「完食教育」でカレーを戻した娘は、陰であだ名をつけられ……母が小学校に怒りの訴え!


保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。

ここ最近、幼い子どもを持つ保護者にとって、にわかに話題として上がっている“完食”。その名の通り、給食を残さず食べきるように指導するのが“完食”であり、食育の一環として教育の現場でも捉えられているようだ。しかし昨年、完食を指導された小学校の生徒たちが5人も嘔吐するなど、学校側の行き過ぎた指導がニュースに。子どもに無理をして食べさせる方針は減ってきているそうだが、ゼロになったわけではないだろう。本来なら楽しいはずの給食の時間が苦痛となっては、本末転倒と言える。

現在、30代になる世代の中には、給食の時間中に食べきれなかった場合、昼休みの時間を使って完食をさせられた苦い思い出や、好き嫌いを言わずにすべて完食しなければ、午後からの授業を受けさせてもらえなかったという経験をした者をいるのではないだろうか。こういった子ども時代に受けた行き過ぎた“完食”指導が、社会人になった時、会食を苦痛と感じる原因となるという説もある。

「もったいない」年配の先生から厳しく指導され……


 関東にある小学校に、小2の娘を通わせている真樹さん(仮名)は、食が細い娘について悩んでいる。

「夫の両親がケアハウスに入居したため、娘が小学校に入学するタイミングで、夫の生まれ育った実家に引っ越してきたんですが、娘は幼稚園で一緒だった友達がいないと、入学当初は泣いてばかりいましたね。しかもこの小学校、明治時代に創立されたため、同じ小学校に通っていたという親世代も多く、地元民の結びつきが強いんです。それも、娘により強い疎外感を与えてしまったのかもしれせん。さらに、ここは給食の指導が厳しく、なにかあると年配の先生が『もったいない』『残さないようにして食べろ』と言うので、娘を追い詰めてしまったようなんです」

周りの生徒たちは、近隣の幼稚園などが同じような教育方針であるため、“完食指導”に関しては、疑問に感じていないようだという。

「娘が通っていた保育園では、おかずなどは無理させず、『一口だけでも食べられればいい』という考えでした。娘は、元々食が細くて、よく咀嚼しないと飲み込めないんです。でも学校では給食時間が終了すると、すぐにトレーなど返さなければならないため、先生から『あともう少しだ』と言って、無理やり口に入れるように言われたようで……。娘は急いでカレーを口に詰め込み、立ち上がって廊下に出た途端、戻してしまったといいます」

この一件以来、真樹さんの娘は、同級生から、陰で汚いあだ名で呼ばれたり、「また吐いたら嫌だから」と言われて、給食の時間に同じ班の子から机を離されたという。学校側に、事実確認をし、担任にも配膳量を減らすようにお願いしたというが、“完食”指導自体は変わらなかったそうだ。

「夫に言っても、そのような風習に慣れているらしく、『今は食べられなくても、そのうち体が大きくなったら食べられるようになる』とあまり気にしていないようなんです。娘は、毎日ではありませんが、登校を嫌がる日があり、弁当対応にしてもらう相談をしようか迷っていますが、聞き入れてくれるかどうか」

学校側が完食を勧める背景には、食べきれずに廃棄される食品を減らしたいという意図があるようだ。私立の認証保育園で調理補助として働いている由香子さん(仮名)は、毎年、年末年始の献立に頭を悩ませているという。義務教育とは違い、親の仕事の都合で預けられている園児たちは、事前に登園予定日を出してもらっても、予定が変わりやすい。特に、お盆の時期や年末年始は、急な仕事や予定が入るかもしれないと、保育園が開いている日を、“念のため”登園予定にしているものの、前日や当日になって欠席が相次ぐケースもある。そうすると、最初に予定していた園児数分の食品に無駄が出てしまう。由香子さんは「給食用の仕入れ業者を利用しているため、食材の使い回しも難しい」と語る。

「廃棄食材を減らすため、普段から園でも子どもたちに、“完食”するよう勧めています。最近は、偏食の子が多くて、かぼちゃなどの果菜を使ったメニューやうどんなどに、食べ残しが目立つ傾向があります。中にはデザートの果物から食べ始めたり、ご飯をほとんど食べずに残す子もいますね」

本来なら、小さい頃から偏食にならないように、いろいろな食材を使った料理を食べさせるのは、家庭での役割だと、由香子さんは語る。しかし、実際はレトルト食品を使ったメニューや、コンビニで購入できる総菜などを食べさせている保護者も多いという。共働き家庭が増える中、それも致し方ないとは思いつつ、子どもたちが“完食”できない一因には、家庭での食事にあると、由香子さんは考えているようだ。

都内にある小学校で、教育補助員として働いていた藤本さん(仮名)は、“完食”が目に見えるルールとして常態化している状況に、違和感を覚えたそう。彼が働いていた小学校は、1学年3クラスと児童数も多く、休み時間は外遊びを促すなど、活気があった。そんな同校では、学年を越えてクラス単位で完食できた人数を競う、「完食強化週間」というものが施行されていた。その結果、食べるのが遅くて完食ができない子や、小柄で少食な子は、おかわりをするような食欲旺盛な子から、「なんで食べれないの?」と嫌がらせをされることもあったという。

「この学校では、“完食週間”の間、クラスで完食ができた人数を掲示するシステムになっていました。個人によって食べられる量はさまざまなのに、完食しなければいけないという雰囲気が漂っていたんです。ある児童は、牛乳が苦手で飲まずに持ち帰っていたのがばれ、先生から注意されていました。子どもをそれほどまで追い詰める完食週間の方が間違いなのでは? と感じますよ」

高学年になれば食べられる量もわかってくるため、給食当番に配膳量を少なくしてもらうように伝える子も出てくるが、低学年の児童はまだ自分がどれくらいの量が適量なのかわかっていないという。

「完食したらもらえるシールが欲しくて、無理やり食べている子どももいます。苦手なものが食べられたらシールがもらえるなど、完食でなくても達成感が得られるルールではダメなのでしょうか……」

性別や体格など、個人によって“適量”は違うが、給食は配膳量の基準が曖昧に見受けられる。一人ひとりに合わせた適量ではないため、“完食”が負担となってしまうのだろうあ。好き嫌いをなるべくなくし、全てを食べきること……その事実だけを見るのではなく、家庭で、そのためには何が必要かを考え、実践していく食育も必要と言えるかもしれない。
(池守りぜね)

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ