『獣になれない私たち』は『逃げ恥』に乗っかった…はウソ。芸能マネが知るドラマ制作の舞台ウラ

wezzy

2018/12/6 12:05



「現役マネージャーが語る、芸能ニュース“裏のウラ”」第6回

どうも、ドラマ大好き芸能マネージャー、芸能吉之助です。

今クールの連続ドラマもいよいよ終盤戦に入ってきました。みなさん、ハマったドラマはありますか?

初回の視聴率が高かったのは、さすが安定のテレ朝ドラマ『相棒season17』(今回も“相棒”は反町隆史)と『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(主演は安定の米倉涼子)、話題性の高さでは『今日から俺は!!』(日本テレビ系)あたりでしょうか。主演の賀来賢人、伊藤健太郎や清野菜名、橋本環奈らキャストたちの顔芸を含むギャグの連発、そして小栗旬山田孝之など超豪華ゲストが理髪店の店員や風俗店の店員など「まさかこんな役で!?」というチョイ役で登場するなどで、SNSやネットニュースは毎回大騒ぎでした。

その他、ムロツヨシの二枚目演技が意外(失礼!)な大ハマリを見せた『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)や、「(教師と中学生男子の恋愛が)気持ち悪い」「黒岩くん(岡田健史演じる男子生徒)にときめく」と好き嫌いがハッキリと分かれてしまった有村架純ちゃん主演の『中学聖日記』(TBS系)がよく話題になっていました。

そんな中、僕が一番楽しみにしていたのは、なんといっても『獣になれない私たち』(日本テレビ系)です! 新垣結衣ちゃん主演×野木亜紀子さん脚本という、ちょうど2年前に大ヒットを記録した『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)タッグの再来とあって、世間的にも事前の期待度・注目度はぶっちぎりナンバーワンだったのですが……フタを開けてみたら、視聴率は初回11.5%→第2回8.5%という急落ぶり。後半に向けてだんだん持ち直してきたものの、6%台まで下がった回もあったりして、かなり拍子抜けというか、トホホな結果となってしまいました。

これはたぶん、第1回でガッキー演じる主人公の苦悩をじっくり描いたせいでしょうね。強烈なワンマン社長のパワハラ、クライアント先でのセクハラ田中圭演じる恋人との行き詰まった関係……。野木亜紀子さんの脚本がうまいだけに、リアルすぎて見ていて胸が詰まるほどでした。『逃げ恥』のような明るいラブコメとガッキーの弾ける笑顔を期待していたところにあの内容ですから、初回を見て脱落した人が多かったんでしょうね。

でも、脚本も演出もキャストの演技も、すみずみまでつくり手の魂が感じられるとても面白いドラマで、僕は大好きですよ~!
「『獣になれない私たち』は『逃げ恥』に乗っかった」のウソ
 脚本の野木亜紀子さんは、みなさんもご存知の通り超売れっ子の脚本家。役者に「この人の脚本で演じたい」と、今一番思われている人といってもいいんじゃないかな。新垣結衣ちゃん主演だった『空飛ぶ広報室』(2013年、TBS系)、黒木華ちゃん主演だった『重版出来!』(2016年、TBS系)、そして『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年、TBS系)など原作モノを多く手がけ、満を持して世に放った久々のオリジナル脚本が、石原さとみちゃん主演の『アンナチュラル』(2018年、TBS系)。このドラマのヒットで、「この人の脚本なら見てみようかな」と思わせる、人気脚本家の地位を盤石にした感がありますね。宮藤官九郎さん、岡田惠和さん、遊川和彦さん、坂元裕二さん、古沢良太さん、森下佳子さんのように、脚本家の名前で、ある一定の視聴率を見込めるポジションです。

今回の『獣になれない私たち』は、野木さん×ガッキーの再タッグということで「ヒットした『逃げ恥』の二匹目のドジョウを狙ってる」なんて、サイゾーみたいな(笑)いろんなメディアがテキトーな記事を書いてたけど、んなわけないでしょ! 逃げ恥がヒットする前からすでに考えていた企画だと思いますよ。

というのも、ドラマ制作で売れっ子の脚本家さんを使いたいといったような場合、主要キャストよりもまず先に、脚本家を押さえるんですよ。野木さんクラスになると、たぶん2年以上先のスケジュールしか押さえられないでしょうね。

脚本って、やっぱり準備にものすごく時間がかかるんですよ。特にオリジナル脚本の場合、何をテーマにするのか、そのためにはどういう取材が必要になるのか。小説家もそうですけど、たとえば林真理子さんがNHK大河ドラマの原作となった小説『西郷どん!』を書いたときだって、西郷隆盛ゆかりの地を訪ねて、遺族に会って……というところからのリサーチを1~2年くらいかけてやって、それからやっと執筆を始めたらしいです。脚本を書くのもそれに近い作業で、ちゃんとしたものを書こうと思ったら、そんなに短期間ではできない。

でも一時期、そういう手間を惜しんでお手軽に書かれたドラマが増えちゃったから、ドラマの質が下がってしまって、みんなが原作モノに逃げたという時期がありました。ドラマの原作になるマンガや小説って、編集者や作者によってすでにものすごくリサーチされて完成されたものだから、準備期間が短くてもすぐに脚本化しやすい。オリジナル脚本で、面白い作品を作るっていうのは、やっぱりすごく骨が折れることなんです。

主要キャストのスケジュールを押さえるのももちろん大事なんだけど、それは、撮る時期をずらしたりとかでなんとかなるものなんですよ。たとえば、『アンナチュラル』や、今放送している『今日から俺は!!』は、実はオンエア前に全部撮り終わっちゃってる。脚本さえあれば、そういうやり方もできるので、とにかく、まずは脚本がどうなるかが一番大事なんですね。

『獣になれない私たち』は、プロットの段階で、野木亜紀子さん、演出の水田伸生さん、プロデューサーの3人で「このキャラを演じるのは誰がいい?」と話し合って、当て書き半分、キャラ先行半分で書いたらしいので、最初から『逃げ恥』の“二匹目のドジョウ狙い”だったなんて志の低い作品じゃ、絶対にないんですよ。僕がこの連載を始めた理由でもあるんだけど、ほんと、お粗末で好き勝手言ってるアヤシイ記事ばっかり掲載してるウェブメディアが多いんですよね。

「バズったもの勝ち」と語る野木亜紀子氏
 この10月に『獣になれない私たち』と並行して放送されていた野木さん脚本のドラマ『フェイクニュース』(NHK総合)も、まさにそういったメディアの誤報やウソのニュースをテーマにした内容でした。

最近、SNSで情報発信をしている脚本家の方は多いけど、野木亜紀子さんはこんなテーマを題材にするだけあって、SNSの使い方もものすごく上手い。彼女のTwitterはすごく面白いんですよ。自分が携わったドラマのこともいろいろ語っていて、私のドラマはこう見てほしいとか、こういうこと言ったらネットで叩かれるのもわかってるけどこう書きますよ、なんて、かなりぶっちゃけているけど、そのぶっちゃけ方がまたうまい。

この間、雑誌の対談で「私は“バズったもの勝ち”というとおかしいかもしれませんが、バズる分にはいいかなと思ってます」「(よくないバズり方をしても)結果としてそれで話題になって、途中からでも見ようかなと思ってくれる人が増えたらいいなと」(KADOKAWA刊「週刊ザテレビジョン」)と語ってましたが、やっぱり頭がすごくいいから、ネットで叩いてくる人たちともうまい距離感で向き合えるんでしょうね。

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それと対照的なのが、『半分、青い。』(NHK総合)の北川悦吏子さん。『半分、青い。』放送当時は、北川さんが頻繁に「神回!」と自画自賛ツイートするのがネットで叩かれまくりでした(笑)。

いやでも、アレでいいんですよ。やっぱりもう、彼女は天才なんです。“モノをつくる人は壊れてると思われるくらいじゃないといけない”という例の典型だと、僕は思いますね。自分の書いた脚本を毎回毎回「神回」と自画自賛し続けるなんて、普通の脚本家だったらまずやらないでしょう?(笑) もう十分、功成り名遂げた存在なわけじゃないですか、北川悦吏子さんって。そんな人が、あんなに叩かれることはわかっているのに、わざわざ自分をさらけ出しちゃうという。そこに、一般の人々も強烈に惹きつけられるんでしょうね。

「炎症性腸疾患」だとか「聴神経腫瘍」だとか、ご自分の病気のこともTwitterで語っておいででしたけど、脚本家が病気だったとかこの回がオススメだとかって、ただ純粋に作品を楽しみたい人にとってはノイズでしかない。でもそれをあえてさらしていく姿勢。というかもう彼女の中ではそれはさらさざるを得ないことで、そしてたたかれて、さらに人の注目を集めていく。そういうところも含めて、彼女の才能なんだと僕は思います。
「北川悦吏子先生、お控えください……」とNHKが懇願したとのうわさ
 でも北川さんの場合、ネットでたたかれ始めると自分のツイートについてあわてて弁解したりしてジタバタするのが、野木さんとは対照的なところ。でもそのジタバタぶりも含め、“天才・北川悦吏子”なんじゃないですかね。だって、やっぱり面白いですもん、作品が。

最近では、ドラマをつくる際に、局や制作側、脚本家、役者みんなでSNSで盛り上げていこうという風潮が多いんですが、『半分、青い。』のときには、逆に、NHKのほうから北川さんに対して「発言をもうちょっと控えてもらえませんでしょうか……」的なことをやんわり伝えたなんて話も聞こえてきましたよ。でも、そんなの聞く人じゃないからね(笑)。

でもですね、これが一番大事なことなんだけど、結局、作品そのものがよくない場合は、つくり手の側がどんなに騒ごうがあおろうが、絶対にブレイクしないんですよ。逆に、どんなにたたかれようがけなされようが、面白いものは絶対にヒットする。だから、「いい作品なのにあまり見られていない」っていうような作品を、たたかれてでも注目させようとするのは、特にこの時代においてはすごく大事なことだと思いますね。

まさに、野木さん言うところの、“バズったもの勝ち”ですね。

そういう意味では、テキトーな記事も多いウェブメディアだって、ニュースとして取り上げてくれるだけでありがたい存在なのかもしれないですね。テキトーだとかアヤシイだとか、ディスってばかりですみません。ウェブメディアのみなさま、これからもお付き合いのほど、なにとぞよろしくお願いします!

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