【TOP SECRET V12 Supra】スモーキー永田による伝説のナルド最高速アタックをプレイバック!

clicccar

2018/12/2 15:00


夢を、現実に。

湾岸最速のチューニングカーを生み出しては、公開不能な記録を樹立しつづけるトップシークレット。しかし、2007年に発表したV12ツインターボ仕様のスープラは違った。ナルド攻略をコンセプトに、世界に堂々と公開できる記録の樹立を目標に開発されていたからだ。そして2008年3月、ついにチューニングカー最速レコード更新という自身の壮大な夢を叶えるべく、スモーキー永田は南イタリアのナルド(正式にはナルドテクニカルセンター)へと挑んだのだ。【OPTION2008年4月号より】


最高速の聖地で輝きを増す金色の戦闘機

V12スープラのメイキング

V12スープラのパワーユニットは、2JZではなくセンチュリーに搭載される5LのV12ユニット(1GZ-FE)に、HKSのGT-RS改タービンを両バンクにマウントしたツインターボ仕様となる。エンジン内部は、エスコート製の5A-Gピストンに同社のB18Cコンロッドで強化し、さらにヘッドも燃焼室やポート研磨を実施。オリジナルのメタルガスケットも投入している。

さらに、ノーマルの5800rpmというローレブリミットも、L型用の強化バルブスプリングなどを流用することで7500rpmにまで引き上げられている。ラジエターは大容量タイプをリヤへと移設しているが、高速域では水温に不安があったためフロント側にも小型ラジエターを追加している。これで水温は85度前後をキープしたままオーバー300キロの世界へと突入できるというわけだ。

そんなV12ツインターボユニットの制御には、F-CON Vプロを2機使用して片バンクに1機のVプロを配するツイン制御システムを確立。結果、パワーは850psまで高められ、さらに2本のウエットショット式NOSを噴射することによって、ブースト圧1.3キロ時に実測943ps、トルクに至っては103kgmを発生するまでに進化しているのだ。

最高速に欠かせないミッションはJZA80純正ゲトラグ6速を使用し、輸出用の3.1ファイナルと275/40-19という大径のタイヤを組みあわせる。これで計算上は6速7000rpmで370キロ、7500rpmまでまわれば400キロを突破することになる。

また、空力を左右するエアロパーツも徹底チューンを慣行。オリジナルの「スーパーGフォース・ワイドボディキット」は、スモーキー永田のこれまでの経験から空力に有利な形状を最優先にデザイン。車重は1700kgと超ヘビー級だが、スモーキー永田の「最高速なら車重は多少あったほうが安定する」という経験則から軽量化はあえて行っていない。むしろエアコンやオーディオといった快適装備をすることで、リラックスして最高速に挑めるメイキングとなっているのだ。

しかし、これだけの最高速仕様をもってしてもナルドの巨大な壁はスモーキー永田とV12スープラを苦しめることとなる……。

PHOTO:Nobutoshi Kaneko

スペック

■エンジン:1GZ-FE(4996cc) HKS GT-RS改GT2835ツインターボシステム/ウエットショット式NOS×2/F-CON Vプロ×2/ORC709クラッチ/ゲトラグ6速ミッション/機械式LSD/ファイナル3.1

■フットワーク:アラゴスタ トップシークレットバージョン+ロベルタカップ/トラスト GReddyブレーキ キット(F8ポッド R4ポッド)

■ホイール:ボルクレーシングGTF(F9.5J+4 R10.5J-15)

■タイヤ:ポテンザRE050(F245/35-19 R275/40-19)

■エクステリア:スーパーGフォース ワイドボディキット

■インテリア:デフィ スーパースポーツクラスター/ブリッド セミバケ

タイヤはポテンザRE050。時速200キロ以上で走ることを前提に開発されているだけに、今回の挑戦にはベストチョイス。路面温度9度の状態で1周してきても空気圧は0.3キロ、表面温度も約10度上昇した程度で終始安定していた。

アタックドライバーは、もちろんスモーキー永田。今回ばかりは私服というわけにはいかず、アライのヘルメットにアルパインスターズのレーシングスーツ、グローブで正装。「ヘルメットからの視界はいつもと違う…」とボヤいていたが、これが正しいここでのスタイル。

ナルドの全容

最高速野郎を虜にする最高速の聖地

イタリア南部、プッリャ州のアドリア海に面する港湾都市・ブリンティジ。そこからクルマで約1時間ほど南下した所に、今回の舞台「ナルド・テクニカルセンター」は存在する。プロトティーポという民間企業が運営(※2008年当時/2018年現在はポルシェが所有)している大型施設で、1975年にフィアットが自社テストコースとして作ったのがはじまりだ。その後、1999年1月にプロトティーポ社が買い取り、現在に至る。

最高速テストを行うのは、メイン施設の「サークルトラック」。この場所以外にも13にもおよぶテストコース(クロスカントリーコース、オフロードコース、音量測定、スキッドパッド等)が存在するが、施設内に足を踏み入れると、撮影禁止区域が非常に多かったりもする。その理由は単純明快。敷地内には、フェラーリをはじめとするヨーロッパ有数の自動車メーカーが専用のピットを持っており、連日のように新型車の極秘テストを繰り返しているからだ。

V12スープラがアタックに使用するサークルトラックは、直径4km、1周13kmにも及び、車幅も1車線4m×4車線=16mという広さを誇る。また周回路の設定速度も、イン側で408.948キロ、アウト側では492.317キロと、想像を絶するスケール。それでいながらバンク角が非常に浅いため、ドライバーにもマシンにも負担は少なく、安全面に関しては申し分無しと言えるだろう。聖地という呼称は伊達ではないのだ。

ちなみに、このサークルトラックには推奨レコードラインなるものが3車線目に存在し、このレーンはR=2.013m(1周=12.648km)で400キロ以上を出せるような設計になっているのだ。

実際に走ってみても速度感など全くなく、いつのまにか200キロ近く出ているような状態で「300キロ以上出てるのにステアリングはニュートラル位置のままだし、広いからコースサイドのカメラマンの顔も確認できるくらい余裕があった」と、スモーキー永田が驚いたほど。まさに、最高速ジャンキーにとっては夢のようなステージなのである。

画像提供:Nardo Technical Center

バンク角は非常に浅いのが特徴で、どのポイントから見ても写真や実際に見た景色はかなりコーナーがキツいような印象。しかし走り出すとステアリングはニュートラル位置のままほぼ動かない。過去にはジャン・アレジが駆るフェラーリF1マシンが走ったこともある。

24mあるテストコースの管制塔。といっても、高速周回路はこのタワーでも監視が届かないとか…。ちなみにこのタワーはナルドのシンボルでもあり、施設外からでも確認することができる。

オフロードコースや悪路など、さまざまな条件が用意されたクロスカントリートラック。オフロードのオーバルコースも用意されていたり、WRCも開催できそうなほどコースは充実している。

今アタックで問題にもなったガソリンのオクタン価。テストコース内にはガソリンスタンドが設置されているが、ここでのオクタン価は98。V12スープラは添加剤を入れてオクタン価を100まで上げたのだ。

高速周回路の中心には、清潔感のあるガレージが多数存在する。トップシークレットはリフトが2基ある一室を借りた。ちなみに隣のピットはメルセデスベンツが所有しており、その向かいはフィアット、フェラーリ、ランボルギーニと、そうそうたるメーカーが顔を並べていたのだ。もちろん金色のマシンには各メーカー大注目!

ナルドの入口に立っていた公式記録の看板。国産メーカーはホンダやスズキのバイクがいるだけで、あとは全てヨーロッパの自動車メーカーばかり。トップは1979年のメルセデスベンツC111C-Ⅳが記録した403.9キロ(2008年当時)。公式記録の申請が困難らしく、最新のものでも2002年のフォルクスワーゲンW12が最後だった。

偉大なる挑戦

エンジントラブルを抱えながらもオーバー350キロを何度も記録

最高速度は358.22キロ!

3月16日午前6時。決戦のとき。朝日がうっすらと顔を覗かせる南イタリアの朝に包まれるなか、至宝のV12ユニットは目を覚ました。コクピットには、いつになく深刻な表情のスモーキー永田がたたずんでいる。

1周約14kmという広大な「ナルドリング」で、自身がドイツ・アウトバーンで記録した341キロという最高速度の更新は絶対条件。スモーキー永田の闘志がマシン越しに伝わってくる。

そしてコースイン。与えられた時間は、泣いても笑っても2時間(占有時間)だけだ。思い残す事など何もない。自分の夢を掴むために踏み抜くだけだ。

決意のフルスロットル。V12の甲高いエキゾーストサウンドがナルドを覆い尽くす。

が、しかし…、現実は想像以上に厳しかった。なんと350キロを超えたところでオーバーヒートが発生。回転数も7500rpmまでまわるどころか、5800rpmでストップしてしまったのだ…。

「350キロを超えたあたりで、アクセルが重くなってきて加速も鈍っちゃうんだ。水温も107度まで一気に上がっちゃったし…。日本でさんざんテストしたんだけどな」。そう言い残し、再びコースイン。…無情と表現すべきだろうか。その後、何度トライしても結果は変わらず、353.88キロ、356.87キロ、358.22キロ、355.11キロ、356.21キロ…と、350キローオーバーを連続で記録するものの、目標である380キロには届かなかったのだ。そして、そのまま2時間のアタック時間が終了した。

結果、公式のMAXスピードは3本目に記録した358.22キロだった。

「シフトアップのタイミングやアクセルの踏みかたをいろいろ変えてみたけど、6速のときに高回転がまわらなくなって、5800~5900rpmで止まっちゃう。水温の上昇もそうだけど、もっと違うところに原因がある気がする…」。自分を責め続けるスモーキー永田。続けて「ごめんなさい、本当に悔しい! でも、走ってみたらパワーとか水温とかいろいろな問題点が見えた気がする。このままじゃ終われないから、もっとマシンを進化させて再チャレンジします!」。

この結果をどう受け止めるかは読者それぞれの判断に委ねるが、たった2時間のあいだに350キロオーバーを連続で5回も叩いた事実、最後まで諦めずにマシンを信じて踏み続けた闘志、そして記録を達成できずスタッフ全員に何度も謝るその姿には、カメラマンやビデオ班を含めて現場にいたスタッフ全員が強く心を打たれていた。

スモーキー永田はリベンジを誓った。そう、トップシークレットの380キロオーバーチャレンジはまだ続くのだ。そしてそれは、かなり近い将来に実現するであろう“最高速ジャンキー”からのマニフェストとして受け止めたい。

ATTACK時のV-BOXログデータ

これは高性能GPS型ロガー機「V-BOX」のログデータを切り取ったものだ。230キロからアタックを開始して最高速地点となる358キロまで急激に山が立ち上がっている。300キロオーバーの領域でもまだ加速していることを考えると、たらればの話になってしまうが、トラブルさえなければ360キロどころか380キロ到達も夢ではなかったかもしれない。

(web option編集部)

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