上司の社外活動はマネジメントに好影響 - その理由は?


「越境学習」とは、ビジネスパーソンが自分の所属する会社や組織の枠を超え、自ら学びの場を求めること。

今、こうした行動が、個人のキャリア発達やキャリア形成に役立つだけでなく、その個人が会社や組織にイノベーションをもたらす可能性が期待できると、注目されています。

そうした中、リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所が、「管理職の社外活動に関する実態調査」の結果を公表しました。

所長の古野庸一さんに、越境学習とマネジメントの関係について話を聞きました。

○働き方改革の鍵は男性管理職

―まず、この調査を行ったきっかけ、背景をお聞かせください。

企業が働き方改革を進めるにあたり、男性管理職がボトルネックになっているというケースがよくあります。

それは、彼らが、業績を上げながら労働時間を削減しなければならないという、厳しいノルマや役割を背負っている立場にいるからです。

でも、彼らの行動が変わらないと、会社全体の働き方改革は進みません。そういった点で私たちは、男性管理職に、かねてより注目していました。

そうした中、2017年6月に行った「職場での『自分らしさ』に関する実態調査」で、自分らしく働けていると思っている管理職の方が、部下の個性を生かしたマネジメントができていると思っている、という結果が。

また、同年10月に行った「上司の社外活動に関する意識調査(『ボス充※』意識調査)」では、社外活動が充実している「ボス充」上司の方が若い部下には魅力的に映っており、多くの部下にとって、理想の上司は、人間的な幅が広く、早く帰る人である、ということがわかったのです。
※ボス充は、リクルートマネジメントソリューションズが打ち出した新語で、上司が生活を楽しみ、社外活動が充実している状態のことを指す。

まさに、ワークとライフは表裏一体だなと。そこで、管理職の社外活動が職場や部下へのマネジメント行動に及ぼす影響を調べてみようと、今回の調査に至りました。
○上司がボス充だとマネジメントもポジティブ

この結果の主なポイントは、以下の3つです。

このように、管理職の社外活動は、職場やマネジメント行動にポジティブな影響を及ぼしている、ということが示唆されたのです。

○上司こそ社外で成長する時代

―社外活動、つまり越境学習が、管理職の人々にもたらす効果が見えてきたのですね。ところで、生活を楽しみ、社外活動が充実している「ボス充」の人々が、若い部下に魅力的に映るのはなぜなのでしょうか。

これは私見ですが、大きく分けて2つあると思います。

まず、変化の激しいこの時代、管理職も、ただ会社内に留まっているより、今社外で何が起こっていて、それに対してどう行動すればいいかを、自ら持ち帰って還元してくれるような人であってほしいと若い部下たちは思っている。

さらに、今や共働きが当たり前の時代になり、男性も女性もライフに時間を割かなければならない。

また、人生100年時代を生き抜くにあたり、1つの会社だけに依存はできない、会社の中だけでは成長できないから、会社以外の場にも自分の身を置きたい。

だから長時間労働はできない。こういったことを若い部下たちが考えていて、それを上司に理解してほしいと思っている。

だからこそ、ワークもライフも楽しみ充実させている上司が、魅力的なのだと思います。

過去に行った調査で、若い人々と管理職世代の人々の間には、労働観の違いがあることがわかりました。若い人々は、家族を大事にできない人が部下を大事にできるのか、自分の大切な人を大事にできない人は信じられないと思っています。

また、仕事以外でも自分を表現できる場があるのに、なぜ仕事に100%コミットしているのか、それはカッコよくないと思っているのです。

それに対し、管理職世代の人々は、こうした若い人の意見に共感している人と、そうでない人の2つに分かれる。

でも今回の調査で、管理職もライフを充実させている人はワークも充実しているという結果が事実として出ている。つまり、悲しいかな、「ワーク一辺倒の人」たちが変わった方がいいということになると思いますね。
○管理職世代も継続して学びを

―この時代を生き抜いていくには、管理職世代の人々は、若者からも学ぶ必要があるのですね。

人生100年時代、セカンドキャリア、サードキャリアを歩んでいかなければならないこの時代には、大人も継続学習が不可欠です。そして、若者からも学ばなければならない時代かなと思うのです。

我々が行っている「若者から学ぶ大人の実態調査」(オトマナプロジェクト)においても、若者に抱く違和感こそ学びのヒントだと語っています。

時代が急速に変化している中、ある種、若い人ほど進化していると思ったほうがいいのではないかなと思っています。

彼らの方がこれからの人生は長く、感じているものがある。さまざまな社会的な課題に、意義を見出す若者が増えている。

モノは消費じゃなくて利用できればいい。売り上げが大きくなることよりも、持続可能な社会の方が大事。

そんな若者の感性を、管理職世代が大事だと思えるかどうか。これまでの文脈とのギャップに気付かないといけないのです。

最近、アメリカでは、学生などの若者によるエグゼクティブコーチングが流行っています。「『なんのためにあなたの会社は存在しているのか』『なぜ会社を大きくする必要があるのか』『その行動は地球を破壊していませんか』」と、企業の根幹を問う内容を、経営者が真顔で聞かれ、真摯に答える必要があるのです。
○管理職に求められる能力

―これからの管理職に求められる能力で、従来と比較し、変化する部分、変化しない部分についてどう思われますか。

変化する部分、変えていくべき点は、

●部下に、ここで働く意味や意義を伝えられること。それができないと、部下は一生懸命になれないし、ついてきません。
●変化の激しい時代だからこそ、管理職の責任として、部下を成長させることも大事。
●多様性の理解。多様な価値観を尊重する。いろんな人を上手く生かすこと。
●部下の方が、ある意味で知識もスキルも上であるというスタンス、価値観を持つこと。
だと思います。

一方で変わらない部分は、

●部下の持ち味を生かすこと=タレントマネジメントを行うこと。

管理職の仕事は、部下が気持ちよく仕事をできる環境を用意すること。管理職は、タレント=部下のマネージャーになればいいのです。この点は、これからの時代にも求められる必要な能力だと思います。

―そういった上司になるためにも、学び続けること、越境学習が大事なのですね。

学びの場は身の回りにいくらでも転がっています。今回の調査でも、管理職の人々が行っている社外活動は、趣味・スポーツなどのスクールやコミュニティ、地域貢献活動やボランティア活動、ワークショップやセミナー、勉強会や研究会、副業、育児と、多岐にわたっています。

たとえば、育児も非常に大きな学びの場。事実、育休を経て復帰する人はみんな、すごくたくましくなっています。仕事に向かうスタンスも、開き直りみたいなものがあって、仕事の仕方も変わる。

会社にとってなにが大事かというようなことが考えられるようになる。そういうことを、周りも気付き、本人に明らかにしてあげることが大切です。

越境学習において大事なのは、そこから学びを得ている、成長しているということを、振り返りをして、自分で気づくこと、意味づけして言葉にすることだと思います。

○取材協力
古野 庸一(ふるの よういち)
リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長
東京大学卒業後、リクルート(現 リクルートホールディングス)に入社。南カリフォルニア大学MBA取得後、キャリア開発事業を 立ち上げ、責任者に。リクルートワークス研究所、NPO法人キャリアカウンセリング協会の立ち上げに携わる。コンサルティング事業の責任者を経て、2009年より現職。著書・訳書『日本型リーダーの研究』『いい会社とは何か』『ハイフライヤー』ほか。

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