最終回「プリティが多すぎる」木曜深夜ドラマの理想形「なぜ売上を伸ばすのか」千葉雄大は答えを見つけた

エキレビ!

新見「僕、まだ文芸には帰っちゃいけない気がしてたんです。ちゃんとここでやり切らないとダメだと思って」

12月20日(木)深夜放送のドラマ『プリティが多すぎる』(日本テレビ系)最終話。
雑誌『Pipin』の編集者・新見(千葉雄大)に、元上司で文芸編集部の編集長・柏崎(杉本哲太)から電話がかかってきた。「新見、お前を文芸に戻してやる。いまから出てこい」。新見は驚きながらも、一緒にいた利緒(佐津川愛実)を残して柏崎のもとに走った。


レイ「仲間だったら背中押してあげることできないかな」
売り上げが伸びず廃刊の危機にあった雑誌『Pipin』は、一時的に売り上げを伸ばした。それは、元文芸編集者の新見の企画が当たったから。それは、原宿を舞台とした水科木乃(清水くるみ)の小説『十条からキラキラまで』に登場するヒロインのコーディネートを再現する企画だった。

新見の企画を見て、水科は編集者に会っても良いと言ってきた。柏崎は、どうしても水科の小説を自社から出版したいと思っている。柏崎は、新見の「文芸編集部に戻りたい」という思いを利用しようとしていた。

柏崎「文芸に戻りたかったら、目の前にあるチャンスは死んでもモノにしろ」

新見が文芸編集部から異動になったのは、元担当作家・巽信次郎(麿赤兒)の意向によるものだったはず。柏崎は、巽の許可を取らずに勝手に異動をさせようとしている。それは、本を売るためなら何でもするという、なりふり構わない仕事観からか。

新見の状況を知って、Pipinの編集者たちが何も思わないわけがない。特に利緒は、一緒にPipinを作る仲間だと思っていた新見に裏切られたという気持ちでいた。Pipinのコーディネート企画も、Pipinのためではなく文芸に戻るために考えたのかもしれないと疑ってしまう。

レイ「りっちゃんは、南吉くん(新見)のことを仲間だと思ってたのに、裏切られたから怒ってるんだよね? でも、仲間だったら背中押してあげることできないかな。南吉くん、あんなに文芸に戻りたがってたじゃない。それとも、仲間以上の感情が芽生えちゃったの?」

ショップ店員のレイ(黒羽麻璃央)にそう言われ、怒っていた利緒は少し冷静になる。

文芸編集部から異動してきたときには、カワイイものやそれに一生懸命な女の子たちに酔う実が持てなかった新見。でも、利緒たち編集者やモデルたちの働く姿を見て、新見は変わった。売り上げを上げることをゴールとするのではなく、「何のために売り上げを上げるのか」を考えられるようになった。それは、編集者である自分の満足のためではない。読者のため、そしてPipinのために働くみんなのためだった。

信頼に応えることが仕事。仕事を動かしているのは数字でなく人間
新見「決まりましたよ! 水科先生が、Pipinで連載してくれることになりました! 水科先生の連載があれば、継続して購読者を集めることができます。上もきっと納得するはずです」

文芸編集部に戻ることを柏崎に打診されたときから考えていたのか、それとも水科と関わるうちに考えが変わったのかはわからない。新見は、文芸編集部のためではなくPipinのために、水科と連載の約束を取りつけてきた。

「不器用だけど精一杯生きている人たちを書きたいんだよね。上手くいかないことばっかりだけど、それでも全力で生きてるって感じ」と言っていた水科。それは、新見が見てきたPipinで働くモデルたち、編集者たちの姿そのものだった。そしてそれは、新見がPipinで知った「カワイイ」という概念と同じでもある。

新見「先生は、Pipinを信頼して、Pipinのために書くことを快諾してくださいました。文芸には譲りません」

新見は、自分には価値を感じられなかったPipinを、読者の女の子たちが信頼して楽しみにしている姿を見てきた。その信頼に応えることが自分の仕事だと学んできた。水科からの信頼を利用して文芸から本を出すのではなく、自分がやるべきことは信頼に応えること。それをはっきりと口にした新見が頼もしい。

その一方で、Pipin編集長・詩織(堀内敬子)が何でも報告するようにと言ったり、報告・連絡・相談をしなかったせいで数々の失敗をしてきたりした新見が、また水科の連載のことをPipin編集部の誰にも言わなかったところは変わらない。

見ている自分の中の、リアリティが気になる面は「そこは反省しないんかい!」とツッコみたくなる。でも、カワイイに一生懸命な女の子たちのように、自分が信じるものにまっすぐだということを考えると、そんなフィクションの中の新見もカワイイから不思議だ。

新見「僕は、みなさんには本当に申し訳ないことばかりです。小説のことも、勝手に話を進めてすみませんでした」
詩織「良いんじゃない? 南吉くんが考えて、これがPipinのためになると思ったのなら、それが正解よ。あなたはPipin編集者だもの」

不器用で真面目でカワイイお仕事ドラマ
最終話、新見が周りに「Pipinのために水科に連載してもらう」と公言してしまうという展開も、脚本的に無理ではなかったはずだ。Pipin編集部が一丸となってPipinの売り上げアップに奔走するストーリーでも、感動できたと思う。

それをしなかったのは、新見もまた、Pipinのモデルや編集者たちと同じように強い個性を持ったひとりの仕事人であることを描きたかったからだと思う。

文芸編集部から見れば、Pipinに関わる人は個性が強すぎる。でもPipinから見れば、新見こそが個性が強すぎる人。仕事というものは、そういった個性を排除しなければいけないのではなく、詩織のような包容力で巻き込んでいくからこそ面白くなる。仕事を動かしているのは、数字ではなく人間なのだ。

約30分という深夜の短い枠の中で、カワイイでデコレーションしながらも仕事の本質に向かって突き進んできた『プリティが多すぎる』。リアリティに関して気になるポイントはありつつも、その勢いとポジティブさ、そして「働く人を応援したい」という気持ちを感じて、まあまあ許容できてしまった。

金曜日を前に、仕事の理不尽さや失敗への向き合い方を伝えてきた本作。木曜深夜のドラマはこうあってほしい! と思う、不器用で真面目でカワイイお仕事ドラマだった。

(むらたえりか)

▽配信サイト
・Hulu

ドラマ『プリティが多すぎる』(全10話)
日本テレビ系 10月18日(木)スタート 毎週木曜24時59分~
出演:千葉雄大、佐津川愛美、小林きな子、矢島舞美、池端レイナ、黒羽麻璃央、長井短、武田玲奈、清水くるみ、川島海荷、森山あすか、中尾明慶、堀内敬子、杉本哲太
原作:大崎梢『プリティが多すぎる』(文春文庫)
脚本:荒井修子、渡邉真子
音楽:西口悠二、Chocoholic
(ドラマ「プリティが多すぎる」オリジナル・サウンドトラック)
制作:千野成子、 池田健司
プロデューサー:小田玲奈、松永洋一(R.I.S Enterprise)、森有紗
演出:久保田充ほか
制作プロダクション:R.I.S Enterprise
(c)日本テレビ
公式サイト:http//www.ntv.co.jp/pretty/

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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