テレビ解説者・木村隆志の週刊テレ贔屓 第48回 『さんま&女芸人お泊り会』フジと日テレ バラエティの違いを見た


テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第48回は、1日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『さんま&女芸人お泊り会~人生向上の旅~』(21:00~23:10)をピックアップする。

同番組は今年5月に放送された“明石家さんま×女芸人×旅”企画の第2弾。前回は春の箱根だったが、今回は秋の鬼怒川へ。前回の放送後は、「改めてさんまのすごさがわかった」「女芸人限定なのがいい」などの称賛と、「ただの飲み会」「過剰な接待が見苦しかった」などの酷評が真っ二つだっただけに、今回はどんな変化や進化が見られるのか。

25日に放送されたばかりの『誰も知らない明石家さんま3時間SP』(日本テレビ系)とも比較しながら、バラエティ制作における両社の違いにもふれていきたい。
○すべての寸劇に絡む明石家さんま

「さんちゃんが大好きな女芸人17人が集合」というコンセプトだけに、さんまが私服で登場すると、「カッコイイ~!」「オシャレ!!」の黄色い歓声が飛び交った。

列車に乗ると、「女芸人たちが3つの個室に分かれ、さんまが20分ずつ回ってトークしていく」という。最初の“ギャル部屋”には、「風の谷のナウシカ」にふんしたブルゾンちえみ、「チャーリーズ・エンジェル」にふんしたバービー、「同窓会で再会した元カノ」にふんした山崎ケイらと、TikTokの「全力〇〇」に挑戦。

続く“スナック部屋”では、「安達祐実のお母さん」の大久保佳代子、「きな粉餅」の馬場園梓、「有働由美子のロケスタイル」の隅田美保、「物持ちが良さそうな女」の誠子とブストークを展開。「隅田にメガネをかけさせたらHIKAKINにソックリ」でドカンと笑わせた。

最後の“病気がちなメンバー部屋”では、「JR東海CMの牧瀬里穂」の光浦靖子、「キムタクの娘・Koki,」の椿鬼奴、「さんまさんに恋の病」のガンバレルーヤ・まひる、「もしも小雪がガールスカウトだったら」のガンバレルーヤ・よしこと、体温計チェック。しかし、さんまだけエラーが出て測れず、「オレは機械がきかへん体なんや」とオチをつけた。

冒頭で「ボケまくる」と宣言したゆりやんレトリィバァは、どの部屋にも入らず「菅原文太」にふんして一人芝居を連発。チャンスである反面、「特別扱いに応えられるか?」という視聴者からのプレッシャーにさらされていた。

列車内で、つかみのトークとコスプレを披露した一同は、下今市駅で下車し、「峰不二子」にふんした安藤なつと合流。バーベキューの買い出しをするために道の駅へ向かうが、さんまがしゃべりすぎて徒歩3分の道のりを10分以上かかってしまい、カメラマンから「全然進まねえ」、光浦から「日が落ちちゃうよ」とグチられる。それでも、さんまは集まるおばちゃんたち1人1人に神対応し、店員やSLの乗務員にもいちいち絡んでいった。

東武ワールドスクウェアに着くと、映画『ボディガード』、ドラマ『男女7人夏物語』(TBS系)の名シーンや、大竹しのぶとの新婚旅行でケンカしたエピソードを再現したが、さんまはすべてに参加。その後、さんま自ら運転してのドライブがはじまり、隅田がさんまのほっぺにキスしたり、大久保が「3年くらいキスしていない」、ブルゾンが「この季節は人恋しくなって困る」などの赤裸々トークを見せた。
○マジメなさんまにド下ネタの女芸人

たどり着いたのは、「廃校になった小学校をリノベーションした」という宿泊施設。昭和30年築の校舎で、「さんまと同い年(63歳)」という。

女芸人たちは手料理を作ったり、イワナのつかみ取りをしたり、さんまが「少年時代にやったトンボを取る遊び・どんやんこい」を実演したりと大さわぎ。ほどなくして夜の校庭でバーベキュー大会がはじまり、餅つき大会、夜泣きラーメンなどを経て、クライマックスの“パジャマトーク”へ。

すでにガチ飲みしている女芸人たちは、さんまに「お歳暮や年賀状は?」「楽屋のあいさつはいらない?」「葬式はどんなプラン?」「どういうときに刺激を感じる?」「どうやって子育てした?」「人を嫌いになったりしない?」「視聴率が悪いと落ち込まない?」「お笑いが下に見られることをどう思う?」「自分の武器を作るために努力した?」などとガチの質問を浴びせていく。

対するさんまは、自然体かつ率直な返事ばかりで、ここばかりは笑いなし。後輩のことを思ってマジメに答えている様子が伝わってきた。しかし、女芸人たちは「楽屋のさんまはめっちゃエロい」と笑いを差し込み、“あえぎ声選手権”を仕掛け、さんまの下半身が反応しているかを一斉にチェックし、飛び跳ねてパンツを見せようとするなど、最後にド下ネタを畳みかけた。

エンディングの「閉店ガラガラ」SURVIVAL TIMEでオンエアされたのは、オアシズとニッチェ・近藤くみこ。序盤のトークとコスプレから、中盤の寸劇や体当たり芸、終盤の下ネタとショートコントまで、笑いのバリエーションを見せて番組は終了した。つまり、「やれることはすべてやった」というほど盛りだくさんで中身の濃い番組だったと言える。

だからこそ、冒頭に挙げた「バラエティにおけるフジと日テレの違い」を感じたのだ。
○女芸人たちの可能性は広がる一方

先に放送された日テレの『誰も知らない』は、「さんまで人生変わりました」「伝説の神対応」「離婚の真相」「剛力彩芽と禁断の2ショット」など、作り込まれた台本で小刻みに笑いを見せていく形だった。一方、フジの『お泊り会』は、まさにノリ重視。ベースは提示しつつも、即興芸で「ウケたところもウケなかったところも見せる」というドキュメント性を前面に押し出す形を採っていた。

週替わりで明石家さんまの大型特番が放送されたことによって、この「台本を作り込む」日テレと「ノリを重視する」フジの図式があらためて鮮明になったのではないか。これは長年にわたって見られる傾向であり、視聴率レースで明暗が分かれた現在でもあまり変わっていない。

重要なのは「どちらかが優れている」ということではなく、女芸人にとって良い状況になりつつあること。今回の放送を見ても、「一度もボケられなかった」という明らかに向いていない女芸人がいたが、日テレのバラエティには合うかもしれない。

たとえば、日テレの『世界の果てまでイッテQ!』の「温泉同好会」も一見ノリ重視のリアクション芸に見えるが、実際は「これまでの蓄積をもとに準備する」という計算されたものだ。一方、今回の「お泊り会」は年齢も事務所もバラバラのカオスだけに計算が成立せず、瞬発力とセンスが問われる場だった。

これまで瞬発力とセンスが問われる番組は、男芸人の独壇場であり、「“女芸人”というくくりでは厳しい」という見方をされていたが、『お泊り会』の誕生を見ても少しずつ変わりつつあるのは間違いない。事実、これまで台本を作り込んできた日テレが、瞬発力とセンスを競う『女芸人No.1決定戦 THE W』(12月10日)を放送するように、局のカラーを超えて女芸人の可能性が広がっている。

最後に話を『お泊り会』に戻すと、基本的にノリで押し切りながらも、交通情報やグルメなどの旅情報も抑えるなどのフォローを忘れないなど、旅バラエティのツボはきっちり抑えていた。さらに、黒沢かずこ作詞のテーマ曲「さんちゃん紳士」をドローンでワンカット撮影するなど、ノリにクオリティを結びつけるところもフジらしい。

ともあれ、大半の視聴者が「すべての設定にノリ切れるさんまのバイタリティはすごい」と感じたのではないか。旅企画が続くかはわからないが、“さんま&女芸人”という座組は両者にとっても、視聴者にとっても継続すべきだろう。
○次の“贔屓”は…『DASH』『イッテQ』騒動の影響は?『行列のできる法律相談所』

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、9日に放送される『行列のできる法律相談所』(日テレ系、毎週日曜21:00~)。次回のMCは後藤輝基。パネラーには、田中美佐子、バカリズム、元木大介、KENZO(DA PUMP)、Niki、東野幸治、宮迫博之渡部建、磯野貴理子が出演する。

これまで視聴率レーストップをひた走る王者・日テレの象徴だったのが日曜夜のバラエティ3本。しかし、今年『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』に騒動が起こり、「かげりが見えはじめた」という声もある。

「放送開始から17年を超えた番組の勤続疲労はあるのか?」「前2番組による騒動の影響はあるのか?」などの観点から検証していく。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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