『いだてん』が好発進!! 権力者のためではない、「平和の祭典」としてのオリンピックを描いた

wezzy

2019/1/8 00:05


 1月6日からNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』がスタートした。今回の大河では、日本人が初めて夏期オリンピックに参加した1912年ストックホルム大会から1964年の東京オリンピックまでの半世紀を描く。

宮藤官九郎が脚本を担当する『いだてん~東京オリムピック噺~』は、近現代史を描く大河としては1986年の『いのち』以来となる異色の作品として注目を浴びていたが、果たしてどんな初回に仕上がっていたのか。

第1回「夜明け前」は、ストックホルム大会前と東京オリンピック開催前を行ったり来たりして主要な登場人物をひとしきり紹介しつつ(初回の平均視聴率はビデオリサーチ調べで15.5%と好調だったが、時系列が複雑なこの構成には批判的な意見も出ていたようだ)、メインのストーリーでは、アジア初のIOC委員である「柔道の父」「日本の体育の父」の嘉納治五郎(役所広司)が、どのような経緯でオリンピック参加を決意したのかが描かれた。
『いだてん~東京オリムピック噺~』に込められた「平和」への思い
 その過程では、実在したスポーツ社交団体・天狗倶楽部の三島弥彦(生田斗真)、吉岡信敬(満島真之介)といった面々が上半身裸になって瓶ビールを一気飲みしたうえ、「われらはスポーツを愛し、スポーツに愛され、ただ純粋にスポーツを楽しむために活動する元気の権化、T・N・G! 天狗倶楽部!」といったサンシャイン池崎風の口上を披露するなど、いかにも宮藤官九郎脚本らしい小ネタも盛り込まれていた。

そうしたコメディ演出が炸裂する一方、『いだてん~東京オリムピック噺~』初回では、これから1年間オリンピックに関する物語を展開するにあたって、宮藤官九郎が「オリンピック」というものをどのように捉えているかが真摯に語られた回でもあった。

日本がオリンピックに参加することになったのは、近代オリンピック創始者であるクーベルタン男爵による「オリンピックを欧米の白人だけのお祭りから世界規模の平和の祭典にしたい」という発想がきっかけだった。これにより、日露戦争での勝利などからアジアのなかで存在感を示し始めていた日本に声がかかったのだ。

そこで、駐日フランス大使のジェラールは嘉納治五郎と面会し、オリンピック参加のための日本国内での調整を依頼するのだが、そこでジェラールが強調した言葉は「平和」である。

「オリンピック」というイベントを説明する際、ジェラールは嘉納治五郎に対して「“La Paix”の祭典」という言葉を使う。ドラマでは「“La Paix”の祭典」「paix=平和」という字幕がつき、「平和」という言葉が強調されていた。

「“La Paix”の祭典」というオリンピックの意義は、嘉納治五郎を強く動かす。しかし、文部省をはじめとした周囲の反応は芳しいものではなかった。銀行家の三島弥太郎邸にて開かれたパーティー会場で大隈重信(平泉成)と世間話するシーンでは、元気に遊ぶ子どもたちの姿を見ながら嘉納治五郎が<実にもったいない。子どもたちの弾けるような笑顔は、本来、平和のためにあるはずなのに>と愚痴る場面も描かれていた。

オリンピック参加に好意的でないのは、体育を専門とする先生たちも同様だった。海外留学でスウェーデン体操を学んだ永井道明(杉本哲太)や日本体育会会長の加納久宣(辻萬長)は、欧米人に比べて体格の劣る日本人では勝つ見込みがないとしてオリンピック参加にまったく応じようとしないが、ここで嘉納治五郎が激高しながら語る言葉は『いだてん~東京オリムピック噺~』のテーマと言えるのかもしれない。

<参加することに意義があるんだ。国を背負ってだの、負けたら切腹だの、違うんだよ。平和のための真剣勝負。相手を憎むんではなくて、認めたうえで勝とうとする。相互理解だよ。それがオリンピックの精神であり、日本の武道の精神だ。それがわからんとは、君たちはまったくもってスポーツマンじゃないな>
今後の『いだてん~東京オリムピック噺~』で描かれる戦争の暗い影
 歴史を追ってみていけば、『いだてん~東京オリムピック噺~』のハイライトのひとつに、1940年のオリンピックにまつわる話が出てくるのは間違いない。

日本がオリンピック招致に成功したのは1964年大会が初めてではない。1940年大会でも招致に成功していたのだが、その大会は、中国をはじめとした近隣諸国への日本の対応に海外から反発の声が起きていたうえ、日中戦争に予算を投じなくてはいけなくなったことなどが重なって返上せざるを得なかった。

この1940年大会を描くにあたり、宮藤官九郎はどのような物語を紡ぐのだろうか。
宮藤官九郎からの2020年東京オリンピックへのメッセージ
 『いだてん~東京オリムピック噺~』初回で強く描かれた「オリンピックは平和の祭典」という思いは、2020年東京オリンピックに対するメッセージでもあるのだろう。

当初の予算が大幅に膨れ上がったり、「共謀罪」成立のための口実として使われるなど、2020年の東京オリンピックに対しては批判の声が多くある。

そういった声の上がる根本の原因は、政治家たちが「スポーツを通じて国際平和を築き上げる」というオリンピズムの根本原則を完全に忘れ去っているからだ。

オリンピックは、金儲けのための祭典ではないし、権力者が歴史に名声を刻むために行われる祭典でもない。平和のための祭典だ。

『いだてん~東京オリムピック噺~』第1回は、2020年東京オリンピック開催をめぐり絶えず議論が噴出する現在の日本に、「オリンピックとはなんのために開かれる大会なのか」という、大事な前提を思い出させる回であった。

(倉野尾 実)

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