企業不祥事の際、問題を“悪化させる”広報対応の共通点


「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。そのマーケティングの基礎の基礎として、前回はブランドイメージを維持することの難しさについて解説したが、今回はそのイメージが損なわれた場合、企業はどのように対処すればいいかを、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に聞いた。

●不祥事対応は初動がすべて

――前回の記事でブランドイメージは時間をかけて地道に構築するしかないのに、悪いイメージは一瞬で広がってしまう、とのお話がありました。では、もしブランドイメージが失墜しかねない事件を起こしてしまったら、企業はどう対応すべきなのでしょうか。

有馬賢治氏(以下、有馬) 昨今はSNSの普及で、マスコミ以外からもバッシングやさまざまな憶測の情報が飛び交い、収拾をつけるのが難しい時代です。さらに、企業は公的側面があるため、説明責任が社会的に求められているという通念が広がっています。ですので、内的論理での言い逃れや、報道を無視するような姿勢は逆効果を招きます。だからこそ、企業は覚悟を決めて問題と対峙する必要があります。

――人気テレビ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)が、他国のお祭りをねつ造して放送した件で、第一報が報じられたとき、日本テレビ側は報道を否定しましたが、続報が出て謝罪しましたね。

有馬 取り繕ってもすぐに裏を調べられてしまうし、内部告発なども社会正義と捉えられているので、シラを切り通せる時代ではありません。本件は、どうせバレるのであれば、最初から真実を説明するべきだったと思います。あとから「やっぱり本当でした」と言っても、嘘つきという印象を与えてしまうだけですからね。

正直に説明することは大前提ですが、企業は可能な限り素早い対応をすべきだと思います。具体的には、内容を整理して適切にプレスリリースをし、代表者が誠意をもって説明をすることが効果的だと思われます。トヨタ自動車は麻薬密輸容疑で元役員が逮捕された際、すぐに豊田章男社長が記者会見するなど、迅速に対応したため比較的早めに事態を収束できました。これは、初動のスピードが良い結果を生んだ好例だと思われます。

――初動が大事と。

有馬 個人でも企業でも、世の中、不祥事があふれていますが、その多くが初動に失敗しています。最近でしたら、片山さつき参議院議員が不正を報じられたときに、最初は報道を否定していましたが、続報を出されて訂正をせざるを得なくなりました。日大のアメフト部問題も、責任者である理事長が直々に説明をしないことに世間の注目が集まりました。これも問題を広げる要因となったと思います。

●迅速に対応できる広報体制を整えるのもマーケティングのうち

――やはり個人も企業も、つい保身に走ってしまうようですね。旬な話題だと、日産のカルロス・ゴーン前会長が逮捕されましたが、このケースは、どちらかといえば、ゴーン氏個人の問題にも思えますが、それでも日産のブランドイメージ低下は免れないのでしょうか。

有馬 神戸製鋼が品質管理データを改ざんした事件と違い、今回の日産のケースは直接的に製品の品質への信用が損なわれる問題ではありません。が、トップの不正は消費者に「こんな会社がつくっている製品は本当に大丈夫なの?」と疑念を抱かせるには十分です。この状況で、特にこだわりがなければ、あえて日産から車を購入しようという気持ちが起きづらいとは思いませんか。

――不祥事が起きた際に重要なのは責任者の迅速な説明が第一ということですが、その前段階として、組織としてはどのような体制を整えておくべきなのでしょうか。

有馬 何かあったときにきちんと情報を整理してプレスリリースできる広報体制を整えることでしょうか。リスクマネジメントを意識したブランドづくりが求められる時代になったと私は感じています。ですから問題が起こった直後にマスコミの取材を受けて、「担当者不在でお答えできません」という対応をする広報担当者がよく見受けられますが、これは好ましくありません。その場で回答できなくても、「いつどこで発表します」としっかりと明言すれば、無責任な印象は、少しは和らぐのではないかと思います。イメージ回復の第一歩はとにかく社会に対して誠実に対応することなのですから。

――ありがとうございました。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

当記事はビジネスジャーナルの提供記事です。

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ