ピアニスト・外山啓介とチェリスト・辻本玲インタビュー 競演するスペシャル・コンサートに向けての想いとは

SPICE

2019/1/9 18:25


2019年2月1日にサントリーホールで、“競演”する外山啓介と辻本玲。東京藝術大学の同級生であり、今やクラシック音楽界に欠かせない存在となった2人が同じステージに立つのは、2010年東京芸術劇場、2012年ザ・シンフォニーホール(大阪)公演以来となる。演奏するのはショパンのピアノ協奏曲第1番とエルガーのチェロ協奏曲。ともに屈指の人気を誇る不朽の協奏曲だ。公演が間近に迫った今、コンサートに向けての想いを2人に聞いた。
(左から)辻本玲、外山啓介
(左から)辻本玲、外山啓介

ーーお二人は大学の「同級生」だそうですね?

外山:そうなんです。プロとして同じ舞台、しかもサントリーホールで演奏をするなんて、学生時代には想像もしなかったよね、当たり前だけど。

辻本:僕は学生時代に外山君に共演を断られているんですよ! 室内楽をする時に外山君に声をかけたら、丁重に断られた(笑)。

外山:それにはちゃんと理由が! 4年生のピアノと室内楽は試験時期が重なるからダメってみんなに言われて、だからそういう決まりなのかと思ってしまい……。

辻本:結局その後、デュオも室内楽も共演はしていないんです。

外山:いつでもお願いできるという思いがあって、つい機会を逃してきたという感じですね。

ーーお互いの印象を聞かせてください。

外山:楽器も違うし、学生時代はあまり付き合いがなかったよね。共通の友達は多いけど。

辻本:実はあまり喋ったことはなかった。

外山:当時は寡黙なイメージがあったけど、後になって話をしてみたら全然そんなことなくて。いい人でした!
(左から)辻本玲、外山啓介
(左から)辻本玲、外山啓介

辻本:人見知りなんです(笑)。あんまり目も合わさないので、知らない人からは勘違いされがちで。2012年の大阪公演の時には、けっこうたくさん話をしたよね。外山君の印象は“ピアノのための人”という感じ。チェロを弾いているイメージはない(笑)。やっぱり見た目も関係あるような気がします。

外山:確かに、辻本君はチェリストっていう感じがするもんね。ヴァイオリンを構えてみたことはあるんだけど、僕は全然似合わなかった。

辻本:ヴァイオリンならまだしも、なんとなく低音のイメージがない。管楽器ならトランペットやってそう。まあ、とにかく本当にピアノがお似合いという感じです。

外山:それって褒めてるの……? とりあえず、ありがとうございます(笑)。

ーー2010年東京(10/17東京芸術劇場)と2012年大阪(2/4ザ・シンフォニーホール)で、今回のような形の“競演”はしていますよね?

辻本:外山君はその時にはすでに“スター”だったからね。オーケストラと一緒に弾くのも、もう堂々としたもので、すごいなあと。

外山:そんなことは全然なかったよ! でも同じ演奏会に出ていると、他の人の演奏ってなかなか聴けなくて。その時も聴けなかったけど、2011年のデビュー・リサイタルとかで辻本君の演奏を改めて聴いて、本当にうまいなあって思ってました。僕は辻本君のリサイタルはほぼ毎年聴きに行ってます!

ーー今回の演奏曲目について、まずはショパンのピアノ協奏曲第1番についてお聞かせください。

外山:この曲は、ショパンの若い時の作品ですが、技術的な部分や旋律の美しさなど、その後のショパンの作品の基となるものがすべて詰まっていると思います。でも、「エチュード作品10」はこの協奏曲を弾くための練習曲だった、という説もあるくらいで、表現するのは非常に難しい。気を引き締めてしっかり練習しなおしていないと怖い曲です。

辻本:僕はオーケストラの一員として演奏したことがあるけれど、ロマンティックな中に古典的なものも感じます。“刻み”もわりとシンプルなんだけど、難しい。ものすごくいい曲!

外山:もちろんロマン派の時代なので、例えば21連符や27連符とか出てきて、割り切れない部分が多くて合わせるのは難しいのだけれど、忘れてはいけないのは、ショパンは古典というものをとても強く意識している作曲家だということ。きらびやかなイメージだけで「自分で歌おう」とするのではなく、そこにある音を素直に表現しなさい、と教えられたことがあります。だから、生み出そうとするというより、「曲の中に入り込んでいく」という感覚を持って演奏したいと思っています。

辻本:美しくて聴きやすいけど演奏するのは非常に難しい曲なので、ピアニストが雰囲気や勢いだけで弾いてしまうとオーケストラは合わせられない。だから怖い部分もあるけれど、とても好きです。できればこの公演でオケに乗りたいくらい(笑)。
(左から)辻本玲、外山啓介
(左から)辻本玲、外山啓介

ーー続いて、エルガーのチェロ協奏曲についてですが。

辻本:中高生の頃によく弾いていたんです。大阪のジュニアオケや東京に初めて来たときに仲間と一緒に演奏していたので、とても懐かしい曲。でもプロのオーケストラと演奏するのは初めてです。この曲はジャクリーヌ・デュ・プレの名演があまりにも有名なので、なんとなく女性が演奏するイメージが強いのですが……。

外山:ああ、確かにそうだね。

辻本:第3楽章などはとても男性的だと思います。エルガーは非常に愛妻家で、この曲を作ってから間もなく奥さんが亡くなってしまうのですが、すでにそれを予期していたかのような、過去と未来を見つめながら人生を辿っているようなイメージがある楽章です。それと、第2楽章は特にですが繊細な部分もあり、室内楽的・小品的な要素もあって、そこが難しいところだったりする。オケの規模はそれほど大きくはないけれど、これも合わせるのは結構大変です。昔、ヨーヨー・マが日本で弾いた有名な映像が残っていて、とても楽しそうに弾いているのですが、子供の頃の僕はその演奏で育ったみたいなところがあります。

外山:僕は、この曲はとても端正なイメージがある。きちんとしているというか。それはショパンにも通じるところがあるかもしれないですね。

ーー全体のプログラムについてはどうでしょう? 曲の並びや出番順は気になるものですか??

外山:自分で聴きに行くときは、序曲~コンチェルト~シンフォニーの構成は重要視します。今回のプログラムも、コンチェルトはどちらもホ短調で調性も並んでいるし、聴くにはとてもきれいな並びだと思う。

辻本:ただ、自分が演奏するにあたってはそこまでプログラムは気にしないです。曲順はお客さんが聴きやすくするために構成するものだと思う。出番順のことで言うと、序曲が始まるととにかく緊張します。自分の演奏へのカウントダウンが始まったというか……。コンチェルトから始まるコンサートは、自分主導な感じがして、気持ちが楽だったりする。

外山:僕は1曲目に序曲があったほうがいい。いきなりコンチェルトはちょっと……。以前、序曲なしで最初にラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を弾くコンサートがあって、その時はどうしていいかわからなかった(笑)。

辻本:あ、曲によるかもしれないな。今回のエルガーの場合はいきなり自分の音から始まるから、序曲があったほうがいいかも。ドヴォルザークのチェロ協奏曲みたいに長い前奏がある曲とは確かに違いますね。

外山:今回は1曲目に「グリーンスリーヴスによる幻想曲」があって、いい流れができると思う。あと、ピアノとチェロのコンチェルトを一晩で聴くというコンサートってあまりないから、お得ですよね! きっと良いコンサートになると思いますよ。
(左から)辻本玲、外山啓介
(左から)辻本玲、外山啓介

ーーでは最後にコンサートに向けてのメッセージを!

辻本:僕が弾くエルガーのチェロ協奏曲は、情熱的な部分と抒情的な部分を併せ持つ素晴らしい作品です。ぜひ皆さんに聴いていただきたいです!

外山:僕は久しぶりにショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏します。ショパンらしさが詰まっている作品なので、自分自身も演奏するのが楽しみです! そして、僕たちは大学の同級生でもあるので、同じステージに立つのは単純に嬉しいし、気合も入ります。こういう刺激は、キャリアを積んでいく中でとても重要だと思っています。

辻本:同感! じゃあ、せっかく二人でサントリーホールの舞台に立つんだから、コンサートの中でちょっと共演、とか?

外山:あ、いいね、ぜひやりたいね!いずれはデュオ・リサイタルもしていきたいと思うけど、その前に今回やってみようか! どんな曲がいいかな?

辻本:例えば○○○○とか××××とか…?
(左から)辻本玲、外山啓介
(左から)辻本玲、外山啓介

ーーなんと!もしかしたらお二人の初共演も見られるかもしれないですね! 大変楽しみです! 今日はありがとうございました。

当記事はSPICEの提供記事です。

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