企業型確定拠出年金、退職したらどうなる? - 個人型との違いと併せて解説


●確定拠出年金制度が誕生した背景
会社に属せず仕事をしていると、会社員は自営業の人に比べてお金の面で何かと優遇されていると感じる機会がよくあります。厚生年金や健康保険などの社会保険においてもそうですが、会社の福利厚生制度もしかり。会社によって福利厚生制度の種類や内容は異なるものの、より良い労働環境のなかで従業員がイキイキと安心して働けるため、多くの企業ではさまざまな制度を導入しています。

便利に使える会社の制度の存在を知らないため利用せず、損していること自体にも気づいていない人も案外多いようです。本連載では、そんな「意外と知られていない会社のお得な制度」を紹介していきます。今回は「確定拠出年金制度」を詳しくみていきましょう。

多くの会社では福利厚生制度として「退職金制度」を設けおり、勤続年数や退職事由に合わせて退職金の金額を設定しているのが一般的です。従来、定年まで勤め上げる人が多かった日本の企業では、定年退職金としてかなり大きな金額の退職金を支払うというのが通常でした。

そうなると、企業は退職金の原資を用意する必要があります。その方法の一つとして、いわゆる「企業年金制度」を利用する企業がありました。簡単に言うと、会社が金融機関と契約し、会社が金融機関にお金を払って、従業員の将来の退職金もしくは退職年金を積み立てていくという制度です。将来退職した従業員は、金融機関から年金や一時金として受け取る仕組みです。

この企業年金制度は、入社から定年まで同じ会社で働くのが一般的だったかつての日本型雇用には適していたかもしれません。しかし、定年まで会社に縛られない働き方が増えてきた昨今の雇用スタイルには、あまりマッチしないことがおわかりいただけるでしょうか?

理由は複数あります。例えば、会社が金融機関にお金を払って従業員のために長期の運用を目指しても、数年で退職すれば十分に運用できません。また、そもそも企業年金制度が大企業に集中していたり、自営業者との老後資金の大きな乖離など、さまざまな指摘もあったりしました。

そこで企業年金制度が見直され、2011年10月から新しく「確定拠出年金制度」が制定。退職金制度の枠内の一つとして、それまでの確定給付型の企業年金を「確定拠出年金」に切り替えて、新しく導入する会社が増えました。
○確定拠出年金とiDeCo(イデコ)の違いは?

そもそも会社の確定拠出年金は福利厚生の一環ですから、会社が従業員のためにお金を払います。あくまで会社の退職金制度として従業員ごとの拠出額は会社の定める規定に基づき、法律で規定されている上限額の範囲内で決められます。

確定拠出年金と聞くと、近年、認知度が高まっているiDeCo(イデコ: 個人型確定拠出年金)を思い浮かべる人もいると思います。iDeCoは個人が自分で加入して拠出する制度ですから、「誰がお金を出すか」の部分が異なります。自分自身で預貯金・投資信託・生命保険などのなかから運用商品を選び、60歳まで運用するという仕組みはどちらも同じですが、ほかにも異なる点がいくつかあります。相違点をまとめてみました。

なお、会社の規約で認められた従業員自身が負担した拠出金は、iDeCo同様、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。所得税・住民税が軽減されるメリットを受けられます。

●転職したら確定拠出年金はどうなるのか
iDeCoと違って会社が拠出金を出してくれる企業型確定拠出金制度。従業員にとっては大きなメリットですが、もしもその会社を60歳前に退職したらどうなるのでしょうか。結論から言うと、60歳になるまで原則そのお金は受け取れません。

確定拠出年金制度には、「ポータビリティ」という仕組みがあります。これは「資金を持ち運ぶ(移管)」という意味があり、退職時にはそれまで運用した資金を他の確定拠出年金へ移管することを示します。移管先は、退職後のスタイルなどによって異なります。

移管手続きは自分自身で行います。転職先の確定拠出年金に加入する場合は、転職先の総務や人事の担当者へ申し出します。iDeCoに加入する場合は、自分で金融機関へ連絡しましょう。
○確定拠出年金の注意点

確定拠出年金の注意点として覚えておいていただきたいのは、運用次第で60歳以降に受け取る金額が変わるという点です。確定拠出年金で運用したお金が従業員自身の老後の生活資金のもとになりますから、運用の際はリターンとリスクの割合、そして運用コストなどに注意が必要です。

加入する金融機関は会社が決め、従業員のリスク許容度などを考えながら、金融機関と相談し数種類の運用商品を用意しています。とはいえ従業員それぞれでリスク許容度は異なりますから、自分自身の許容度に合った商品を選ぶようにしましょう。会社によっては、ファイナンシャルプランナーなどによるセミナーを開催する場合があります。よくわからない場合は、まずは担当者に相談してみましょう。

また、60歳までに退職したときの移管手続きは、退職日の翌日の属する月から6カ月以内と決められています。この期限を過ぎてしまうと、自動的にそれまでの資産が現金化されて国民年金基金連合会へ移されてしまいます。その後の運用はできないうえ、管理手数料が徴収されてしまいます。退職時には速やかに移管手続きをすることが大切です。

参照: 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」

※写真と本文は関係ありません

○■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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