日立製作所とみずほ銀行の“ただならぬ関係”


 日立製作所会長の中西宏氏が率いる日本経済団体連合会(経団連)が、2019年春の副会長人事の調整に入っている。

19年春に2期4年の任期満了を迎える副会長は、岡本圀衛・日本生命保険相談役、永易克典・三菱UFJ銀行特別顧問、宮永俊一・三菱重工業社長、十倉雅和・住友化学社長、飯島彰己・三井物産会長、工藤泰三・日本郵船会長の6人。

経団連副会長ポストは18で、業界ごとに枠がある。副会長待機ポストである経団連の助言機関、審議員会副議長から選ばれるケースが少なくない。古賀信行・野村ホールディングス会長が議長を務める審議員会の副議長は19人いる。

月刊誌「ZAITEN」(財界展望新社/2019年1月号)の記事『みずほ佐藤「日立との蜜月」で経団連副会長“内定”の密約』が、金融界で静かな話題となっている。経団連会長の中西氏が、日立のメインバンクであるみずほフィナンシャルグループ(FG)会長の佐藤康博氏を副会長に抜擢するという内容だ。

みずほFGからの副会長就任は、3代前の経団連会長だった御手洗冨士夫・キヤノン会長時代にまでさかのぼる。みずほFG社長だった前田晃伸氏が副会長に就いており、もし佐藤氏が就任すれば約12年ぶりとなる。

みずほFGと日立は関係が深い。旧興銀時代からのメインバンクというだけではない。14年には、日立の前会長の川村隆氏(現東京電力ホールディングス会長)をみずほFGの社外取締役に招聘、指名・報酬委員とした。そんな日立との蜜月関係もあって、「悲願の経団連副会長ポストを手にする」との観測が流れる。佐藤氏は審議員会の副議長なので、副会長になる要件を満たしている。

現在、銀行業界から出ている副会長は永易克典・三菱UFJ銀行特別顧問と國部毅三井住友フィナンシャルグループ社長(2019年4月1日から会長)の2人。永易氏が任期満了で退任するため、空席ができる。そこで、佐藤氏が副会長になるというシナリオが描かれた。

しかし、思惑通りいきそうにはない。三菱UFJ銀行は「銀行枠」と「三菱枠」を兼ねている。永易氏が副会長に就いた時は、同行の畔柳信雄・特別顧問から引き継いだ。今回も、永易氏の後任副会長は、三菱UFJFG社長の平野信行氏が有力視される。平野氏は4月1日付でFG会長に就く。財界では、経団連副会長就任に備えた人事と受け止められている。

「銀行業界から國部氏、平野氏の2人が副会長に座れば、佐藤氏の席はない。メガバンクから3人は多すぎるとの声もある」(経団連副会長経験者)

佐藤氏は悲願の副会長の座を射止めることができるか。または、20年春に國部氏が任期満了を迎えるまで待つのか。

●サプライズ人事はあるのか

商社枠も注目だ。商社枠は2人。現在は飯島彰己・三井物産会長と小林健・三菱商事会長が占めている。飯島氏が任期満了で退くため、1枠が空く。審議員会副議長の岡藤正広・伊藤忠商事会長と中村邦晴・住友商事会長が激しく争っている。

「商事・物産・住商の旧財閥系商社への対抗心を燃やす伊藤忠は副会長の椅子を欲しいが、肝心の岡藤氏が以前に『もうからん仕事はやらん』と広言したのがネック。ただ、中村氏の猟官運動が目立ちすぎなので、流れとしては岡藤氏か」(経団連の副会長)

「中西会長と岡藤氏の関係は悪くない」(別の経団連副会長)

岡本圀衛・日本生命保険相談役の後任は渡邉光一郎・第一生命ホールディングス会長、宮永俊一・三菱重工業社長の次は斎藤保・IHI会長、十倉雅和・住友化学社長の後は小堀秀毅・旭化成社長が、それぞれ有力視されている。工藤泰三・日本郵船会長の後任は、運輸業界からは見当たらない。

副会長就任に意欲満々と取り沙汰されている審議員会副議長が2人いる。井阪隆一・セブン&アイ・ホールディングス社長と新浪剛史・サントリーホールディングス社長だ。

新浪氏は経済同友会の代表幹事の候補になったこともあって「手垢がついている。安倍晋三首相に近すぎるのが難点」(前出の元副会長)との見方がある。出番があるのか微妙だ。井阪氏が副会長になれば、セブン&アイ会長に退き、社長の椅子は創業家の伊藤順朗取締役に“大政奉還”される方向とみられている。

業界枠がぎっちり固まっており、“中西カラー”を打ち出しにくい。かといって、業界内の順送り人事では、「旧態依然」という誹りは免れない。

前経団連会長の榊原定征(現東レ相談役)は18年春の副会長人事で、冨田哲郎・東日本旅客鉄道会長(JR東日本)、片野坂真哉・ANAホールディングス社長を起用。経団連の原点である製造業の枠にこだわらず、観光・インバウンド(訪日外国人)を意識した登用で新味を出した。

中西経団連は、どんな副会長の起用で、独自色を出すのか。経団連に見向きもしないIT関連やエレクトロニクス業界といった勢いのある経営者を取り込むことができれば、新しい風が吹くだろう。ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が入閣すれば、それこそ“ビッグサプライズ”となる。
(文=編集部)

当記事はビジネスジャーナルの提供記事です。

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