朝ドラ抜擢も納得! 30代になった戸田恵梨香の真骨頂は「大人の色気」と「親しみやすさ」

日刊サイゾー

2018/12/6 17:00


 2019年下半期のNHK連続テレビ小説『スカーレット』のヒロインに、戸田恵梨香が決定した。舞台は昭和30~40年の滋賀県で、実在の女性陶芸家を演じるという。

朝ドラヒロインには2つの流れがある。ひとつは、若手新人女優の登竜門的なもの。最近では『半分、青い。』の永野芽郁がそうだ。ヒロインの成長と女優の成長がリンクするのがドラマ内での見どころで、朝ドラで初めて主役を演じる女優も少なくない。

もうひとつは、演技の実力や女優としての実績が認められて起用されるもの。現在放送中の『まんぷく』でヒロインを演じる安藤サクラが、こちらのタイプだろう。前者は10代後半から20代初頭の女優が多いのに対して、後者は20代後半から30代以上の女優が中心となる。

戸田は完全に後者だ。つまり、アイドル性ではなく、女優としての力量が認められての起用だろう。

華のあるルックスゆえに、アイドル女優的な印象が強かった戸田だが、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)で共演した新垣結衣と同様、大人の女性を演じられる実力派女優となりつつある。

それは現在放送中の『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)を見れば、誰しも納得することだろう。

本作で戸田が演じるのはエリート女性医師の北澤尚。エリート精神科医の井原侑市(松岡昌宏)と結婚間近だったが、引っ越しのアルバイトをする40代の元小説家・間宮真司(ムロツヨシ)と恋に落ちる。自分が好きだった小説の作者だったことから、尚は真司に運命を感じ、エリート医師との結婚をあっさりと破棄して、親の反対を押し切り、真司との恋に突き進んでいく。

同時に、尚が若年性アルツハイマーだと判明。物語は格差恋愛モノから難病モノとなっていく。記憶が抜け落ちていく自分に苦悩する姿は迫真の芝居となっているが、何より印象に残るのは、第1話で運命の相手に向かって突き進む尚の姿である。ここには、自分の中にある恋愛感情がコントロールできない時の、理屈を超えた生々しさがある。

戸田は、スレンダーな体形と眼光の鋭さゆえに、オシャレで洗練された色気のある女優という印象が強く、男からすると敷居が高く、近寄りがたい美人といったところ。だが、バラエティ番組などで見せる素の戸田はぶっきらぼうで男っぽく、とても親しみやすい。ハスキーな声で楽しそうにしゃべる姿は、“本音でズケズケしゃべってくれる気さくなネーちゃん”という感じで、一緒に酒が飲みたくなる。

『大恋愛』でも、ムロツヨシと居酒屋で楽しそうにしている姿がとても魅力的だ。ムロ演じる中年男性と恋に落ちても自然に見えるのは、ムロのシリアスな演技が見事なのはもちろんだが、その会話を受け止める戸田の仕草に飾らない人柄がにじみ出ているからだろう。

戸田は現在30歳。2000年、11歳のときに朝ドラ『オードリー』で女優デビューを果たす。

中学卒業とともに上京し、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)の「制コレ’03」のメンバーとなり、05年に学園ドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)で注目される。その後『LIAR GAME』(フジテレビ系)や『SPEC』(TBS系)といったドラマで主演を務め、人気女優としての地位を確立する。

数々の代表作を持つ戸田だが、今の『大恋愛』の尚につながる大人の色気と親しみやすさを初めて意識したのは、NHKドラマ『書店員ミチルの身の上話』だ。

戸田が演じたのは、地方の書店員として働いていた古川ミチル。彼氏がいる一方で、東京の出版社に勤める書店営業の男性と不倫していたミチルは、ふとした思いつきで東京に行き、そのまま幼なじみの男性の元に居候してしまう。

『ミチル』における戸田の演技の注目すべき点は、20代の女性の中にある、自分でも理解していない不安定な感情を見事にすくい上げていたことだ。

やがてミチルは2億円の宝くじに当せんしたことがきっかけで、ドミノ倒し的に事件が起こり、漂流するような人生を過ごすことになるのだが、彼女の何を考えているのかわからない短絡的な行動は妙にリアルで、一見、普通に見える人でも、こういう不安定さを心の奥底に抱えて生きているんだと実感させてくれた。

『大恋愛』の脚本家・大石静は、『ミチル』の戸田の演技を絶賛していたが、尚が婚約を破棄して真司との格差恋愛に突き進んでいく姿は、自分を抑えられないミチルの不安定さを恋愛衝動に落とし込んだような、どこに向かうのかわからない演技だった。

戸田は、普通の人間が無意識に抱え込んでいる、コントロールすることのできない衝動を表現にできる稀有な女優なのだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

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