ハイパー銭湯「BathHaus(バスハウス)」。仕事の後は風呂に浸かってビールをキュッ!

SUUMOジャーナル

2019/1/7 07:00

ハイパー銭湯「BathHaus(バスハウス)」。仕事の後は風呂に浸かってビールをキュッ!
銭湯にコワーキングスペースとバーを取り込んだのがハイパー銭湯「BathHaus(バスハウス)」。仕掛けたのは株式会社chill & workの代表としてさまざまなプロジェクトを手がけている榊原綾香さん(29歳)だ。

小田急線の代々木八幡駅から歩いて10分弱。一見するとビルの1階にあるカフェのようなたたずまいだが、こここそが「BathHaus」だ。
仕事をしに来る人と地元民とのおもしろい交流を生み出したい
もともとは日本茶販売店の自社ビル。地下にコワーキングスペース、1階に銭湯とバーがある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
もともとは日本茶販売店の自社ビル。地下にコワーキングスペース、1階に銭湯とバーがある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

せっかくなので、自慢のクラフトビールをいただきながら話を伺うことにした。
タップ(ビールサーバーの注ぎ口)を背に語り始める榊原さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
タップ(ビールサーバーの注ぎ口)を背に語り始める榊原さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

彼女は神戸大学を卒業後、GREEに入社し、ソーシャルゲームの開発に携わる。その後、何度かの転職を経て2017年に独立した。

「日常のなかで気軽に立ち寄れるような、仕事もできるしくつろぐこともできる理想の空間があるといいなと、かねてより考えていました。銭湯とクラフトビールバーというオープンなコミュニティを併設したコワーキングスペースなら、働きに来る人と地元民のおもしろい交流が生まれるのではないかと思いまして」(榊原さん、以下同)
内装イメージは1920年から40年ぐらいの海沿いのリゾート地
男湯と女湯は1週間ごとに入れ替わる。もうひとつはタイル張りのお風呂(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
男湯と女湯は1週間ごとに入れ替わる。もうひとつはタイル張りのお風呂(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

ここで、気になっていたことを聞いた。「BathHaus」って20世紀初頭にドイツで創設された造形学校の「バウハウス」に掛けていますか?

「あ、そのとおりです。名付けは少し意識しました。バウハウスが目指していた、機能的ながら人間味のあるデザインの道具や家具などが元々好きであったことと、1920~40年代のどこか懐かしい雰囲気を目指すことで居心地のいい空間をつくりたかったこともあり、『BathHaus』という名前にしました。だから、ハウスはドイツ語の『Haus』にしています」

内装は1920~40年代のリゾートをベースに、レトロになりすぎないよう現代らしさも加えて仕上げた。
(写真提供/榊原さん)
(写真提供/榊原さん)
戸棚は近所のビンテージ家具を売っている店で、レトロな野球盤はのみの市で購入した(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
戸棚は近所のビンテージ家具を売っている店で、レトロな野球盤はのみの市で購入した(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「私はビンテージの家具も好きで、当時のつくり手が使いやすさとデザインにこだわったことが感じられる物と出合い、それをまた受け継いで使えるということにうれしさを感じるんです。言葉にできないかわいさや使い勝手のよさに惹かれます」
榊原さんの自宅リビングも好きなイメージ、好きなもので統一されている(写真提供/榊原さん)
榊原さんの自宅リビングも好きなイメージ、好きなもので統一されている(写真提供/榊原さん)
クラフトビール店とコラボして開発した「HINOKI BITTER」

クラフトビールに話を戻す。
5種類のクラフトビールは自身の舌で味を確認したのちに、東京、奈良、京都の醸造所から取り寄せている(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
5種類のクラフトビールは自身の舌で味を確認したのちに、東京、奈良、京都の醸造所から取り寄せている(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

勧められるまま、「HINOKI BITTER」のハーフ(700円)を注文。
2017年、高円寺にオープンした人気のクラフトビール店、「アンドビール」とコラボして開発したもの(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
2017年、高円寺にオープンした人気のクラフトビール店、「アンドビール」とコラボして開発したもの(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「カンナで削ったヒノキのチップを、ビールを煮沸する工程で一緒に煮出しています。使用するヒノキの量や煮沸時間などの掛け合わせで、風味を調整しているんですよ」

おお、最後にふわっとヒノキの香りが立ち上がってくる。これは、日を改めてほかのビールも飲まないと……。
気分転換でふらっと訪れた八幡湯がすごくよかった

さて、コトの経緯の続きだ。榊原さんが生まれ育ったのは大阪のベッドタウン、堺市。近所にいわゆる“街の銭湯”はなく、数カ月に一度ぐらいのペースで父親に連れられて国道沿いのスーパー銭湯に行く程度だった。

「神戸に住んでいたときは大学の近くに銭湯が2、3軒あって、そこで初めて銭湯を体験したんです。とはいえ、六甲山に登ったり、スポーツしたりした後に立ち寄るぐらいで日常には入り込んでいませんでした」

上京してから、街のあちこちに銭湯がある環境に驚く。東京で初めて行った銭湯は新卒で入社した会社の近く、黒湯で有名な麻布十番の「竹の湯」だ。

「頻繁に行くようになったのは2017年から。独立したタイミングで代々木公園エリアに引越したんですが、基本的に毎日家で一人で仕事をして、たまに打ち合わせのために外に出るという生活。気分転換に近所の『八幡湯』を訪れてみると、想像以上に気持ちを切り替えることができて驚きました」

のんびりとお湯に浸かって体はすっきりし、さまざまな人としゃべることで気分もほぐれた。地元の八幡湯は今でも一番好きな銭湯だという。
銭湯は江戸時代から庶民や下級武士たちの社交場

そんな榊原さんが今回のプロジェクトを始めるきっかけの一つとなったのは海外での体験だった。大学1年生のときに行ったニューヨークでは、現地の人に洋服を「それ、いいね。どこで買ったの?」と褒められた。日常生活で通りすがりの人に何かを褒められるという経験が初めてだったため、前向きでオープンなカルチャーに衝撃を受けながらも、とても心地よく感じたという。
物件の受け渡し時はスケルトン状態だった(写真提供/榊原さん)
物件の受け渡し時はスケルトン状態だった(写真提供/榊原さん)

「留学や就職を経て、しばらくして銭湯に通うようになり、銭湯でのコミュニケーションに海外で感じた心地よさに近いものがある気がしたんです。ジェットバスに浸かっているおばちゃんに『私、ジェットバス嫌いなのよ』と謎の告白をされたりと、気の抜けた感じがすごく楽(笑)。社会に出てから、満員電車に疲弊したり、固定された働き方に疲れている人が多いことに疑問を持ち続けていたのですが、銭湯のような寛容さが現代人の暮らしに広がればマイペースに気持ちよく日々を過ごせる人が増えるのではないか?と思ったんです」
12月2日に行われたプレオープンパーティーは多くの人々でにぎわった(写真提供/榊原さん)
12月2日に行われたプレオープンパーティーは多くの人々でにぎわった(写真提供/榊原さん)

確かに、SNSなどが発達した昨今は人付き合いも均質化してゆく。銭湯のような雑多な人たちが集まって何でもない会話を交わせる場所は貴重かもしれない。そもそも、銭湯は江戸時代から庶民や下級武士たちの社交場。時には落語会なども行われた。

そんな文化は現在にも受け継がれている。高円寺の「小杉湯」は2017年に隣接する空きアパートにさまざまなクリエイターが入居する「銭湯ぐらし」という試みを実施した。また、上野の「日の出湯」は今年10月、銭湯と音楽が融合するイベント「ダンス風呂屋」を開催している。
融資とクラウドファンディングで資金調達

「やる」と決めてからは一気にギアが上がり、金融機関からの融資を取り付けるとともにクラウドファンディングで資金を募り、初期費用を見事に調達。榊原さんの思いに共感した協力者やクリエイターも続々と集まってきた。

バーと銭湯は誰でも入れるエリアだが、地下のコワーキングスペースはメンバー(有料会員)のみ。全40席でWi-Fi完備。複合プリンター、冷蔵庫も自由に使える。
コワーキングスペースの利用時間は9時~23時(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
コワーキングスペースの利用時間は9時~23時(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

月額の利用料金はできるだけ安く抑えた。フリーデスクは5万円、週末のみ利用する場合は2万円、1日利用は3500円などを用意している。
モダンな内装デザインと懐かしいケロリンがマッチ

そして、いよいよ銭湯エリアをご紹介しよう。一般向けには、銭湯 700円(レンタルタオル別途200円)を用意しており、コワーキングスペースの利用者には月額9800円でパスポートならぬ「バスポート」を発行し、入り放題となる。
2018年12月9日にオープン。プレオープンは足湯のみで営業していた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
2018年12月9日にオープン。プレオープンは足湯のみで営業していた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

モダンな内装デザインと懐かしいケロリンが妙にマッチするから不思議だ。
のれんのイラストはもともと面識のあった白根ゆたんぽさんにお願いした(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
のれんのイラストはもともと面識のあった白根ゆたんぽさんにお願いした(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
泉州タオルの老舗「ふくろやタオル」のフェイスタオルと、「チル&ワーク」という刺繍入りのスウェットは購入も可(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
泉州タオルの老舗「ふくろやタオル」のフェイスタオルと、「チル&ワーク」という刺繍入りのスウェットは購入も可(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
バースペースで販売するコーラ(500円)は有機栽培の砂糖でつくられたオーガニックドリンク(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
バースペースで販売するコーラ(500円)は有機栽培の砂糖でつくられたオーガニックドリンク(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

ドリンクやフードは自分がいいと思ったものを出したいという。家具、タオル、スウェットもつくり手の思いが見えるものを厳選した。
仕事して、ひとっ風呂浴び、ビールを引っ掛けてから帰宅

そんな彼女にとって銭湯は多種多様な価値観に触れられる場所、心からくつろげる場所の一つである。

「独立して会社名をどうしようか考えているときに浮かんだのが『チル&ワーク』という単語。一生懸命集中した後は銭湯でのんびりくつろぐ。仕事場と銭湯が併設していれば、普段は面倒が理由で湯船に浸かることができない人でも気軽に安らげるのではないかと思います」
来年1月以降には、こんな光景が日常的に繰り広げられるはずだ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
来年1月以降には、こんな光景が日常的に繰り広げられるはずだ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

コワーキングスペースでは「チル」と「ワーク」のタイミングを自分で設定できる。利用者がマイペースに過ごせる場所という意味では銭湯と同じだ。階段を上がれば銭湯。「仕事して、ひとっ風呂浴び、ビールを引っ掛けてから帰宅」という一連の流れが習慣化すれば、さぞやぐっすりと眠れることだろう。

榊原さんの思いが詰まったハイパー銭湯「BathHaus」。バウハウス創設から100年後の日本で、個々が新しいスタイルを“造形”する場が誕生した。
●店舗情報
「BathHaus」
東京都渋谷区西原1-50-8 1F • B1F
>HP

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