クライフ・イズムを継承する浦安フットサルは「美しく勝つ」理想にたどり着けるか?

AbemaTIMES

2018/12/7 17:00


 世界最高のフットボーラー、ヨハン・クライフは生前「美しく敗れることを恥と思うな。無様に勝つことを恥と思え」という名言を残した。勝利を求めながらも「サッカーは美しくないといけない」という哲学を感じるその言葉は、彼が祖国オランダで生み出したトータルフットボールに集約されている。

 クライフの哲学はその後、彼もプレーしたバルセロナへ受け継がれ、「美しく勝つ」という美学は今も多くのフットボーラーが目指すところである。それはサッカーに限らず、フットサルでも同じことがいえる。

バルドラール浦安はFリーグで最も理想を追い求めるチームのひとつであり、彼らのパスワーク主体のフットサルは美しい。しかし、時代の移り変わりとともに、優勝候補に名を連ねたかつての強さは影を潜め、下位に低迷している。それでも彼らは、理想の追求をやめない。

浦安は何を目指し、どこへ向かっているのだろうか。

「美しいフットサル」という真の理想へ
 24歳で副キャプテンを務める宮崎岳は、浦安フットサルの心臓だ。緩急自在のパス回しの出し手となり、受け手となり、潤滑油となり、フィニッシャーにもなる。すべての局面で重責を担っているのだ。浦安を指揮するアルベルト・リケル監督はもとより、ブルーノ・ガルシア日本代表監督もその才能を見逃さなかった。

「少しずつ点を取れ始めていますし、少しずつゲームコントロールもできるようになったところを評価してもらったのかなと。でも満足できていません。4人でパスを回すのか、3-1のピヴォを前に置いた形なのか、状況に応じてすべきことをもっとやらないと。その能力が足りていないからこの順位にいるんだと思います」

自身でそう分析する宮崎は、11月にキャリアで初めて代表候補に選ばれた。もともと、ストイックに自分を追い込む性格だ。満足はしていない。その言葉は、この合宿を経てさらに深いものとなった。

「代表合宿は強度が全然違いました。浦安の練習が少しマンネリ化していたところもあると思います。まったく足りないことに気づき、同時に成長する機会を得られた合宿でした。でも『候補』ではなく『代表選手』にならないといけないですし、また強い浦安に戻すために、僕からやっていかないといけません」

浦安のフットサルは、宮崎が代表に呼ばれる少し前から、変化を見せ始めていた。開幕戦の勝利以降、9試合未勝利が続き、その後も連勝がないまま停滞していたが、第21節から第25節まで2勝3分けと無敗をキープして、第24節には今シーズン初の連勝も記録した。その試合後、キャプテンの加藤竜馬はこう話した。

「1試合を通して自分たちのやりたいフットサルができていました。ただし、最後のところで決めるところをもっとやっていかないと、この先ちょっと苦しくなってくると思います。しっかりとまたシュート練習や自分たちのフットサル哲学を極められるようにやっていきたいです」

加藤の口から「フットサル哲学」という言葉が出たことは、このクラブの系譜が受け継がれていることを意味している。リケル監督以前にも、浦安はスペイン人指揮官によってメソッドが体系化され、かつて所属した星翔太や荒牧太郎、そして高橋健介など、トップ選手たちもスペインリーグで学び得たことをこのクラブに持ち帰ってきた。その真髄は加藤へと伝承され、そして今度は、宮崎へと託されつつあるのだ。

“エルマタドール”と呼ばれてファンに愛され、引退後もすぐに指導の道に進んで、昨シーズンの浦安を指揮した高橋は、「攻撃でも守備でも、どんな局面でも主導権を握れるフットサルを目指す」と話していた。それと同じ理想を、高橋の前に指揮していた米川正夫監督も語っていた。やはり、彼らの理想はそこにある。

しかしいくら理想を話しても、プロスポーツでは結果が出ないと突き進むことが困難になってくる。それでもブレずに進めるのは、浦安に信念があるからにほかならない。リケル監督はシーズン当初から、「選手はいいトレーニングをして、いい試合をしてくれている」と話し続けてきた。もちろん、不甲斐ない出来にイラ立ち、言葉少なめに記者会見を後にすることもあった。ただ一度も、選手を非難することはなかった。

この先、浦安がどんな結果を手にするかはまだ誰にもわからない。加藤も宮崎も、リケル監督も常々話す「フィニッシュの課題」は依然として残っているだけに、いくら美しいパスワークを披露しても、結果が伴うとは限らない。それに、シーズンは残り8試合となり、プレーオフ進出の可能性は完全に消滅した。今年はもう、タイトル争いができない。普通であれば、目先のモチベーションは失われてしまうはずだ。

それでもなお浦安に期待してしまうのは、加藤や宮崎、それに「クライフの14番」を背負い、高橋が太鼓判を押した石田健太郎など、このクラブのDNAが連綿と受け継がれているからだろう。かつての栄光を知るベテランはもういないが、若く生きのいい選手も育ってきているのだ。

結果も内容も追う。浦安はこれからも「美しいフットサル」という真の理想へと突き進む――。

文・本田好伸(SAL編集部)

(C)AbemaTV

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ