「普通に働けるのに、落とされることも…」根強く偏見が残るHIV・エイズ、就職差別も

AbemaTIMES

2018/12/3 14:00


 現在大ヒット公開中の映画『ボヘミアン・ラプソディ』。エイズによって1991年に45歳の若さで亡くなった「QUEEN」のボーカル、フレディー・マーキュリーの生き様を描いた作品だ。当時は治療法も確立されておらず、"死の病"とも呼ばれていたため、「HIVに感染すれば死に至る」といったイメージを持っている人は少なくない。

世界エイズデーでもある1日に放送されたAbemaTV『 AbemaPrime 』では、HIVやエイズとどう向き合うべきなのか。当事者と考えた。

■就職では差別体験も…
 HIVとは「ヒト免疫不全ウイルス」という、身体の免疫力を下げてしまうウイルスの名前であり、それによって様々な病気に罹ってしまった状態のことをさすのがエイズだ。

 財団法人で障害者支援に従事する後藤正善さん(42)がHIVに感染していることを知ったのは中学1年生の時。血友病という血液の病気を患っており、治療に使われていた薬にHIV感染者の血液が混ざっていたことから感染した。後藤さんと同じ血友病患者のHIV感染は「薬害エイズ」と呼ばれ、大きな社会問題にもなった。

 「成人するまで生きられるのか」。そんな不安に襲われた後藤さんだが、約30年経った今、世間のイメージとは異なる、ごく普通の日常生活を送っている。「結婚もして、子どもも3人いる。通勤も電車。できないことも、何かしちゃダメという制限も特にない。

一見、HIV感染者だとは分からないほど元気に見えるのは、きちんとした治療を行っているからだ。2か月に一度通院し、寝る前に5錠の薬を服用する。現在の奥さんとは再婚で、子どもたちと血は繋がっていないが、正しい治療を続けていれば、HIV感染者でも妊娠や出産は可能だといい、お酒も飲み、タバコも吸うそうだ。

 後藤さんによると、HIV感染者は「免疫機能障害」として障害者として認定され、障害者手帳も取れるようになっているという。「法定雇用率といって、企業は障害者を雇わなければならないが、免疫機能障害はちゃんと治療さえしていれば元気に働ける。そういう意味で、僕たちは企業にも貢献しやすい」と話す。それでも就職では苦戦を強いられてきた。「何回か転職しているが、私の場合、面接の段階で伝えてしまった。そこで出てくる疑問点に対しても、自分でわかっている部分についてははきちんとお答えする。そうでないものについては、医療機関にきちんと聞いてもらえるよう、情報提供をした。それでも"受け入れ体制ができていない"ということで落とされてしまうこともあった」。

 今の職場でも感染の事実を隠してはいないが、露骨に避けられたり、差別されることもなく、一緒にランチや飲みに出かける同僚たちも「"本当なの?"という感じだった。治らないとか、怖いなっていうイメージだったが、後藤さんと出会って、そんなことはないということを知った」「ずっと入院しているとか、お仕事とかは難しいのかなってイメージがあった」と口を揃える。

 後藤さんは「それこそ"これおいしいよ"って、箸で俺に食べさせてくれるし、逆のこともする。飲み物を共有することだってある。そこら辺は全然抵抗ないし、感染のリスクも全然ない。陽性の人がケガをして出血してしまった時には、自分でなんとかする。救急箱に絆創膏が入っていればOK。そういうことを知らない人たちに対しては、どうすればいいのかを伝えてあげられるといい」と話した。

■横浜市立市民病院の立川医師「日常生活の中でうつるようなものではない」
 HIVの感染ルートには、輸血や注射器の回し打ちなどによる「血液感染」、胎内や出産時の産道、母乳による「母子感染」、そして女性の場合は膣粘膜、男性の場合は精液や膣分泌液による「性的感染」がある。

 900人を超えるHIV感染症患者を診療してきた横浜市立市民病院の立川夏夫医師は、「日常生活の中でうつるようなものではない。輸血による血液感染についても、たとえば看護師さんなどが採血時に自分の指を刺してしまったときに出る血液の量が1ml~10mlくらい。この針刺しで起こる感染が0.3%。今は妊婦さんの99%近くがHIVの検査をしているし、性的感染では、男性間となるともう少し高くなるが、100回に1回の割合で感染するのではないかと推定されている。上手にコンドームをつければ、感染はほぼ防げる」と説明する。

さらに立川医師は「HIVでも長生きできる。確かにフレディー・マーキュリーの頃は致死的な疾患だったが、今は普通の人と同じように生きることができる。タバコを吸うと寿命が5、6年短くなると言われるが、HIVはそれとあまり変わらないというようなデータも出てきている」と強調した。

 きちんと治療を受ければ日常生活を送れる慢性疾患になった今、差別や偏見の解消を目的とする「世界エイズデー」を迎え、後藤さんは「差別、偏見があることは変わっていない」と指摘する。

「私はこうして顔と名前を出してお話させていただいているが、それが正しいかどうかも議論になってしまうと思う。でも、私のように感染の事実を伝えられずに生活を送っている人たちがたくさんいる。日本で感染する人が最近増えているが、"いきなりエイズ"といって、発病してから感染していたことが分かる人もいる。そういう人が身近にいるかもしれないし、もしかしたら自分自身がそうなるかもしれないということを理解してほしい。そして、感染していても普通に過ごせるということを分かっていただきたい。そして感染の可能性があるのであれば危ない行動をしないでほしいし、検査を受けてほしい。そして、感染がわかったら治療や服薬にきちんとアクセスしてほしい」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶後藤さんへの取材映像は期間限定で無料配信中

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