専門家に聞く、学童保育のキホン 第1回 「入ったら実は学童じゃなかった」ということも? 学童保育の基本となりたち


子どもが小学生になると、働くパパやママにとって大きな課題となるのが放課後の子どもの預け先ですよね。小学生になったとはいえ、まだまだ一人で留守番をするのは難しいと感じて、学童保育に通うことを検討しているという人も多いでしょう。「学童保育のキホン」について、全国学童保育連絡協議会の事務局次長である千葉智生さんと佐藤愛子さんに話を聞くこの連載。1回目となる今回は、学童保育が始まったきっかけやその定義などについて教えてもらいます。

○基準作りが進む一方でまだ大きな格差が

――学童保育は市町村によって名称や利用方法が違っていて、すごくわかりづらく感じるのですが、そもそも、正式には何と言うのでしょうか?

佐藤:「放課後児童クラブ」というのが厚生労働省の呼び方です。市町村によってその名称や利用条件、利用方法、さらには運営者も運営形態もそれぞれに違うため、保護者のみなさんは混乱してしまうかもしれません。なぜそんなに全国で違うかと言うと、その成り立ちに理由があります。

千葉:学童保育は、1960年代位から全国的に働く母親が増えたため、必要に迫られて住民が自分たちで作ってきた、という歴史があります。自然の流れでできたものを、後から国が枠組みを作って、追いかけているような形になります。なので、全国でさまざまな形の学童保育が運営されているのです。

――統一された基準や指針も、長い間なかったのでしょうか。

佐藤:そうなんです。長年、全国で統一されたルールはありませんでしたが、2007年に「放課後児童クラブガイドライン」、2015年には「放課後児童クラブ運営指針」が厚生労働省により作られました。

千葉:ただこの基準は、保育園などのものに比べるとずっと心もとないものです。職員の配置や資格の基準については、「従うべき基準」ということで統一されましたが、集団の規模や部屋の広さなどに関しては、まだまだ各市町村で大きな格差があるのが現状です。

佐藤:さらに先月(2018年11月)には、来年度からその基準を「参酌すべき基準」とすることが決定しました。2015年に決まった基準が市町村の考え方次第でなくなってしまうことになり、私たちとしては学童保育の質の低下につながるのではないかと心配しています。
○もしかしたらそれって学童じゃないかも?

――格差と言えば、学童保育がそもそもないところや、「放課後子供教室」と一体になっているようなところもありますよね。

佐藤:なかなかわかりにくい部分ですよね。まず、私たちが学童保育と言っている「放課後児童クラブ」は、厚生労働省のもとで行われている、家庭と同じような雰囲気のなかで過ごすことのできるあそびや生活の場のことを言います。基本的には、保護者が働いているなどの理由で昼間家庭にいない小学生が対象となります。

一方、「放課後子供教室」は文部科学省が行っていて、学習支援や多様な体験活動ができる場所のことです。理科の実験や工作、地域のお年寄りとの伝承遊びなど、さまざまなことが行われています。「放課後児童クラブ」と違うのは、すべての子どもたちが対象となっていることで、保護者が昼間家庭にいるかいないかは関係ありません。

――なるほど、保護者が日中家庭にいるかいないかによって、利用先が変わると言うことなのですね。

千葉:ただ、川崎市や江戸川区、板橋区などでは、この2つが一体となった「全児童対策事業」というものを行っていて、自治体による学童保育がないところも存在しています。私たちは、この2つは連携はしても一体化すべきではないと考えているのですが、そうした動きがあるのも事実ですね。

――「放課後児童クラブ」と「放課後子供教室」を連携させる動きとは?

千葉:2015年4月に策定された「放課後子ども総合プラン」によって、小学生が放課後、安全・安心に過ごせる居場所を確保するために、「放課後児童クラブ」と「放課後子供教室」を一体的、または連携して実施することが推進されています。同じ学校の中で「放課後児童クラブ」と「放課後子供教室」がそれぞれ独立してあって、毎日もしくは定期的に、一体的に実施されるものです。待機児童を出さないために、こうした形を作っています。

――もしかすると、子どもが通う校区の学童保育が、実は学童保育、つまり「放課後児童クラブ」ではないということもありえそうですよね。

佐藤:「えっ、ここ学童じゃないの? 」と利用してから驚いたという人もいるようですね。

千葉:「放課後子供教室」はすべての児童を対象にしているため、学童保育に比べると継続性が低くなりがちです。また、学童保育の人数はおおむね40人前後にすることが国の基準にも書かれているのですが、それよりもずっと多いところもあります。子どもが通う予定の場所が、本当に学童保育なのかどうか、事前にしっかり確かめておいた方がいいでしょう。
○保護者と指導員のやり取りが重要

――障がいのある子や発達に遅れがある子でも、学童保育に入れるのでしょうか。

佐藤:学童保育は保育園とは違って、基本的には住んでいる校区によって決まります。国は、障がいがある子も受け入れられるように予算などの面からも進めていますが、それぞれの現場で対応できるかどうかは変わってきます。もし心配であれば、通う予定の学童保育か市役所に相談してみてください。

千葉:「集団生活で馴染める子ども」という言葉が入会の要件に記載されている場合があるのですが、それをどうやって判断するかは非常に難しいところです。入ってから、集団に馴染めないからと、途中で退会させられては、困ってしまいますよね。一方で、ただ受け入れればいいということではありません。受け入れたら、その子がきちんと学童保育で過ごせるように、人手を増やす、バリアフリーにするなど、そうした対策も必要になってくるからです。

――確かに。障がいがあると言っても、その度合いによってまったく違いますよね。

千葉:私自身指導員をしていた時に、重度の障がいがある子と6年生までいっしょに過ごしたことがあります。移動は車椅子なので、学童保育のある2階まで抱えて上がっていましたね。保護者と密に連絡を取って、私自身もその子の成長を感じることができました。

――そういったやり取りができると、保護者としても安心ですよね。

千葉:まずはその子にとって今何が必要なのかということを、入学前にきちんと話しておくことが大切だと思います。学童保育はサービスではなく、保護者と指導員でお互いに保育内容を作っていくものなので。それは障がいがあってもなくても同じですよね。

――誰もが平等に学童保育が使えるようになるためには、もう少し時間が必要なのでしょうか。

佐藤:学童保育は、何もルールがない中で実体化が進んでしまったので、行政としても追い切れない部分があるようです。学童保育が始まってから50~60年経って、ようやく法整備が必要だと言われ始めても、急にすべてを一つのレールに乗せるのは難しいですよね。現代のニーズに合うようにも変えていかなければならないですし、まだまだこれからと言えるかもしれません。

実は筆者自身も来年小学1年生になる子どもを持つ身。来年度からのためにも、学童保育についてもっと深く知りたくなってきました。次回は、学童保育の選び方について引き続きお二人にお話を聞きます。

○千葉智生
全国学童保育連絡協議会事務局次長
1983年から自治体職員として、公立公営の学童保育の指導員を32年勤める。市町村・都道府県の連絡協議会で、学童保育をよりよくするための活動を行ってきた。2015年から現職。
○佐藤愛子
全国学童保育連絡協議会事務局次長
自身の娘が通った学童保育で、指導員から子どもたちの話を聞くごとに、働きながらの子育てを支えられていることを実感。2004年から全国学童保育連絡協議会職員となり、2014年から現職。

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