ビヨンセのサイトを視覚障害者が提訴。“クレーマー”と言う日本人の無知コメントも

女子SPA!

2019/1/9 15:45



ビヨンセが所有するマネジメント会社が、公式サイトでの視覚障害者対応を怠ったということで、全盲のファン(米国在住)から訴えられたとニュースになりました。

報じたのは今年1月3日のThe Hollywood Reporter。原告がBeyonce.comにアクセスしたところ「介助なしではサービスやショップにたどりつけず、同サイトは障害者差別禁止法に抵触している」と主張しています。

障害者が使えないというだけで訴訟になるなんて大げさな、と思いますか?

このニュースが日本で報じられると、ネット上では「原告はクレーマーだ」「介助してくれる友達もいないのか」などのコメントが見られました。ですが、これらのコメントは無知と言うほかありません。

◆「誰もが使えるサイト」が先進国の常識に

「ビヨンセのサイトを見ましたが、確かに、画像ばかりでalt(※1)もなく、ひどいですね。ただメニューから入れば、必ずしもショップに行けないわけでもないので、訴訟対象かどうかは疑問も残ります」

そう語るのは、情報のユニバーサルデザインを研究・推進している関根千佳さんです。

※1)alt:画像の代替となるテキスト情報で、簡単に設定できる。音声読み上げブラウザを使えば、この代替テキストが読み上げられ、視覚障害者も画像の内容がわかる。

「先進諸国では、ユニバーサルデザイン(=どんな人でも利用できる)に対応していないサイトは、人権侵害として扱われます。多くの訴訟が起こされており、高額の罰金が科せられた事例がたくさんあるんです。障害者や高齢者がアクセスできないサイトは、いわば男性トイレのないオフィスのようなもので、特に公的機関では絶対に許されません。

近年、企業のサイトでも誰もが使えるデザインは良識として当然視されるようになりました。視覚障害以外にも、肢体不自由や聴覚障害の方が使えるかも対象になります。MITやハーバード大のサイトも配慮に欠けたため改善命令が出されました。2015年~2017年までの3年間にWEBアクセシビリティ(※2)で1133件以上もの訴訟が起こっています。この数年間で15倍以上に増えているのです」

※2)WEBアクセシビリティ:高齢者や障害者など年齢的・身体的条件に関わらず、ウェブで提供されている情報にアクセスし利用できること

◆実は日本でもJIS基準があるけれど…

それだけ訴訟が起きるのは、アメリカが訴訟大国だからでしょうか……?

「根拠のない訴訟ではありません。アメリカには1986年にリハビリテーション法508条が制定され、さらに1990年にはADA(障害を持つアメリカ人法)という差別禁止法が制定されました。これらが基準となり、WEBアクセシビリティは配慮ではなく『前提』となっています。

EUや韓国も近年、同様の制度を作りました。すべての人が等しく情報にアクセスでき、選択できる社会を作ることは、もはや世界の常識なのです。その点で日本は、意識も法律も30年ほど遅れていると言わざるを得ません。東京オリンピック・パラリンピックや大阪万博に向け、高齢者や外国人観光客がそれぞれ4000万人を超す時代です。

にもかかわらず日本は全く情報のユニバーサルデザインに対応できていないのです」

日本ではJIS X 8341-3:2016というWEBアクセシビリティ基準があり、A~AAAまでランクが定められています。このうちAAまでクリアしていればよいとされていて、市町村などのサイトではすでにこの規格に準拠したサイト制作が進められています。ところが民間のサイトにはほとんど実施されていません。

いちいち障害者に対応するサイトを構築することが手間だと思うでしょうか。しかし障害者自身が自分で解決できることが少ないと、彼らを補助するために結局より多くの手が必要になってしまうのです。

ビヨンセのサイトに対する訴訟は、先進国では「当然するべき配慮を欠いた結果」という認識なのです。日本でも、誰もが暮らしやすい配慮を行える社会を作るべく、意識を変えていく必要があると感じます。

【関根千佳さん】

同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャルイノベーションコース客員教授。株式会社ユーディット会長兼シニアフェロー。高齢化の進む日本で、誰もが使いやすいICTのユニバーサルデザインを推進している。著書多数

<取材・文/和久井香菜子>

【和久井香菜子】

ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「ブラインドライターズ」運営

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