“韓国の三谷幸喜”ことチャン・ジンの最新コメディ『花の秘密』を女優みょんふぁがプロデュース~“笑いあり! 涙なし! のドタバタコメディ”で女優陣がハッチゃける‼︎

SPICE

2019/1/11 13:00



「文化庁新進芸術家海外研修」制度というものがある。その制度により海外で学んだ若手芸術家に研修成果を発表する機会を提供する場、それが「文化庁委託事業 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業 日本の演劇人を育てるプロジェクト 海外研修の成果公演」だ。日本劇団協議会が主催し、制作体制を整えてくれるのだが、2018年度は、女優で翻訳も手がける洪明花(みょんふぁ)が企画者となり、韓国の超人気作家で“韓国の三谷幸喜”との異名もとる、チャン・ジンの最新シチュエーション・コメディ『花の秘密』を翻訳上演する。ちなみに共演者の中島唱子(平成7年度派遣)、美術の池田ともゆき(H11年度派遣)、照明の藤田隆広(H18年度派遣)、音響の百合山真人(H28年度派遣)、衣裳の萩野緑(H22年度派遣)、といった具合に「文化庁新進芸術家海外研修」を経験したメンバーが参加している。
『花の秘密』(前列左から)みょんふぁ、沙央くらま(後列左から)中島唱子、原田樹里
『花の秘密』(前列左から)みょんふぁ、沙央くらま(後列左から)中島唱子、原田樹里

洪明花はいわば遅咲きの女優さんかもしれない。彼女は演劇がやりたくて大阪芸大を目指すが、親の反対をかいくぐるため音楽学科に入学する。その後、そとばこまちのオーディションに合格するものの、両親の猛反対のため、一度は夢をあきらめごく普通の社会人として働いていた。ところが1997年にニュージーランドに1年滞在する間にあの「男はつらいよ」をミュージカルとして上演したのをきっかけに、再び演劇への思いが首をもたげる。30歳を過ぎてから上京、今は拠点を静岡に移したユニークポイントに所属するなど、少しずつキャリアを積んでいく。でも、ここ最近の勢いがなかなかすごい。愛らしい風貌、年齢不詳の存在感を武器に、青春時代を取り戻すかのごとく(わ、失礼!)狂い咲いているように見える。ここ1、2年でも劇団桟敷童子『蝉の詩』、洪明花ひとり芝居、日本劇団協議会『SCRAP』、流山児★事務所『満州戦線』、名取事務所『渇愛』、野生児童『春暁』、チャリT企画『パパは死刑囚』、TOKYOハンバーグ『へたくそな字たち』と、一人芝居、二人芝居とバラエティに富んだ作品でさまざまな表情で魅せてきた。また、時期を同じくして『代代孫孫2016』、本作と同じチャン・ジンによる『トンマッコルへようこそ』では翻訳家として小田島雄志・翻訳戯曲賞も得ている。

映画監督として活躍するチャン・ジン、13年ぶりの舞台脚本


そんな洪明花が、自らプロデュースする形で翻訳・出演、周囲の力を借りながらキャスティング、スタッフを集めて上演するのが本邦初演の韓国発コメディ『花の秘密』だ。脚本を手がけたチャン・ジンは、800万人も動員したと言われる映画『トンマッコルへようこそ』を脚本・製作したほか、『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』『ガン&トークス』『小さな恋のステップ』『偉大な系譜』『拍手する時に去れ』『グッドモーニング・プレジデント』など新時代の映像派として高い評価を受ける韓国人映画監督。実はキャリアのスタートは演劇で、この『花の秘密』は13年ぶりの舞台脚本だった。

洪明花は「チャン・ジンは一般の人も含めて、知らない人がいないくらい有名な存在です。2015年に久しぶりに舞台の新作を書くと聞いたときに日本でも上演したいなと思ったんです。韓国の友達にもリサーチしたら、みんなが勧めてくれ、私も絶対的な信頼を寄せているので、見てもいないのに決めました(笑)。チャン・ジン自身はブラックというか、シュールなコメディが得意なんですけど、『花の秘密』は比較的ストレートな描き方をしています。2015年に初演されたんですけど、その年のうちに2度も再演されているんですよ。そのあともずっと韓国各地で上演されており、何カ国かでの海外上演の話も出ているようです。その第一歩が、今回の日本公演です」と語る。


物語の舞台はイタリア北西部の小さな村……。んんん? いや思い込みとは恐ろしいが、当然韓国の話が描かれていると思って台本を読んだら実はイタリアのお話なのだ。

「ふふふ、そうですね(笑)。韓国の人が書いているのに、韓国人の出てこない作品。最初から遊びにかかっているところが面白いなあって思いました。でも韓国人とイタリア人はなんだか似ていると言われるんですよね。ラテン的な気質、料理をわーっとたくさん作るところ、男の人がお母さんを慕うところ、まず思いを先に言ってからすべてを解決させていくところ……。チャン・ジン本人に聞いたわけではないけれど、海外公演も視野に入れて、イタリアの物語にしたのかもしれませんね」(明花)

ほかにも何か隠された狙いがあるのかもしれないが、それは皆さんの目でたしかめてほしい。で、こんな物語になっている。

舞台はイタリア北西部、ビラペローサという小さな村。この村の人びとの多くはブドウ農場を営み、ワイン作りを生業としている。春から秋の収穫時期までは、ずっとワイン作りに追われ、冬になると男たちはサッカーに夢中になり、女たちは集まっておしゃべりすることがただ一つの楽しみとなる。

主役となるのはソフィア、ジャスミン、モニカ、ジーナという刺激のない平凡な毎日を過ごす4人の妻たち。ある日、いつものようにソフィアの家に集まりおしゃべりに花を咲かせていると、サッカー観戦に出かけたはずの夫たちの車が渓谷から転落したという情報が舞い込む。悲しみに暮れる一方で、夫にかけた保険が気になり始める妻たち。そして明日は保険会社が派遣する医者が健康チェックの問診にやってくるのだ。妻たちは、男装してその場を乗り切ろうと考えるが−−。


「チラシのキャッチフレーズにも書かせていただきましたが“笑いあり! 涙なし!のドタバタコメディ”です。どんどんありえないでしょ、無理でしょという展開に踏み込んでいく。翻訳者としては、韓国と日本では笑いのポイントが違ったりしますので、演出の横内謙介さんと、まずは忠実に訳して、現場でブラッシュアップしていこうと相談しています。でも、役者はやりがいあるんですよね。逆に言えばどこまで遊べるかにかかっている。そういう意味では力のある方にお願いしていますので、舞台上に躍動感、痛快感が出ればいいなと思っています」

ちなみに洪明花は、2015年に「文化庁新進芸術家海外研修」で劇団美醜主宰のソン・ジンチェク氏の協力もあり韓国国立劇団で1年間の俳優修行を行った。在日三世ではあるが、この時は本格的な韓国体験で、しかもとても新鮮だったそう。

「韓国の戯曲を日本人のチームで上演するということは、もちろんないわけではないんですけど、特にコメディが上演されることはあまりないんですよね。韓国ってコメディだらけなんです。小さな劇場でやられるものはサロン・ド・コメディなんて言われるんですけど、大衆受けするから1日3回公演なんていうこともあるんです。そんな韓国の演劇事情をもっともっと伝えたくて。女優としてのお仕事に専念して、通訳や翻訳などのお仕事を減らそうと思っていた時期もあったんですけど、私だからこそ両国をつなぐ役割もあるんじゃないかと思って、今では積極的にコーディネートや戯曲の紹介も行っています」


《みょんふぁ/洪明花》大阪芸大音楽学科卒業後、劇団そとばこまち、ユニークポイントに所属し、現在はCES所属。舞台や映画で活動。劇団公演以外に、燐光群、椿組、流山児事務所、風琴工房、ワンツーワークス、山の手事情社、劇団桟敷童子、ポかリン記憶舎、チャリT企画、TOKYOハンバーグなどに客演。日英韓のナレーションや司会、通訳なども務めるほか、映画や演劇の通訳・翻訳も手がけ、日韓演劇のコーディネートも行う。

取材・文:いまいこういち

当記事はSPICEの提供記事です。

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