東京メトロ「声の人」森谷真弓 メディアに出なかったワケと「吹っ切れたきっかけ」とは

しらべぇ

2019/1/7 07:30




フリーアナウンサーの森谷真弓(もりやまゆみ)さん。…と名前だけ聞いても知っている人は少ないかもしれない。営団地下鉄から「東京メトロ」に変わった2004年から現在まで車内アナウンス(日本語担当)を務めている「メトロの声の人」なのだ。

これがきっかけで、その他の鉄道も数多く担当している。

「東京メトロ 全線/ゆりかもめ/横浜市営地下鉄(ブルーライン)/仙台市地下鉄 全線(東西線・南北線)/埼玉高速鉄道/京成鉄道(スカイライナー)/北総鉄道/四国旅客鉄道」

通勤通学で無意識に毎日聞いている人、旅行で乗車した路線で…と一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。

これまでメディアへの露出を控えていた森谷さん。2016年にある番組への出演をきっかけにメディアや人前に出ることへの考え方が一変したとか。なにが彼女を変えたのだろうか。

しらべぇ取材班は、「東京メトロ」アナウンス当初の話から、今後の活動、展望について話を聞いた。

■「東京メトロ」アナウンス、15年目




東京メトロ設立の2004年よりアナウンスを担当し、今年で15年目を迎える。

当初は、「およそ5000名の応募の中から選ばれた、アナウンス学院の学生」としか公表されていなかったが…そもそも、「メトロの声の人」になるまでのいきさつは、どのようなものだったのだろう。15年前を振り返ってもらった。

森谷:応募当時は、ラジオの専門学校に通う学生でした。学校に求人がきていたようで、先生の指示でクラスの生徒全員が応募しました。

デモテープを送ってからしばらくしても連絡がなかったので、「ダメだったんだな」と忘れかけている時…応募してから半年後くらいに面接の連絡がありました。

面接の合否も、面接を受けてから半年後くらい。学校の卒業間際に「決まりました」って連絡がきまして。それから収録するまでも結構な時間があったので「本当に私なのか?」って不安になっていましたね。そして収録するときには、学校は卒業していました(笑)。

■収録は、怒涛の一週間


およそ一年間の不安な時間を経て、ようやくアナウンスの収録がはじまったというが、朝から夜までスタジオに缶詰め状態で怒涛の一週間を過ごしたようだ。

森谷:学校を卒業したばかりなので、大きな仕事ははじめてだし、ブースの向こう側には「東京メトロ」の方たちがに並んでいるし(笑)。

イントネーションも「絶対、これは使わないでしょ!」っていうものも含めて、原稿が広辞苑みたいな分厚さで、戸惑いながらものすごい量のパターンを録りました。

緊急停止の時や災害時のお知らせ、乗車している方は聞くことがないと思いますが、車庫に入ってからの点検作業のアナウンスの「次は〇〇ランプを点検します」というのも録るんです。収録の一週間は過呼吸になっちゃうほど大変で、ほとんど記憶にないくらい(笑)。

■有楽町線に聞きに行って「反省」




大量の原稿を読み上げることだけではなく、声の出し方や話し方に指示がなかったことも、大変だったことのひとつだという。「本人に任せる」というのは信頼されているということであり、自分らしくできるようにも感じるが、森谷さん自身は不安を感じていたそうだ。

森谷:収録では「もっとこうして」「こういう声の出し方で」と、細かい指示があると思っていましたし、指示してくださったほうがやりやすい部分もあるんです。

でも、何も言われなかったので「これで大丈夫? いいの?」って不安はありました。「乗車している人が心地よく乗ってもらえるように」という一心で自分が感じたイメージで収録していました。ただ、実際に車内アナウンスが始まるまで緊張していましたね。

最初に収録したのは東西線でしたが、完成して自分で聞きに行ったのは、自宅の最寄り駅だった有楽町線でしたけど…「もっとこうしなきゃ」とか、もう反省ばかりでした。

■鉄道・路線によって「声が違う」


しかし、アナウンスが流れはじめた当初から、森谷さんの声に「癒される」「かわいくて落ち着いた声」などの反響が寄せられ、ネット上では「声の主は誰だ」と話題になった。また、鉄道会社、路線別で声を録音し、動画サイトでアップするほどのファンもいるようだ。

声の変化に敏感なファンの中には、「この線は明るい声」「この時は落ち着いたトーン」などの分析をする人まで。この「声の違い」は人間味を感じる部分でもあるが、じつは路線によって変えているという。

森谷:アナウンスを聞いて「話しかけられているみたいで、頑張ろうっていう気持ちになります」という言葉を頂いたときはすごく嬉しかったです。路線によって違う声の変化に気付いてくださる方は「すごいなぁ~」と感心します。

声の出し方や雰囲気に正解があるものではないですし「統一したほうがいいのかな」との気持ちもありつつ、街の雰囲気や、自分が感じた駅や沿線のイメージを大切に、アナウンスするようにしています。

たとえば、私にとって「ゆりかもめ」は「綺麗で洗練された、みんなが遊びに行く場所」というイメージ。「みなさま、どうぞ楽しんで行ってらっしゃいませ!」っていう雰囲気を出したいと思って収録しました。

「東京メトロ」では2008年に開業された、副都心線も「スタイリッシュな雰囲気」を心がけて収録しました。

■2016年のメディア出演で「吹っ切れた」




2016年に放送されたバラエティ番組『ニッポン行きたい人応援団』(テレビ東京)。番組では、全179駅を暗記するほどの「東京メトロ」大好きな青年、ラースローくん(22歳)を紹介。ハンガリー在住の彼が「東京メトロ」ファンになった理由こそが、森谷さんだった。

動画を通して聴いた車内アナウンスに「美しい」とハマったという。そんなラースローくんを日本に招待し、東京メトロで各駅を旅し、大ファンである森谷さんと対面を果たした。

森谷さんは番組への出演したことが、自身について、仕事について考え方が変わる大きなきっかけになったそうだ。

森谷:局のスタッフの方から、「ハンガリーの子が、日本語の勉強をしたきっかけが、車内アナウンスなんです。是非会ってもらえませんか?」って連絡がきたんです。

今まで、電話インタビューやラジオ出演は経験がありましたが、テレビ出演はお断りしていたんです。「皆さんの前に出ても、何も与えられないし」「声を聴いて、いいって思ってくれてる人を幻滅させるようなことはしたくない」って、不安な部分はあったのかもしれません。

でも海外の人が、音だけを聞いて「好き」って言ってくれるなんて本当に嬉しかった。ラースローくんだったから出演を決めました。自分が出演することで喜んでくれる人がいたり、興味を持って声をかけてくださる方がいたり…。

「出ることで喜んでくれる人がいるんだ」と思ったら、今までの不安が吹っ切れたんです。私が伝えられること、与えられることがあるなら…って考えるようになりました。

■CM、アプリ、朗読「新しい境地!」


番組出演をしたことで、今まで挑戦したことのなかった仕事のオファーなども増えたそうだ。森谷さんの目覚ましアラームのアプリが登場したり、朗読会に参加したりと、仕事の幅が広がり新たな扉が開けたという。

森谷:ありがたいことに、番組の出演がきっかけでCMのナレーションが決まりました。そして目覚まし機能の「電車アナウンス目覚ましアラーム&タイマー」というアプリでは、車内アナウンス風のナレーションにも挑戦しました。

あと、CMナレーションの時にお世話になった方が、朗読会を主催している方だったことから、朗読会に呼んでくださって。皆さんの前で朗読するというはじめての経験だったんですが、聞いている人の表情や雰囲気を体感できるのは、ブースの中で収録をしているときには味わえないものなので。

「新しい境地だ!」ってすごく楽しかったんです。今後も朗読や絵本の読み聞かせなど挑戦したいと思っています。

■ブライダルMCもはじめた中で妊娠発覚




私生活では、2009年に結婚。2018年に第1子を出産した森谷さん。結婚式の司会「ブライダルMC」としても活動を広げようと思った矢先に、妊娠が発覚したとか。新たな仕事の経験や出産を経た森谷さんに、今後の展望を聞いた。

森谷:これも番組出演がきっかけですが、ある時SNSに日比谷線で運転手をしている男性から「結婚するので、司会やっていただけませんか?」って連絡をくださったんです。

これまでブライダルMCは、友人の結婚式では何度か経験したことはありましたが、SNSから依頼がきたことは初めてでしたし恐縮でしたが、一度、吹っ切れているので(笑)、「新たなこともやってみよう!」って。

その後、同じようにSNSを通じて2組から依頼がきましてブライダルMCをやらせていただきました。

1組目を終えて、こうやって人が喜んでくれる「ブライダルMC」もやっていこう! と思っていた矢先に妊娠が発覚したんですが(笑)。

2組目の方は妊娠中、3組目の方は出産後、ですね。引き受ける度に、2人の人生の節目に関われることが、とてもありがたくてやりがいを感じているので今後も続けていきたいですね。

子供が生まれたことや4月に保育園に入園(予定)で、自分がやりたいこと、働きかたなど、色々と変化していくと思います。でも、すべてタイミングだし、すべてがターニングポイントだなと思うので、流れに逆らわず進んでいきたいと思っています。

ここ2年ほど、公私ともに変化が多かったと語る森谷さん。今後も鉄道のみならず、様々な場所で「癒しボイス」が聞けることを楽しみにしたい。最後に…しらべぇ読者のためだけに、車内アナウンス風メッセージを頂戴した。癒されたいときに聴いてほしい。
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(文/しらべぇ編集部・長谷川 瞳

当記事はしらべぇの提供記事です。

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