【アレサ・フランクリン】アメリカに「リスペクト」されたその魅力

UtaTen

2019/1/6 17:01

そんな彼女の魅力をよく伝える一曲が「リスペクト」(1967年)だ。

この曲はビルボードR&Bチャート及び総合チャートで一位を記録し、アレサに最初の成功をもたらした。

「リスペクト」は、同時代の人気黒人男性シンガー、オーティス・レディングの同名曲がオリジナルである。

オリジナル「リスペクト」は、オーティスらしい人情味溢れる男性目線で歌われたが、それを巧みに女性目線に翻案したのがアレサヴァージョンであった。

その改変によって、オーティスヴァージョンつまり男性側の意見に対する、女性側からの反対答弁のようになっているのがアレサヴァージョンの面白い点だ。

両ヴァージョンの同部分を比較してみてみよう。

Aretha Franklin「Respect」







これをアレサはこう改変した。





「自分に見えないところなら悪さしたっていい」という男性側の言い分(この”優しさ”がオーティスの魅力であるかも知れないが)は、見方次第では女性を信用していないともいえる。

だからアレサはそんな考えに至る思考を批判し、そこに足りない敬意を要求するのである。

わずかな改変で、その立場なりの思いを鮮明に逆転させた手法は見事という他ない。

その上アレサの責め立てるような圧巻の歌唱が、曲のイメージを女性側からの断固たる抗議へと変貌させている。

背景にあったのは黒人女性の社会的地位



この曲がヒットした60年代後半当時、アレサのような「黒人かつ女性」という立場はアメリカにおいて相当に弱いものであった。

黒人差別はまだまだ是正されず、一方で女性は男性に従うものという固定概念も根強く残っていた。

黒人公民権運動やウーマンリブ運動が当時隆盛を極めたのも、そんな時代の反動であった。

アレサ・フランクリンの「リスペクト」は、そうした反動を象徴するかのような、強い黒人女性像を思わせる。

アレサ自身の転機にもなった楽曲



そんな時代の歩みと同調するかのように、「リスペクト」発表までのアレサは不遇の時を過ごしていた。

彼女はデビュー以来、持ち味であるゴスペルフィーリングを十分に発揮できないでいた。

さらには、マネジャーでもあった夫にひどい虐待を受けていたことが知られている。

そんな彼女のブレイクスルーである「リスペクト」は、黒人女性として体験した差別と偏見、そして封じられてきたゴスペルフィーリングを爆発的に開放させたものであった。

アレサはそこで時代の要請という好機を逃すことなく、象徴的なキャラクターを見事に演じ上げたのだった。

そして”〈少しの敬意〉を持てば好転するのよ”というメッセージは、その真に迫る表現によって、シリアスな時代に明るく響いたのである。

そのキャラクターのインパクトを映像化したのが、のちの映画『ブルースブラザーズ』(1980年)だ。

歌ったのは「シンク」だったが、アレサ自身が演じる肝っ玉母さんはほとんどこの「リスペクト」の主人公そのもの。

ちなみにその続編『ブルースブラザーズ2000』でアレサは同じ役柄で「リスペクト」を歌っている。

アメリカ国民からのリスペクトの対象に



さて、アレサ版「リスペクト」は中盤辺りから、メロディ、歌詞、構成に至るまでいよいよオリジナルから逸脱していく。

最後まで聴けば、完全にアレサオリジナルの楽曲という認識に変わるはずだ。

特にインパクト抜群のフレーズ〈R‐E‐S‐P‐E‐C‐T , find out what it means to me〉を含む終盤の盛り上がりは、アレサの比類なきゴスペルフィーリングを発揮した最高のクライマックスとして再構成されている。

ここではオーティスが好んで用いたフレーズ〈sock it to me〉をあえてコーラスに歌わせて、それをアレサの歌唱が飲み込む形になっているのが面白い。

「リスペクト」で示したアレサの偉大なオリジナリティは、その後も生涯のパフォーマンスを通じてアメリカ国民からの”リスペクト”を集め続けた。

ホット100には77曲を送り込み、グラミー賞は20回受賞、さらには2005年には大統領自由勲章をもらっている。

TEXT:quenjiro

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