井浦新、震災テーマの実話ドラマに「この作品をやり遂げていくことが大きな挑戦」 

ザテレビジョン

2019/1/12 07:00

1月15日(火)放送のカンテレ開局60周年特別ドラマ「BRIDGE はじまりは1995.1.17神戸」(夜9:00-11:18、フジテレビ系)で、幅広い役柄を演じ分ける実力派俳優として注目を集める井浦新が主演を務める。

同作は阪神・淡路大震災後、わずか74日間で六甲道駅を復旧させた人々の実話を基に描くヒューマンストーリー。井浦は実在の人物をモデルにした工事所長・高倉を演じる。

建設会社・磐巻組の高倉らは、壊滅的被害を受けた駅の復旧工事を決意。線路ごと崩壊した六甲道高架橋を“ジャッキアップ”という奇抜な工法で復旧する。

放送に当たって井浦にインタビューを行い、作品への思いや撮影中のエピソードなど聞いた。

■ 僕にとって大きな挑戦になると思えました

――初めに台本を読んだときの印象を教えて下さい。

こういった力強い作品をやらせていただけて本当にありがたいと思いました。阪神・淡路大震災は、平成に起きたさまざまな災害の中でも自分の中で最初に知った最も大きな自然災害でした。

当時僕は20歳で、起きたことを全く受け止めることができなくて。東京にいたので、映像で見るうそのような景色が強く残っているだけでした。

そこで被災者の人たちがどういうふうに乗り越えてきたのか、そして当時どんな思いだったのか、というのを全く知らないまま当時を過ごしていました。

それもあり、この作品(の役)を頂いたときに、“何も知らない自分はやる資格がない”っていう側面も正直ありました。

ですが、だからこそこの機会をもって、平成に起きた大きな災害の一つをきちんと学び直して、しっかり受け止められる機会にしたいという気持ちが勝りました。“これは自分のやりがいを持ってやれる”と。

それに芝居もそうですが、精神的な面でもこの作品をやり遂げていくことが、僕にとって大きな挑戦になると思えました。心は絶対折れないように、プレッシャーに負けないようこの作品に向き合ってやりたいという気持ちを強く持ちました。

■ 当たり前が当たり前じゃないという幸せ

――実際に六甲道駅でロケを行ってみて、いかがでしたか?

感慨深い部分は本当にありました。撮影で何度も六甲道に行ったのですが、最初に六甲道へ行って駅を見たときの印象と、東京でロケやセットで復旧作業をしていくシーンを撮り終えて、また六甲道に行ってロケを経て見たときの印象とでは大きく変わっていました。

撮影が六甲道駅のロータリーで行われたので、大掛かりな撮影隊がいたら地元の皆さんも何だろう? と思って立ち止まるんです。

楽しそうに見学してくださっているんですけど、見学されてる方たちが多過ぎて、撮影が中断したり、スムーズに行かなくなったりしたこともあったんですけど、それさえもいいよ! という気分になりました。

この六甲道駅を、普段生活の中で当たり前に使っていることっていうのが、撮影で復旧作業をしてきた上で見ると本当にキラキラと輝いているんです。地元の方たちが楽しそうに撮影の現場を見てくださっている姿がうれしく思えてきて。“当たり前の日常がやっと今、あるんだな”って。

実は、撮影前に一人で六甲道へ行きました。今の六甲道を見ないとスタートしきれないと思って。でも、そのときは確認作業くらいの気持ちだったんです。

駅員の方たちにもいろいろお話を聞いてみましたが、若い駅員の方たちで、当時のことを知ってる人がいなくて。「それがいまなんだな」と思ったりもしました。

あとは、高架の下にチョークの跡があって、きっとこれは当時のチョークの指示の跡なんじゃないかな? っていうふうにイメージすることしかできませんでした。

ですが、芝居を重ねるにつれて、六甲道駅が他人事じゃないというように思えて。最後に六甲道駅を見たときには、こんなに当たり前にある六甲道駅が、いかに当たり前じゃないかっていう幸せをかみ締めていました。

■ 「使命感」という大きなテーマ

――印象に残っているシーンはありますか?

高倉がいる磐巻組の面々と一緒に、ジャッキアップで高架下に入って作業をするんですが、途中、余震が襲い命懸けで復旧作業に当たるシーンがあるんです。

その流れの中、高架がジャッキアップで上がりきったところに、それまで見えてこなかった高架の隙間から太陽の光が差し込んでくる瞬間があるんです。

普通だったら駅の屋根がかぶさって光が降りてこないんですけど、一瞬だけ光が差し込んでくるシーンを撮っているときと、そのセットを初めて見たときの感動が強く印象に残っています。

昨日までは高架がつぶれた状態で、ジャッキアップでみんな泥だらけになって砂埃の中で撮影していました。

その日はスタジオに入ったら本番のテスト前の静けさの中で、ジャッキアップで上がりきった六甲道駅の高架の中に佇んでいたら、胸に迫ってくるものがありました。

――高倉のモデルとなった岡本啓氏と対談していかがでしたか?

岡本さんとお話させてもらった時間というのは本当に大きかったと思います。岡本さんが他の番組で当時のお話をされている映像を、現場に入る前に頂いたんです。

映像の中で発する言葉の中から、こんなふうに感じるんだなとか、何度も言っているこの言葉はきっと岡本さんが大事にしていたんだろうなと、そういったことを台本に書き留めていきました。

映像の中でも岡本さんからたくさん得ることはあったのですが、それを全部表現していくとバラバラになってしまいそうだったので、一つ自分の中でぶれない何かを、撮影に入る前にテーマとして持っておこうと思ったのが「使命感」だったんです。使命感というワードは岡本さんも映像の中で何度も繰り返し伝えようとしていました。

自分のやるべきことは何だったのかという使命感を、芝居でどうやって表せばいいんだと思いながら、岡本さんと出会う前は分からないからこそ手探りで使命感を感じながら芝居をしていました。そんなときに岡本さんと話をさせていただける時間が作れて。

そこで岡本さんから直接頂いた言葉は本当に大きかったです。「高倉を強いリーダーシップを持って演じてください」って言われたんです。使命感を全開でやっていれば、多くの人たちを引っ張っていくことだってできるんじゃないかって思っていたんですけど、使命感と強いリーダーシップっていうのは違うんだなって気付きました。

強いリーダーシップを持って現場のみんなを奮い立たせて、ときには現場で一緒に働く仲間たちがどうなんだろうと思うような判断も貫いて。自分の信じることを貫き通すってことも必要になりますよね。

そういったときに、強い使命感とリーダーシップという2つの軸をちゃんと意識して演じ分けていかないと、表すことが出来ないと思い知らされたのは、岡本さんから頂いた言葉があったからだと思います。とても大きい手掛かりを頂きました。

■ 放送と同時に皆さんの物語になる

――岡本さんの言葉は、作品だけでなく、井浦さんの人生にも得たことはあったんでしょうか。

やはりこういった実話を基にした作品に参加させてもらったとき、一番の宝は何なのかと考えると、その現場で感じたことや、芝居を通して自分が何を感じたのかということだと思います。

阪神・淡路大震災とそこで苦しんだ人たちの姿、そのど真ん中で苦しんでいる人たちの日常を取り戻すために、自分の仕事を鬼のような強い意志を持ってやり遂げた人の心というものを、追体験させてもらって。

感じて見てくることができたのは僕自身の日常生活に全て返ってくることだと思います。それこそ僕がこの作品に参加して一番得たことでもあります。そして、一つの作品になって、たくさんの方たちに見てもらったとき、それは皆さんのものにもなっていくことだと思うんです。

それまでは物語の中から自分が得たものなんですけど、放送と同時に皆さんの物語に。皆さんが得ることにもなっていきますし、きっと僕が現場で作品を通して感じたことがしっかり伝わっていくと思います。

■ 人間の生命力の強さを感じる作品

――作品を振り返って視聴者に伝えたいメッセージはありますか?

震災は一瞬にしてすべてを奪っていく怖いものであるのは、被災者の方たちはもちろんですが、いまを生きる日本人であれば感じ取っているものだと思います。でも、そういう怖さで踏みとどまってしまうことが一番実は悲しいことだったりもします。

作品を通してですけれど、少なからず実話ベースの物語でもあるので、少しでも当事者の方たちの思いや心に近づこうという思いで、誠心誠意この作品に挑みました。

いま、感じることは、震災が起きて全部が壊れてもそれでも生き残った人間たちって、とんでもない生命感を持っているということです。

次の日も朝を迎えられて、人と人との関わり合いを持って助け合って、肩寄せ合いながら這いつくばって、生きていこうとする。やっぱり人間ってすごいんだなぁっていうのをこの作品を通して一番強く思い知らされました。

もちろん悲しみ、苦しみがあって、簡単に乗り越えることなんてできないでしょうし、一生心の傷として残ることだと思います。だけど、心に傷を負いながらでも生きていけるのが人間なんですよね。

時間をかけながら、少しずつ傷を癒やすことができる。それでも飯を食って、生きて、っていう人間らしさや人間の生きる生命力の強さが、震災をテーマにした作品を経て、一番感じるところでもありました。

そこを一番強く伝えていきたいですし、そういった作品であればいいなと思っています。(ザテレビジョン)

https://news.walkerplus.com/article/175176/

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