味のなかった男性のオタクたちが、MB理論でどんどんオシャレになっていったらおもしろい。

ジャニヲタの女子って、コンサートは「推しとのデート」という感覚だから、めいっぱいオシャレしていくんですよ。一方、女性アイドルの握手会にオシャレしていく男性ってそんなにいないような。男性にも「アイドルに会いに行くときはばっちりオシャレしていこう」という文化が広まっていったら素敵だと思います。

◆色気を出す服の着方がわからない

トミヤマ:オシャレ修行を経て、コンサバだけどつまらなくないと思える格好はだんだんできるようになってきたと思うんですけど、そこに大人の女の色気みたいなものを加えるにはどうしたらいいんでしょうか。色気の出し方わからない……。そもそも、色気を服で出すことってできるんですか?

MB:僕は、色気についてはトム・フォードの説明が一番しっくりくるなと思っているんです。「スーツをビシッと着ることではなく、スーツをビシッと着て、そのあとネクタイを緩めることが色気なんだ」って。カッチリと守られたファッションのなかにちょっとの隙を見せる。女性だったら、やたら肌を見せるんじゃなくて、抜き襟で首や背中を少し見せるなんていうのは流行っていますよね。

トミヤマ:確かに抜き襟は、露出度が高いわけではないのに、色っぽく見えますね。ちょっと花魁っぽい感じもある(笑)。

MB:試着室で服を着た後に、服を着なれていない人ってそのまま棒立ちになるんですけど、オシャレな人って、必ずなんか微調整するんですよ。

トミヤマ:する! 裾まくったり、ボタン外したり、インしたり、なんかちょこちょこやりますよね!

MB:そうやって着崩すことで、ちょうどいい抜け感、色気が出るんじゃないかなと思います。

トミヤマ:ファッション素人って、買った服をそのまま着たらスタイルが完成すると思っているけど、そうじゃないんですね。私がいままで好んで着ていた奇抜なデザインのトンチキ服は、コンサバ服と違って既に崩れているようなもんだから、何もしなくてもそれなりに見えるんですよ(笑)。だから、着崩すというのがわからなかった。コンサバ服に挑戦し始めてから着崩しの大切さを学びました。そうか、それが色気に繋がるんですね。今後もオシャレ修行を積めばきっと色気が手に入ると信じてがんばります!

◆MBプロデュースの姿見が発売!?

MB:『40歳までにオシャレになりたい!』は、掲載されている写真もすごくよかったです。姿見がないからスーパーのトイレで自撮りをするんだけど、結果おばちゃんが写りこんでしまった……という写真を本に掲載しているのがスゴイ(笑)。

トミヤマ:結局姿見はまだ買えていないので、姿見を買うポイントを教えてほしいです! というか、ちょうどいいサイズ感でワンルームに置けるような姿見をMBさんがプロデュースしたら絶対売れますよ!

MB:幅が広すぎると後ろが写りこんじゃうから自撮りには不向きとか、キャリーがついていると鏡が床から浮いているから足が短く見えるとか、いくつかポイントはあるんですよ。洋服屋さんの姿見は少し斜めになっていたりと、ちゃんと格好よく見えるように計算されていますし。何より、インテリアとしても部屋になじんで、その鏡の前に立ったときにテンションが上がるっていうのは大事ですよね。

トミヤマ:なんかすごくカネのにおいがする……!(笑)。ぜひプロデュースして、儲かったら私にも1枚ください!

●トミヤマユキコ

ライター、早稲田大学文化構想学部助教。著書に、大のパンケーキ好きが高じて著したガイド本『パンケーキ・ノート』(リトルモア)、『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(左右社、清田隆之と共著)など。いとうせいこうと星野概念の対談本『ラブという薬』(リトルモア)では構成を担当。大学では少女マンガ、サブカルチャーについての講義を担当

●MB

ファッションバイヤー、ブロガー。メンズファッションの底上げを図るべく各メディアで執筆中。“買って着て書いて”一人三役をこなす。主な著書に『最速でおしゃれに見せる方法』、『幸服論』(ともに小社刊)。企画協力したマンガ『服を着るならこんなふうに』(KADOKAWA、漫画・紺野やえ)シリーズはベストセラーに

<取材・文/牧野早菜生 撮影/福本邦洋>

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