『家売るオンナ』三軒家の“虚偽&脅迫”セールストークで成約は、倫理的に問題ないのか


 今クールの連続テレビドラマ『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)の第1話が9日、放送された。

「私に売れない家はない」と豪語し“伝説の不動産屋”として名を馳せるテーコー不動産新宿営業所売買仲介営業課チーフの三軒家万智(北川景子)は、部下の庭野聖司(工藤阿須加)と共に、定年を迎える夫と専業主婦の夫婦を高層マンションの内覧にアテンドする。しかし、その物件にまるで興味を示さない妻は、三軒家と庭野を連れて先に家に帰り、イビキがヒドくて顔も気に食わない夫と、これから死ぬまで一緒に生活をして、さらに死んだ後も同じ墓に入るのが嫌で、離婚を考えていると明かす。しかし三軒家は、寝室が別々で、さらに夫には内緒で妻が一人で入れるお墓をオプションにつけた物件を紹介し、妻の合意を取り付けることで成約に至る。

次に三軒家は、「世間から身を守れる家」を探す人気ユーチューバーのにくまる(加藤諒)にボロボロの一軒家を紹介するが、家の前でにくまるが若い男性グループにカラマれてしまい、三軒家はにくまるから激怒される。そして、男たちに小突き回されているにくまるを救ったフリーの不動産業者・留守堂謙治(松田翔太)に、にくまるを取られてしまい、にくまるは留守堂から紹介された山奥の古民家を一発で気に入り契約してしまう。にくまるは幼い頃に両親が離婚し、引き取られた“育ての親”である祖母の家に、その家がそっくりだったのだ。

その様子を見ていた三軒家は、なぜかにくまるに紹介したボロ家の塀を壊し、自身がユーチューバーになり「丸見えハウスのサンチー」というチャンネルを開設し、外から丸見えの家で生活し始めて、その模様を動画で公開。瞬く間に人気チャンネルとなり、早くも山奥での生活に飽きたにくまるが三軒家のところに飛んでくるのだが、三軒家はにくまるに対し、「人々の目、賞賛と批判の嵐です。それこそが、あなたの命を支えているのです」と
営業トークを展開し、そのボロ家を1億円で売ることに成功するところまでが放送された。

●三軒家の営業手法に疑問

ドラマとしてはコメディータッチなのだが、三軒家がアップの表情で「ゴー!」というたびに周囲が三軒家の指示に服従したり、仲村トオルの“間の抜けた課長”役が板についていなかったり、イモトアヤコがむやみやたらにウルサかったりと、全体的に“空回り感”は否めず、個人的にはノリについていけなかったというのが正直な感想だ。

また、そもそも三軒家が客を成約に持ち込む秘策が、全然説得力がなく、まったくもって秘策になっていないのはいただけないのだが、あくまで「ドラマ=娯楽」と割り切って、肩の力を抜いて視聴する分には十分に楽しめる作品には仕上がっているのかもしれない。その意味では、“可もなく不可もなく”といったところだろうか。

そんななかでも、敏腕不動産屋かと思いきや、「PUSH」と書かれたドアを何度も引こうとして更衣室に入れなかったり、バーで隣の席の客のワインを飲んでしまったりと、どこか“抜けた”留守堂のキャラや、その留守堂に恋心を抱き始める足立聡(千葉雄大)と留守堂のシュールなやりとりなど、ところどころに笑いのツボも散りばめられているのは面白い。

だが、どうしても引っかかってしまうのは、三軒家の営業トークだ。

たとえば、1組目の夫婦。三軒家は妻に対し、2人がまだ交際中に初めて行った水族館で口をポカンと開けてイルカのショーを見る妻の姿を見た夫が、穏やかな気分にしてくれる妻と一生一緒にいたいと心に誓ったというエピソードを夫から聞いたと話し、成約に持ち込む。しかしその直後、庭野と2人きりになった三軒家は、その話がすべて“つくり話”だと明かすのだが、商談において虚偽の話を使って契約に持ち込むというのは、不動産業界では許される行為なのだろうか。

また、にくまるの場合。「丸見えハウスのサンチー」の動画を収録中のボロ家に来たにくまるに対し、三軒家は次のように営業トークを展開し、成約に持ち込む。

「ユーチューバーとして日々、ネタに苦しみ、睡眠時間を削り、その上、たくさんの人にいたぶられ、批判されていなければ、あなたの命は息づかないのです。

なぜ、逃げるのですか? 命をかけて、ユーチューバーを続けてください。この“丸見えハウス”で身を晒しながら、あなたにしかできない動画を世に出し続けてください。あなたは世の中の関心を集め、批判を受け、炎上に痛み、命ギリギリ、ユーチューバーを生きるのです。命の瀬戸際で輝くのです! 炎上など、恐るるに足らず!

今からでも遅くはありませんよ。にくまるさま、この家、1億円でお買い上げいただけますか?」

たしかに、にくまるに対する熱いエールとも解釈できなくもないが、「たくさんの人にいたぶられなければ、あなたの命は息づかない」とか、「なぜ、逃げるのですか?」とか、「命ギリギリ、ユーチューバを生きるのです」「命の瀬戸際で」とか、「今からでも遅くはありませんよ」とか――。違法ではないとしても、客の「命」を使ってたたみかけ、いわゆる“圧迫商法”“脅迫商法”といわれても仕方ない気もするが……(そもそも、こんなボロ家を1億円で売るって、ボッタクリなんじゃないのかも気になるし)。

一見、豪腕営業ウーマンに見える三軒家が、実は単に倫理的に問題のある手法を使って家を売りまくっているのだとすれば、そもそも「三軒家=伝説の不動産屋」というこのドラマの前提がひっくり返ってしまう気もするのだが、どうなのだろうか。

あっ、でも、ドラマとしては、夜、お風呂上がりとかに気軽に楽しめる内容(=ここがとっても大切な点だけど)なので、あまり細かいことは気にせずに見てくださいね。
(文=米倉奈津子/ライター)

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ