「3K」とも評される介護職 ブラックすぎる有料老人ホームの実態とは

しらべぇ

2018/12/8 15:30

(kazoka30/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)
高齢化する日本において、介護現場の担い手はその重要性を増している。しかし、その仕事は重労働で「3K(キツい・汚い・危険)」とも言われ、精神的にも負担が大きいとされる。

残業の証拠を自動で残せるスマホアプリ「残業証拠レコーダー」を提供する日本リーガルネットワークに寄せられた、介護にまつわるブラック企業エピソードを紹介しよう。

■友達の親の会社に転職


みーぽさんは、知り合いが経営する有料老人ホームに勤務していた。

「私が以前勤めていた有料老人ホームでは、介護職員の半分以上が自分の親より年上の人たちで、中には私の4周り上、当時73歳の方とも一緒に働いていました。

その老人ホームで働き出したきっかけも、社長の娘が私の友達で、私がちょうど仕事を転職しようとしていた時、『やりたいことが見つかるまで、うちでお手伝いしてくれない?』と軽い誘いに賛成してしまったからです。

入社してから、『まだ職員は何人もいるな』と思っていましたが、私が働き出してまだ1ヶ月も経たない間にどんどん職員が辞めて行くし、偉い主任の方まで連絡つかなくなるし、『この会社大丈夫なのかな?』と頭をよぎりました。

でも、『友達の親がやってる所だし大丈夫だろう』と気持ちを切り替えて働いていました」

■いきなり夜勤シフトを組まれる


若手職員が少なかったためか、契約にない仕事を押し付けられることが増えていった。

「20代、30代の職員が私も含め、4人しかおらず、年配の職員はすぐ『若い子がやりなさい』『若いんだから大丈夫でしょ』など、若いからとどんどん仕事を押し付けてきました。

日勤だけのシフト契約なのに、いきなり夜勤のシフト組まれたり、最終的には朝7時から夜19時までの通しというシフトが週に5日間連続であったり(休憩は1時間だけ)、休みは1ヶ月に6回しかありません。

日々体力勝負の現場で、全然疲れが取れないまま過ごしている感じが何年も続きました。そのため、私の身体はストレスでいっぱいになり、倒れてしまい入院することになってしまいました。入院費はもちろん会社からは出ませんし、働かない間の給料は出ません」

■公共料金を払うギリギリの生活


若手が少なく、仕事がキツい有料老人ホームの仕事だったが、収入面でも厳しさがあったという。

「介護は辛い仕事と聞いていましたが、こんなにも辛いとは思ってもいませんでした。でも、給料日だけは楽しみでいっぱいになりましたが、『え…これだけ?』と思う時しかありません。

もちろんボーナスも1ヶ月の半分くらいしか貰えず、『これってボーナスなの?』って感じでした。1人暮らしをしてましたが、公共料金を支払ってるだけで、マイナスになりそうな日々でした。貯金もできませんでした。

これからの将来、結婚もしたいし、そのためにも貯金はしっかりしたい。でもこの職場では未来はないと考え、すっぱり辞表を出しました。全く悔いはありません。むしろ、今の仕事の福利厚生が良すぎて驚いてます」

■弁護士の見解は




介護の現場がいくら重労働とはいえ、このような働き方に法的な問題はないのだろうか。鎧橋綜合法律事務所の早野述久弁護士に聞いてみた。

早野弁護士:高齢化社会とサービス分野人材の不足により、介護現場は常に恒常的な人手不足に見舞われています。みーぽさんの勤務された会社では、現代日本における社会問題が折り重なった状態で出現したものと言えるかもしれません。

■無理なシフトは過労死ラインの危険も


早野弁護士:みーぽさんは、日勤だけのシフトの雇用契約だったということですので、原則として、会社側はみーぽさんの同意なく、夜勤シフトを組むことはできません。

月の残業時間の合計ついては、みーぽさんの話からは明らかではありませんが、シフトがコロコロ変わっているようですので、いわゆる過労死基準を超過していた可能性があります。

過労死についての基準は、厚生労働省によって定められているという。

早野弁護士:一般的に過労死基準は、厚生労働省の策定した「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日基発1063号)が定める残業時間の基準を指します。

具体的には、発症前1か月間に残業時間が1か月あたり100時間を超過した、または、発症前2ないし6か月間の残業時間の平均が80時間を超過した場合には、業務と発症に因果関係が強いとする基準です。

上記基準に、みーぽさんの場合を当てはめると、朝7時から夜19時までの通しというシフトが週に5日間連続であり、休みは1か月に6回しかなかったとのことですので、最大で、月275時間の勤務、約100時間の残業となり過労死基準に該当する可能性があります。

また、日勤、夜勤、朝から夜までの通しのシフトがあったことから、長時間労働だけでない業務の過重性の存在を示唆しています。

会社は労働者に対して安全配慮義務を負っていることから(労働契約法5条、労働安全衛生法3条1項)、みーぽさんの勤務シフトを調整する等して、過重労働とならないように配慮すべきであったと言えます。

■労災補償しないことの違法性



早野弁護士:上記のような長時間労働により、みーぽさんが「私の身体はストレスでいっぱいになり、倒れてしまい入院することになっ」たということですので、業務との因果関係が認められ、業務上の疾病との評価ができると思います。

このように、みーぽさんが業務に起因する疾病で、入院した可能性が高いにも関わらず、会社が治療費の負担や休業補償を行わないことは違法な可能性があります(労基法75条等)。

とくに、みーぽさんは、業務上の過重労働が原因で休業をせざるを得なかったことから、本来なら労災保険から休業期間について平均賃金の8割の給付を受けることができました。

また会社としても、みーぽさんの疾病について労災申請を行うべきであったと考えられ、労災申請を行わなかったことは違法な労災隠しとなる可能性もあります。

■収益性と賃金バランスの難しさ


早野弁護士:みーぽさんの事例のように、介護職に従事する方々の賃金は、他の職種に比べて給与が低くなる傾向があります。

その原因の一つに、「社会保障費抑制のための介護報酬の引き下げ」があり、運営会社が収益を確保することが難しくなりつつあるということがあります。

厚生労働省としても、こうした介護職の低賃金を放置しているわけでなく、数度の処遇改善費の取り組みを行っており、現在は、勤続10年以上の介護福祉士について、月額8万円の待遇改善について検討が行われています。

なお、日本リーガルネットワークは、今月31日まで、新たに「ブラック企業エピソード」を募集している。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク

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