大阪万博は「負の遺産」の隠蔽…際限なき無駄な公共事業、将来は府の財政を圧迫


 55年ぶりに大阪で万国博覧会が開かれる。関西メディアは「万歳」状態だが、大丈夫なのか。

パリの博覧会国際事務局(BIE)本部で11月23日に開かれた総会での投票で、大阪はエカテリンブルク(ロシア)、バクー(アゼルバイジャン)を大差で破った。開催は2020年開催の東京五輪の5年後だ。前回の大阪万博(1970年)は東京五輪(1964年)の6年後であり、間隔はほぼ同じ。「東京が2度目なら大阪も2度目を」と強調してきた松井一郎大阪府知事は、「世界中があっと驚くような万博にしたい」と興奮気味。世耕弘成経済産業相は「全国的にも大きなインパクトのある勝利」と話した。同知事とともに翌朝、関西国際空港に降り立った吉村洋文大阪市長は「埋め立てを急がないと間に合わない」などと話した。

テーマは当初、「長寿」を中心にしたが、「長寿国でない発展途上国の票が取れない」と判断して、結局「いのち輝く未来社会のデザイン」に変更した。誰でもつくれるような場当たりキャッチコピーだ。世耕氏がプレゼンテーションで力説した「私たちの万博は、あたかもみんなにとっての実験室。SDGs(国連の持続可能な開発目標)を追い求め解決策を共に創造しよう」という安っぽいフレーズに笑ってしまう。

開催半年間の入場者予想は、愛知万博を600万人上回る2800万人。国の試算による経済効果なる「捕らぬ狸」は2兆円だ。大阪府の御用学者がはじいた数字はもっと多い。今回の誘致費用は36億円。松井氏は「(当選したので)住民訴訟の心配はなくなった」と喜ぶが、将来、招致費を上回る損害が出ることも十分に考えられる。

会場建設費だけで最低でも1250億円かかるとしているが、はるかに上回ることになるだろう費用は国、大阪府、民間で3等分する。さらに人工島への架橋の車線増加や、地下鉄延伸などインフラ整備は730億円とされる。愛知万博では会場へつながる高速道もつくられたが、閉幕後は利用者がほとんどおらず、維持費が財政を圧迫している。

●経済活性化という嘘

大阪市が小躍りするのには、ほかにも理由がある。「負の遺産」への批判解消である。「2008年五輪」の誘致に失敗し、「選手村にする」などと開発した夢洲(ゆめしま)へ引くはずの地下鉄も「無人島へつなぐのか」との批判で工事がストップしていた。万博名目で際限のない公共工事が進むだろう。

25年大阪万博誘致の“言い出しっぺ”は橋下徹元大阪市長とされるが、70年の大阪万博も知らない彼の発想とも思えない。ブレーンでもある作家、堺屋太一氏の入れ知恵のようだ。堺屋氏は旧通産省の官僚時代、70年万博を主導し約6400万人を集客してみせた。

「夢よもう一度」へ突っ走る大阪だが、元大阪府議のジャーナリスト山本健治氏は70年万博の際、作家の小田実氏(故人)らと反対運動を展開した経験がある。

「『人類の進歩と調和』とか言っていたが、当時、公害問題や沖縄の米兵の狼藉、差別問題など問題は山積みだった。『世界の国からこんにちは』などと謳われたけど、会場に外国人などほとんど来なかった。閉幕後、大阪経済は落ちる一方で、万博で経済が活性化したなんて大嘘ですよ」(山本氏)

山本氏は「今回、本当は夢洲へのIR(統合型リゾート)誘致でカジノがやりたいだけ。維新の会の票がほしい安倍首相の思惑と相まって、国が推すことになった」と話す。

五輪は東京、リニアも名古屋止まりなど、このところ置いてきぼりの大阪。今回願ったりの当選だが、現在はアジアのなかで日本だけ経済規模が突出していた70年代ではない。そもそも大阪市民ですら万博への関心は極めて低い。ゼネコンのために公金を使いまくりたい行政による「押し付けイベント」である。

山本氏は「今年、台風21号で大阪湾は大変だった。大型台風や南海トラフ地震などが来れば大変なことになる場所。そんなこともは何も考えられていない」とも指摘する。

今回の誘致合戦では、有力視されていたパリ市が今年に入って財政負担への懸念から立候補を取り下げた。「フランスは、アホな大金を使うのは日本に任せとけ、と降りたのでしょう。賢い選択でしょうね」と山本氏は話す。同感だ。
(文=粟野仁雄/ジャーナリスト)

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