「今も週に一度は食べ吐き、それでも”盗まない”生活がどれだけ幸せか」万引きで執行猶予判決の原裕美子被告が胸中語る

AbemaTIMES

2018/12/4 18:40


 執行猶予中に万引きをした女子マラソン元日本代表の原裕美子被告に再び執行猶予付きの判決が言い渡された。同日放送のAbemaTV『 AbemaPrime 』に本人が出演し、これまでの経緯と今後の抱負を語った。

2005年の名古屋国際女子マラソンで優勝、さらに2010年には北海道マラソンでも優勝するなど、最近までランナーとして活躍していた原被告。繰り返し万引きを行うようになったきっかけは、実業団の合宿中、監督に財布を取り上げられ、食べ物欲しさに万引きをしてしまったことだったという。

「高校までは走ることが大好きだったし、ストレス発散方法だった。でも実業団に入ってからは厳しい体重制限を課され、仕事だから走る、体重を落とすために走る、全てがそうなった。超が付くほどの徹底管理で有名なチームだったので、体重管理のために合宿中の買い食いも禁止された。隠れて行く人もいて、何回も捕まった私は常習犯だからと監督に財布を取り上げられた。食べたいものも食べられない。それを毎日、何カ月と繰り返していく中で、目についたものは何でも食べたい。それくらい食べたい欲求が止まらなかった。監督に渡す前に財布から抜き出したお金も底をつき、それでも目に入ったパン、お菓子が欲しくなって、取ってしまった」。

 1日6回の体重測定を課された結果、食べては吐くことを繰り返す摂食障害になり、歯は胃酸でボロボロになった。さらに「給料の未払いが続いたり、架空の会社への出資で780万円の被害を受けた」「婚約トラブルで約400万円の被害を受けた」「事件が報道され人の視線を恐れるようになった」といった理由から、万引きを繰り返すようになり、"窃盗のための窃盗"、「窃盗症」に陥った。

「罪悪感はあった。取ってきたものを使うわけにもいかないし、親が悲しむんじゃないかと思って、机の引き出しの奥の方にずっとしまったまま。でも、自分が追い込まれていた時、金銭トラブルにあった時にはもう盗らずにいられなかった。コーチに騙されて相当な額のおカネを失った時とかは、万引きをしたことでの達成感も確かにあった。取ることで辛さを忘れられるということもあった。家に帰ると苦しみ、嫌なことが頭の中をぐるぐる回って、それを忘れるために寝る時間を削ってまで食べ、吐いていた。相手はどう思うだろう、迷惑なんじゃないかと思うと、周囲に打ち明けることもできず、全て自分で抱え込んでいた」。

 悪いことだということも理解しており、やりたくないと思っていても、物を取ってしまう日々。「回数は数えられない。前回の逮捕で警察が発表する前にも5回捕まった」。捕まることで、万引きをやめられるという安堵感もあったという。「捕まればやめたいと思っている万引きもやめられる。寝る時間を惜しんでまでやり続けていた食べ吐きもやらなくて済むと思った」。

しかし、執行猶予付きの有罪判決を受けてからも、苦しみは変わらなかったという。

「自業自得だけれど、大きく報道されて、私のことを知らない人がいない。中学卒業してからずっと家を離れていて、戻ってきた頃には誰も友だちがいなかった。でも地元では私のことを知らない人はいないし、"あの人、原さんだ"と距離を置かれていることが寂しかったりもした。お店に行っても必ず見られているし、どこにいても見られている、遠くからも望遠鏡で覗かれているという恐怖が抜けなかった。夜も眠れず、布団にくるまって自分の名前がネットに載っていないかチェックしていた」。

 そんな中での再犯、そして今回下された、再びの執行猶予付き判決。奥山雅哉裁判官は「あなたは摂食障害で窃盗を繰り返してきたが、自分が変わることで同じような苦しみを持つ人たちを救い、勇気を与えてほしい。あなたには努力する才能もあると思う。その才能を使って再犯しないことを期待する」と説諭した。この"もう一度、社会内での更生の機会を与えるのが相当"とする判決について、原被告の弁護士である林大悟弁護士は、「これからの原さんの生き方、回復の仕方こそが問われていると思う」と話している。

 NPO法人「全国万引犯罪防止機構」の理事も務める菊間千乃弁護士は「万引きは再犯率が高いことが問題点で、平成29年で50.9%、つまり2人に1人がまたやるという計算だ。単純に自分の欲望のままに取るひとだけでなく、認知症でやってしまう高齢者や、依存症のフリをする人もいるが、そうした内訳が分析されておらず、再犯防止のための検討も進んでは居ない。ただ、窃盗症はアルコール、ギャンブル、薬物と同じような依存症だ」と話す。

 そこで最近では犯罪行為に至る問題を社会で更生支援し、解決するという"治療的司法"の考えが広がってきているのだという。「普通は罪を犯せば懲役刑か罰金刑になるが、窃盗の場合、それが功を奏さない犯罪。特化したプログラムを経験させることでしか再犯を防げないのではないかということが分かってきた。原被告の場合も、執行猶予中の再犯なので、通常だったら実刑。もちろん治療を受けることが前提だし、更生のためのプログラムを受けていると裁判の中で話しているので、そこが評価されての判決だと思う」(菊間千乃弁護士)。

 原被告の場合、店舗のセットの中で万引き行為を行い、捕まることを繰り返す"疑似万引き"という治療を受けているという。「取りたい欲求を思う存分楽しみながら、むさぼるようにする。バックに入れて、そしてセットから出ようとしたところで、警備員役の看護師さんに回収される。このことで、"そんなことをしても何の得にもならないんだ、無駄なことなんだ"というのをきちんと自分に埋め込んでいく。ストレスに耐えきれずに万引きをしてきた私にとって、治療効果を最も大きく感じた。ストレスを溜めないようにするというところから気をつけている。また、摂食障害を治すためにも、食べること以外の楽しみを増やす。あとは人に相談し、打ち明けることも心がけている」と話す。

今でも週に一度は食べ吐きしてしまうというが、「ようやく走ることが楽しいと思えるようになった」とも話す原被告。「自分のしたことでお店に迷惑をかけてしまい、そこに買い物に来ていたお客さんにも嫌な思いをさせてしまった。それはすごく申し訳ないと思う。落ちるところまで落ちて、当たり前の生活を送れることがどれだけ幸せなのかというのを本当に感じた。だからその当たり前のことを壊さないように、治療を精一杯続け、再犯しないというのが大事なこと。その最後のチャンスを頂けたことに本当に感謝しているし、これを無駄にしないで、私ができることに精一杯取り組む。現役時代から私のことを応援してくださったファンの方の思いを無にするようなことを私はしてしまった。それを消すことはできないけど、これから与えていただいたチャンスを活かして、失ってしまった信頼を少しずつ回復させていただきたいた思う」と語った。

 他方、犯罪白書によれば、我が国の万引被害は年間4615億円、一日あたり約13億円にも上る。書店の場合、1冊の被害額を補填するのに10冊以上の売上が必要で、廃業に追い込まれてしまうこともある社会問題だ。ファッションデザイナーである渋谷ザニー氏は「小売業の身としては、物が一つでもなくなるのは大変なことだし、棚卸しやってくれている子が"何か間違ったんじゃないか"というようなことにもなる。記者会見を見ていても装いすぎだと思った。万引きは絶対悪なわけだから、人が見て、分かるように反省していってもらいたい」と指摘していた。


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