「いまは『御恩なき奉公』。洗脳だ」なぜブラック企業はなくならないのか

AbemaTIMES

2018/12/8 12:00


 5日、民間の団体が主催する「ブラック企業大賞2018」のノミネートが発表され、パワハラや残業代未払いなどの問題で9社がその不名誉な賞に名を連ねた。

最近のニュースを見ても、芸能事務所の社長が社員の顔を熱い鍋に突っ込ませたり、テーマパークキャストに「ババアはいらない」と発言したりするなど、数えたらきりがないほどのハラスメントが起こっている。なぜブラック企業はなくならないのか? 6日放送のAbemaTV『 AbemaPrime 』では、ブラック企業大賞の実行委員であり、ブラック企業被害対策弁護団の代表でもある佐々木亮弁護士を交え議論した。

 企業内で起こるパワハラについて佐々木弁護士は「昔は労働問題として捉えられていなかった。起きていたとは思うが、人間関係の問題だと言われていた。世代的・時代的なものもあって、指導するときに殴るとか怒鳴るといったことが、最近になってよくない指導の仕方だという認識が広まった。人間関係だけではなく労働問題だという捉え方になって、相談が増えて問題化してきた」と話す。

ブラック企業がなくならない背景には、パワハラなどのハラスメントを受ける人が陥る心理状態が関係しているとも言われる。心理学者の藤井靖氏は、ブラック企業に逆らえない理由を「不安・恐怖などをさらに感じたくないので、とにかく相手や状況に合わせてしまう」としており、長期間そういった環境に身を置くと「思考停止状態となり、物事の判断ができなくなる。その状況に自分では気づけない」という。また、こうした思考は日本人独特だといい、「日本人には周りと合わせることを美徳とする心理的特徴がある」こと、さらに「不安遺伝子を日本人の約98%が持っている(欧米人は6割程度、アフリカ系は3割程度)」ことなどが要因だとした。

 佐々木弁護士は、パワハラや長時間労働が「会社第一」という同調圧力による部分があるとしつつ、「会社が見返りを渡していた高度成長期はまさに御恩と奉公が成り立っていたが、今は『御恩なき奉公』と言われている。非正規労働者が増えて、労働者に対する実入りが減っているが、労働者が貧困に陥るほど景気は落ちてはいないはず。労働者に回す部分がなくなっていて、何千万の退職金というのは良い企業とか公務員とかに限られている」と話す。

しかし、いま社会で問題になっているのは人材不足。それでもパワハラは起きてしまう理由については、「いま雇用を失ったら、次に勤めたいといっても正社員になれるかという問題がある。非正規雇用で十分に生活できるお給料をもらえるかは、全く保障がない。意外と今でも雇用を失うと貧困まで一気に行ってしまうという関係があって、だったら『ここにいなきゃいけない』と。そして、パワハラを受けていると辞めるという選択肢がなくなってくるし、分からなくなってしまう。洗脳だ」と指摘した。


 ハラスメントが浸透してきた一方で、最近は何かにつけて「ハラスメントだ」と言う人が増えているという意見がある。中には「ハラハラ(ハラスメントハラスメント)」という言葉も出てきたという。そうした状況には「パワハラという言葉でほぼ包含されるのかなという気はする。ただハラスメントの被害者は実際にいて、かなり深刻な方もいるというのも事実だし、逆にまだそこまでの嫌がらせに至ってないけれども、ずいぶん騒いで逆に上司の方が困ってしまうという事例もある。そこはどう調整をつけていくか。何をやっていいのか、やっちゃいけないのかというのは、これからきちんと議論していくべきところだと思う」とコメント。


 東京工業大学教授の柳瀬博一氏も全ての事例が「ハラスメント」で括られることを危惧し、「『パワハラ』とかキーワードが大きくなりすぎているのは危ない。何でもこの箱に入れたくなるが、問題は常に個別具体的。パワハラやセクハラがクローズアップされるのは、次のフェーズにいく意味ですごくいいことだと思うが、その段階においてはメディアも含めて“大きい言葉”で取材するのはズルだと思う。個別に具体的にどういう問題なのかをちゃんと伝えて、それぞれの対処をきっちり教えないと、お互いが怖くなってしまう」との見方を示した。

 お互いが怖くなるという点では、ある漫画に出てきた「ハラミ会だから女性社員は誘わない」という飲み会のシーンが話題になっている。ハラミ会とは、飲み会などで女性にハラスメントが未然に起きないように女性を参加させない会のこと。ネット上では「ハラスメント被害、行為を避けるために有効だ」という意見がある一方、「考えるのを止めているだけ、幼稚だ」「女性だけ誘わないこともセクハラだ」などの賛否両論が巻き起こっている。


 小川彩佳アナウンサーは「これが行きつく先は、女性が自分で自分の首を絞めてしまうことでは。男性が周りを男性で固めたがったり、女性と2人きりで会うことを止めてしまったりということは、結局女性がキャリアを積む機会がどんどん摘まれてしまうという事態を生みかねない。非常に恐ろしいことだと思う」と述べた。

なお、2018年のブラック企業大賞は12月23日に発表される。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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