「アルファードのほうがよっぽどクラウンらしさを感じる」クラウン好きによる新型クラウン評

日刊SPA!

2019/1/6 15:52



腕時計投資家の斉藤由貴生です。私は腕時計とクルマが好きなのですが、どちらも買った値段より高く売るか、購入額に近い額で売却することを心がけています。そういう消費スタイルを貫いた結果、これまでに中古のロールスロイスを始め、数十台クルマを乗り継いできました。

高級レストランに行く機会が増えると舌が肥えてくるのと同じように、様々なクルマを所有すると、良いクルマの傾向がわかってきます。

では私はどんなクルマが良いと思ったのかというと、意外にも一般的な「クルマ好き」からはそれほど評価の高くない、クラウンというクルマが素晴らしいということに気づいたのです。

さて、クラウンといえば、最近新型が登場しましたが、その新型はいったいどのようなクルマとなっているのでしょうか? その評価をするためには、これまでに販売された素晴らしいクラウンと比べてみるのがわかりやすいといえます。

ということで今回は、クラウン好き&旧型オーナーの目線で、新型クラウンをこれまでの主なクラウンと比較してみました。

比較対象は、以下の3台です。

●エントリーNo.1 8代目クラウン(13系)

8代目クラウンは、これまで最も売れたクラウン。そして、「クラウンといえばこれ!」というほどクラウンらしさが強い印象です。

●エントリーNo.2 11代目クラウン(17系)

11代目クラウンは、「ロイヤル」「アスリート」という2部構成となった初の世代。アスリートシリーズの初代では、それまで無縁だったスポーツ要素を積極的に取り入れました(※「アスリート」は1グレードとして7代目、8代目にも存在)。

●エントリーNo.3 13代目クラウン(18系)

ゼロクラウンとしても有名なこのクラウン。「いつかはクラウン」という7代目の有名なキャッチコピーを「このクルマがスタートとなる」と書き換えたのは、宣伝文句だけでなくクルマ本体を見てもわかります。この世代が、クラウンシリーズのモダンとクラシカルの分かれ目だといえるでしょう。

◆新型からクラウンらしさは感じられたか?

8代目クラウンを“クラウンらしさ100”だとすると、新型はらしさが10もないかもしれません。「クラウンらしくない」と言われたゼロクラウンですら、こうして4台を見比べてみると、「まだクラウンだったのか」と思うほど、新型にはクラウンの面影がありません。

新型は王冠エンブレムが目立つため、かろうじて新しいクラウンだと認識できますが、要素としてはまったくクラウンらしさがないといえます。

◆走りの質感を比べてみると……

このクラウンらしくないという点は、走りでも強く感じることができます。「クラウンの走り」といわれると、あまり良い印象がないため、ここはクラウンらしくなくて逆に良いかもしれません。

新型は、かつて走りが評価されたゼロクラウンよりも、さらに走りが良くなったと感じました。例えば、安心して曲がれるカーブの速度域は、ざっと時速10kmほど伸びていると感じます。

プロドライバーによる筑波サーキットのラップタイムでは、ゼロクラウン(3リッター)で1分11秒台ですが、13代目クラウンの3.5アスリートは1分10秒を叩き出しています。

ゼロクラウン以降のクラウンは、かなり良い走りをするため、いくら「ニュルで鍛え上げた」と言われても体感できるほど良くするのは困難だと思いました。しかし、それがかなり良くなっているので驚きました。

また、シートもとても良く、ドライビングポジションを神経質に調整しなくとも快適に運転できました。新型以外の3台は、やや寝そべった姿勢がベストとなるようなのですが、良いポジションを見つけるまでには時間を要します。

◆乗り心地はクラウンだったか?

ニュルで鍛え上げたというのは、良い乗り心地にもつながってくる部分だともいえます。クラウンといえば、乗り心地を重視した一方、走りは犠牲にしてきた歴史がありますが、走りを重視したゼロクラウンは、乗り心地が悪くなったといわれます。

ゼロクラウンの乗り心地の悪さは、運転しているとそれほど気にならないのですが、助手席や後席だと強く感じます。路面状況が良いと氷の上を滑るようなのに、少しでも段があるとゴツンという衝撃を受けるのです。

しかし、新型では運転していても、助手席に乗っていても、そういったゴツンという感じは受けず快適な乗り心地が実現されています。ですから、新型は走りと乗り心地の良さ、どちらも実現しているのです。

◆クラウンらしい高級感は感じられる?

このように、質の良い走りと、良い乗り心地を実現しているクラウンですが、新型は高級感では歴代クラウンに劣ります。これまで、トヨタの内装は「わからないようにコストダウンするのがうまい」とも揶揄されましたが、新型クラウンはコストダウンをはっきりと感じます。

もっともクラウンの内装は、先代(14代目)からコストダウンが目立ったため、これは新型だけのマイナスポイントではありません。

例えば、歴代クラウンとドアパネルを比べるとコストダウンされたのがとってもよくわかり、ヴィッツなど大衆車クラスと同様の硬いプラスティックが目立ちます。11代目やゼロクラウンでは、物入れが可動式だったのが、新型では一体形成の硬いプラスティックに。また、Bピラーの下部分も同様で、11代目などより質感が劣ります。

ゼロクラウンでも硬いプラスティックを用いた箇所はありましたが、本革風のシボが施されていました。硬いプラスティックでも、そういった形状だったならば、高級車らしい高級感が演出されたのではないでしょうか。

また、コストダウンされたのは内装以外にも見られます。

例えばドアヒンジは、8代目ではプレス製だったのが、11代目とゼロクラウンは鋳物製に進化。それが新型ではプレス製に退化しているのです(GSやLSなどレクサスの現行モデルは鋳物製を採用)。

◆余計なものが減った新型クラウン

これまで、クラウンには様々な面白い装備が目立ちましたが、新型はかなり簡素化されたという印象です。

特に8代目クラウンの時代までは、世界中探しても同じクルマが見つからないほど、クラウンには様々な面白い装備があったといえます。例えば8代目には、既にタッチパネルのナビが設定されていましたし、シートのメモリ機能もありました。

シートのメモリ機能といえば、今ではベンツを始めとした輸入車の高級アイテムとしておなじみですが、この機能は1983年に登場した7代目の時代から、既にクラウンにはあったのです。

そのような機能は当時、自動車に詳しい人からは「余計なもの」と言われ、ヨーロッパ車の簡素さを見習ったほうが良いなどといわれていました。しかし、今となってはヨーロッパ車のほうが余計な仕掛けが多々ある一方、新型クラウンは逆にシンプルになった印象です。

特に後席の「余計なもの」は簡素化され、フロントシートバックの取っ手や後席用リモコンなどは、ショーファー用途が想定される一部にグレード以外には見られないようになりました。

こういったアイテムは、ゼロクラウンの時代までは多くのグレードに標準装備されていました。同じ時代において、クラウンより上級だったセルシオでも、それらアイテムはショーファー用途の「Fパッケージ」にしか存在しなかったのが、クラウンには標準で付いていたのです。

こうした「余計なもの」は、クラウンにおいて13代目以降、モデルチェンジを重ねるごとに排除されていきました。そして新型においては、かろうじて残っている「余計なもの」は、7代目から続く“エアコン吹出口のスイング機能”ぐらいとなってしまっています。

◆クラウン好きの結論は……

新型クラウンを歴代クラウンと比較した結果、私が感じたのは「このクルマはよくできているけれど、これを選ぶ理由はどこにあるのだろうか」という疑問です。新型クラウンは、走りがとても良くなり、まるでヨーロッパ車のようになりました。けれども、そうすると、本物のヨーロッパ車を買うほうが良いのではということになります。

もちろん新型クラウンは、クルマとしては大変良くできたクルマだと思います。しかし、クラウンが持っていた伝統をまったく活かせてないのがとても残念なのです。

新型クラウンよりも、アルファードのほうがよっぽどクラウンの後継車だと感じます。アルファードには、面白い装備が多々搭載されており、世界中探しても似たクルマが見つからないとほどの個性が詰まっています。日本で人気があるのはもちろん、タイなどでも最高級車として、ポルシェとともに自慢の対象になっている姿を目にします。

そういった意味では、今回の新型クラウンは「クラウン」ではなく、「マークX」の新型だといわれれば、クラウン好きとしては、すべてが納得できたと感じました。クーペルックで後席がちょっと狭いのも、内装の高級感がちょっと低くても、マークXだったならば、たとえ400万円ぐらいの価格帯だったとしても、「さすがトヨタ」と思ったことでしょう。

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ