串かつ田中、“更衣室盗撮”事件でも、なぜか批判免れた理由…鳥貴族と真逆の対応が成功


 いま勢いがある居酒屋「串カツ田中」で、衝撃的な事件が起きた。盗撮事件だ。串カツ田中ホールディングス(HD)が12月21日に公表したニュースリリースによると、横浜市内のフランチャイズ(FC)店の4店舗で、従業員に知らせずに監視カメラが更衣室兼事務所に設置されていたという。

カメラが設置されていたのは、串カツ田中の「新横浜店」「希望ヶ丘店」「上大岡店」「菊名店」の4店舗。加盟店側は、過去に自社が経営する飲食店で金品盗難の被害があったため、盗難防止の観点から監視カメラを設置したと説明しているという。

串カツ田中HDは、たとえ盗難防止のためとはいえ、従業員に知らせていなかったことから盗撮行為にあたると判断。同社は4店舗を運営していた横浜市内のFC加盟店と契約を解除するとし、22日に4店舗の営業を停止した。15日にカメラは撤去済みという。

衝撃的な事件だが、防犯目的だった(と加盟店側が主張している)ことと、串カツ田中HDの断固たる処置が奏功し、世間の反応は割と穏やかなものだったように思う。

また、今回のニュースリリースでの説明が非常に丁寧だったことも奏功したと考えられる。事実の内容や経緯、原因、対策などについて詳細がきちんと公表されていた。筆者はそれに誠実さを感じた。そういった丁寧な対応が消費者に伝わったことで、穏やかな反応にとどまった側面がありそうだ。

他社と比べても、対応は丁寧だったように思う。たとえば、居酒屋チェーン「鳥貴族」では、男性店長が女性店員の着替えを盗撮したとして、運営会社の鳥貴族が店長を6月付で懲戒解雇にするという事件が起きているが、同社が公表したニュースリリースでは、事件が起きたことと懲戒解雇処分を行ったことを、わずか数行で淡々と記しているだけだ。これと比べると、串カツ田中の丁寧さが際立っている。こういった丁寧な対応は、消費者の反発を和らげたほか、回り回って業績にも好影響を与えたと考えられる。

●禁煙化で客離れ→大幅増収へ

串カツ田中HDの業績は好調だ。2017年12月~18年8月期の連結決算は、売上高が54億円、純利益が3億円3500万円だった。連結決算に移行したため単純比較はできないが、実質増収増益だ。

店舗数が42店増えたほか(同決算期末の店舗数は208店)、既存店売上高(直営店)が好調だったことが寄与した。既存店売上高は、5月と6月こそ前年同月を下回ったものの、それ以外の7つの月で前年を上回った。

6月が前年を下回ったのは、約9割の店舗で全席禁煙を始めたためだ。受動喫煙防止の観点から飲食業界では全席禁煙の流れが加速しているが、喫煙客と相性がいい居酒屋での全席禁煙化の動きは極めて異例だ。禁煙化で串カツ田中での売り上げ減が懸念されていたが、禁煙化初月の6月はそれが現実となったかたちだ。

6月の既存店売上高は前年同月比2.9%減だった。禁煙化による客離れ対策として割引キャンペーンなどを実施し、それにより客数が2.2%増えた一方で、客単価が大幅に低下したため、売上高はマイナスになってしまった。

禁煙化初月は厳しい結果に終わったが、翌7月と8月はプラスを達成した。8月は9.7%増と大きく増えている。同月から、全店舗の3分の1の店舗で土曜・日曜の開店時間を2時間早めて昼の12時にしたことで客数が大きく増えたことが影響した。開店時間を前倒ししたのは、禁煙化により土曜・日曜の午後2時台や午後3時台などの早い時間帯の来店客が増加したためだ。これにより昼食・昼飲み需要を取り込むことに成功し、8月は大幅な増収を達成することができた。

先述の決算期以降の話になるが、続く9月は前年の同月が大幅増(前年同月比8.1%増)だったことの反動や、台風などの影響でマイナスになってしまったが、10月は11.6%増と大きく伸びている。

10月は家族客増といった禁煙化のプラス面が強く出たほか、営業時間を変更したことや、期間限定で1111円で串カツ11種類食べ放題を実施したことなどが寄与した。11月は前年の同月が大幅増(前年同月比14.7%増)だったことの反動や前年同月と比較して祝日が1日少なかったことなどでわずかにマイナスとなっているが、こういった特殊要因を除いた商売の動向は悪くなかったと考えられる。

禁煙化をめぐっては、9月に「禁煙化感謝祭」と名付けた割引キャンペーンを実施したほか、11月から、喫煙を我慢して来店していることを示すという意味でタバコを店員に見せるとドリンク1杯が増量になる「ノンスモーキングチャレンジ」を通常サービスとして始めている。こういった施策を通じて禁煙化を積極的にアピールし、喫煙を嫌う人や健康に気を使う人の取り込みを図った。

●情報公開の姿勢が消費者の信頼を勝ち取ったか

健康志向の人を取り込む施策も積極的に行っている。たとえば、スポーツ庁が始めた、歩くことで健康増進を図る官民連携プロジェクト「FUN+WALK PROJECT」に参画し、8000歩を歩いた人に割引価格のセットメニューを提供するなどの取り組みを10月から始めている。これは、イメージアップにもつながりそうだ。

イメージアップを図るため、CSR(企業の社会的責任)にも積極的に取り組んでいる。たとえば、店舗で出る有機性廃棄物で作られた堆肥を畑にまき、その畑にキャベツの苗を植えてのちにキャベツを収穫する取り組みを17年から始めた。今年12月には、同社従業員とその家族でキャベツを収穫してそれを一部の店舗に納品し、お通しや「ちりとり鍋」の具材として使用する取り組みを行った。

大義に沿った施策も積極的に実施している。禁煙化やCSRもそうだが、プレミアムフライデーで行っている割引キャンペーンなどがそうだろう。串カツ田中は17年1月からプレミアムフライデーの認知度向上と「月末金曜日=串カツ田中」のイメージを強めることを目的に、月代わりでプレミアムフライデー向けの企画を実施している。政府によるプレミアムフライデーの取り組みは失敗に終わったとの声は少なくないが、とはいえ、「個人消費の活性化を目的とした政府が進めている取り組み」という大義は厳然と存在し、そのもとでの串カツ田中の施策に効果がまったくないということはないだろう。

串カツ田中は、こういった施策の実施を積極的に公表している。特徴的なのは、悪いことについても積極的に開示していることだ。先述の盗撮事件もそうだが、たとえば、禁煙化のマイナス面もしっかりと公表している。禁煙化初月の売り上げがマイナスになったことを“積極的”に公表する必要はないと思うが、串カツ田中はそのことを積極的に詳細にわたって公表している。路上喫煙やタバコのポイ捨てがあったことなどマイナスの印象が強い出来事も発表したのだ。積極的な情報開示を行うことで信頼を勝ち取ろうとしているようだ。

このことは売り場にも好ましいかたちで現れているように思う。筆者の感覚では、串カツ田中の接客サービス力は高いと感じる。積極的な情報開示を行うことで顧客から信頼を獲得している面があるが、同じように店舗従業員からの信頼も獲得しているようで、それにより高い接客サービスを実現しているのではないか。そしてリピーターの確保につながっていると筆者は考える。

こういったことが原動力となり、串カツ田中は好業績を続けることができている。しかし、盗撮事件が水を差す格好になってしまった。今回はそれほど大きな問題にはなっていないが、油断は禁物だろう。これ以上の問題が起きないとは言い切ることはできない。これを機に、総点検を実施する必要があるだろう。いずれにしても、気を引き締める必要はありそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

当記事はビジネスジャーナルの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ