決定「平成最後の」新語・流行語大賞。なぜあれが入らなかったのかを考察し、来年の受賞語をひとつ予想する

エキレビ!

2018/12/4 09:45

年末恒例のユーキャン新語・流行語大賞(自由国民社『現代用語の基礎知識』選)が昨日発表され、トップテンのなかから年間大賞として「そだねー」が選ばれた。受賞したのは、今年2月の平昌冬季オリンピック・女子カーリングで銅メダルに輝いた日本代表チーム「ロコ・ソラーレ(LS北見)」。選手たちは5日からアメリカで始まるカーリングワールドカップの第2節出場のため、すでに日本を出発していたことから、授賞式には、ロコ・ソラーレの代表理事で、平昌五輪にはリザーブで出場した本橋麻里が出席した。

新語・流行語大賞はパーソン・オブ・イヤーという性格が強いだけに、「そだねー」のように、それを発した人物のキャラクターがよく表れた言葉はまさに大賞にふさわしいといえる。そう考えると、今回ロコ・ソラーレ関連でもう一つノミネートされた「もぐもぐタイム」はメディアがつくった言葉であり、選から漏れたのもむべなるかなと思う。

今年のトップテンに入ったうち「(大迫)半端ないって」「スーパーボランティア」は、いずれも受賞者が辞退している。とくに後者には、8月に山口県で行方不明となった2歳男児を発見したボランティアの尾畠春夫さんに贈られるはずだっただけに、主催者からすればちょっと当てが外れたという感じだろうか。


細分化・多様化する流行語
今回のトップテンを全体的に見ると、誰もが口にしたような言葉が案外少ないなという印象を受けた。むしろ、幅広く流行したというよりは、特定の世代やネットユーザーなど一部の層で盛んに使われた言葉が目立つ。たとえば、「おっさんずラブ」(流行語というか、流行したドラマのタイトルだが)は、必ずしも高視聴率を記録したわけではなく、SNSでの盛り上がりから話題になった。

これと同じく、NHKの教養バラエティ番組「チコちゃんに叱られる」から生まれた「ボーっと生きてんじゃねーよ!」は、『朝日新聞』の哲学者・鷲田清一による連載コラム「折々のことば」でもとりあげられていたが、テレビを見ていない人には「何?」という感じだったかもしれない。やはりトップテン入りした「ご飯論法」も、昨今の政治家の発言の傾向を的確に表した言葉とは思うが、果たしてどれだけ人口に膾炙したのか、やや疑問ではある。余談ながら、この言葉の生みの親で、今回の受賞者のひとりである紙屋高雪は、先月の福岡市長選に現職の対抗馬として立候補したことでも注目された(紙屋さんのマンガ評論ブログは、私も昔から読んでいただけに驚いた)。

近年では、新語・流行語大賞以外にも、ガジェット通信などが主催する「ネット流行語大賞」「アニメ流行語大賞」(今年はいずれも昨日発表があり、それぞれ「バーチャルYouTuber/VTuber」「安室透」が金賞に選ばれた)や三省堂主催の「今年の新語」(今年は12月5日に発表)など、言葉を対象とする賞がいくつか生まれている。これもまた、流行語の細分化、多様化の表れといえるかもしれない。

来年の流行語大賞にはアレが入る!?
さて、今年の新語・流行語大賞では、なぜこれが入らなかったのかと思った言葉がある。それは「平成最後の~」というフレーズだ。ノミネートさえしなかったものの、昨日の授賞式では、司会者や選考委員から盛んに「平成最後の新語・流行語大賞」という言葉が飛び出していた(なお、前出の「ネット流行語大賞」では銀賞に選ばれている)。

考えてみれば、昭和の時代には「昭和最後の~」という言い方はしなかった(平成改元後に振り返ってそういうふうに言うことはあっても、リアルタイムでそういうふうに言い切ることはできなかった)。それ以前の大正、明治についても同様である。これは明治以降、天皇の代替わりは崩御のときに限定され、元号も天皇一代につき一つ(一世一元)と定められたためだ。いや、江戸時代以前にも、改元があらかじめ民衆に告知されることなどなかっただろうから、元号について「最後の~」という言い方が可能となったのは、平成が日本史上初めてと言って間違いない。

「平成最後の~」という物言いには、何となく祈りのようなものも感じる。平成の30年間、日本は長らく経済が停滞し、震災や風水害など自然災害も頻発した。それだけに世間には、天皇が代替わりし、元号も変わることで、気分を一新しようというムードが何となく漂っている。もちろん、来年の改元後の時代がよくなるという保証はどこにもないのだが、たとえ気休めでもそうなってほしいという期待を抱いている人は少なくないはずだ。

明治になって一世一元と定められる以前は、一人の天皇の在位中に何度も改められることは珍しくなく、天変地異や疫病の流行、戦乱などの厄災を避けるための改元もよくあった。とすれば、来たるべき新元号に対し国民が期待してしまうのは、本来の改元のあるべき形のようにも思える。

とはいえ、改元しても、大きな自然災害は残念ながら今後もなくなることはないだろう。今年の新語・流行語大賞では、今夏の猛暑について気象庁が記者会見で用いた「災害級の暑さ」がトップテンに入った。歴代の受賞語を振り返ると、平成2(1990)年には「気象観測史上(はじめての…)」というフレーズが受賞しており、ここ30年間で異常気象が“常態化”した感を抱く。過去の受賞語との関連でいえばまた、昭和末の1988年にはタレントのアグネス・チャンの子供を連れての出勤をめぐる「アグネス論争」が、翌89年、平成元年には「セクシャル・ハラスメント」が受賞したが、今年のトップテンに入った「#MeToo」はその流れを汲むものといえるし、30年経ってもなお解決していない問題があることをうかがわせる。

なお、平成元年にはずばり「平成」も受賞している。この前例でいけば、来年の新語・流行語大賞にはきっと次の元号もトップテン入りするのではないだろうか。
(近藤正高)

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