先延ばし人間を待ち受ける3つの悪夢--なぜ「すぐやる人」は出世できるのか


大切なプレゼン資料の作成を先延ばしにしているうちに日にちが迫り、充分な準備ができなかった。家の片づけをしようと思っているうちに、また1年経ってしまった。"そんな先延ばし体質"が、失業や病気、破産につながる悪影響を及ぼすとしたら? 先延ばしの先に起こりうる未来と、"すぐやる"を習慣化させる方法を脳のメカニズムに基づいて解説します。

○"すぐやれない"のは性格のせいじゃない

やるべきことを先延ばしにしたせいで、よい結果が得られず、自己嫌悪に陥ったことはないでしょうか。でも、面倒なことを後回しにしてしまうのは、実は人間にとって当たり前のことなのです。人間の脳は本来怠け者で、脳内では常にやる気を司る前頭葉と誘惑を優先しようとする大脳辺緑系がせめぎ合っている状態だからです。

さらに脳には変化を嫌うという特性もあります。ダイエットや禁煙といった健康につながる習慣でさえ、"超現状維持派"の脳は拒絶反応を起こしてしまうのです。

一方、後回しにしてしまうという行動を心理面から見ると、自分のやる気のエンジンにメンタル・ブレーキ(心理的抑制)がかかっている状態と言えます。

メンタル・ブレーキがかかる要因は3つあります。1つ目は別のことに気をとられてしまうこと。タスクに取り組んでいる途中でSNSやYouTubeを見てしまうのは、このパターンです。このように目先の欲求や誘惑に打ち勝つ「セルフコントロール力」が低い人は、何かをしたくなった時にその衝動を抑えることができない「衝動性」が高く、そういう人ほど先延ばしをすることが分かっています。

2つ目は「どうせ自分にはできない」というあきらめです。自分はやればできると思える感情を「自己効力感」と言いますが、これが低い人ほど先延ばしにしてしまう傾向にあります。

3つ目は作業に対して「今やる価値があるのか?」と感じてしまう心理です。そもそも人間は、やるべき理由やすぐに得られるフィードバックがなければやる気になりません。しかも「自分でなくてもできる作業」であれば、すぐやるという価値を感じにくくなります。

このように先延ばしには、脳の特性や心理面が関係しています。つまり、意思の弱さや注意力散漫、優柔不断といった性格とはほとんど関係がないのです。
○「キャリア、お金、健康」先延ばしが及ぼす悪影響

ここまで読んで、すぐやれないのは脳科学的、心理学的なものだから仕方ないと思った人もいるでしょう。でも、先延ばしにすることが、キャリアやお金、健康にまで悪影響を及ぼすとしたらどうでしょうか?

実は脳というのはいくつもの作業を同時に行うマルチタスクより、ひとつに集中するシングルタスクが得意です。やるべきことが先延ばしの気がかりな状態が続くと、マルチタスクになって前頭葉に負担がかかり、理解、会話、記憶といった能力が低下してしまうのです。しかも、脳がそういう状態の時、人は他者からの要求に屈しやすくなることも分かっています。つまり営業などの交渉ごとにも負けやすくなるということです。

さらにある研究では、チーム内の誰かの先延ばしによって仕事が進まず、それが原因で発生するメンバー同士の衝突が企業を脅かす要因になることが分かりました。しかも、1人の先延ばしぐせは周囲にも伝染しやすいのです。

当然、先延ばしを続けていると、時間的にも心理的にも余裕のない状態が続くことになります。自分と向き合う時間が取れなくなるので、他人の感情を理解する能力まで低下してしまい、人間関係もうまくいかなくなるのです。その結果、当たり前のことですがこのような人に会社が重要な仕事を任せるわけはありません。少しの先延ばしが仕事を失うリスクになるのです。

また、先延ばしにする人は、貯金するという目標よりも目先の楽しみにお金を使ってしまうので、お金が貯まらないことは想像しやすいと思います。しかしそれだけでなく、レンタルビデオや公共料金の支払いに延滞すると、1回に数百円ほどの金額が上乗せされます。チリも積もれば山となります、こういうタイプの人はいつまでもお金が貯まらない上に、最終的に人としての信用をなくす事態にもなりかねません。

先延ばしの典型といえるのが、健康に害するとわかっているタバコやお酒などの嗜好品を控えることや、健康診断をずっと後回しにしたりするという行動です。このような方は病気にかかるリスクも高くなります。でも、それ以上に恐ろしいのは、先延ばしするストレスが将来、その人の生命を脅かしかねないほど体にダメージを与えることです。

私たちの脳には扁桃体というストレス耐性に関係する重要な部位があります。先延ばしのストレスが高まりすぎると、最終的には扁桃体はストレスを抑えるために働きだし、コルチゾールというストレス抑制ホルモンを分泌させます。このコルチゾールの分泌が長期的に続くと、心拍数や代謝を急激に上げ、動悸が激しくなるという弊害が生まれます。

また、白血球は体内に侵入してきた外敵を退治しますが、その働きを制御しているのがコルチゾールです。コルチゾールが分泌され続ける異常な状態が続くと、白血球をコントロールできなくなるため、体内組織が炎症にさらされるリスクも高くなるのです。

このような体への影響がある為、先延ばしによって死亡リスクが高くなることは言うまでもありません。
○"すぐやる"が自然に習慣になる行動のルール化とは?

ここまで読んで、「先延ばしはやめよう」「先延ばしグセを直したい」と思ったのではないでしょうか。実は脳の特性や心理学を利用して「すぐやること」を習慣化できる方法を2つ紹介します。

まず1つは「帰宅して着替えたら、すぐに腹筋をする」というように、きっかけ(トリガー)になる状況と、習慣化させたい行動をルール化してしまうことです。

私たちの脳は「XならYする」といったルールの記憶が得意です。そのため、そのルールに従った行動は習慣化しやすいと考えられています。

この時、「1つ手をつけたら、一度で終わらせる」というルールもプラスすると、作業がやりかけにならず、必ず終わらすことができるようになります。

もう1つはごほうび作戦です。これはやりたくない作業と好きなものを組み合わせる方法で、高い効果が証明されている「誘因バンドル」という目標達成のテクニックです。

例えば、洗い物を溜めがちでチョコが好きな人が、洗い物が終わった時だけチョコを食べてよいと決めます。このルールに則ってくり返し行動していくうちに、自然に思考と行動が「自動化」されていきます。より効果を高めたければ、チョコを自分では出せないように誰かに管理してもらったり、できなかった時は第三者によるペナルティを設けたりすることも効果的です。

めんどくさいと思う行動を本人の意思とは関係ない「自動化された行動」にすることで、考えたり迷ったりする必要をなくし、"習慣化"させていくのです。

このような方法で、やるべき作業に取られる時間を減らし、やりたいことに時間を割けるようになれば、仕事ではしっかりと能力を発揮でき、上司や同僚からの評価も高くなるでしょう。さらに時間に余裕ができ、趣味の時間や家族と過ごす時間も充実したものになるはずです。

○著者プロフィール: DaiGo

メンタリスト。ジェネシスヘルスケア顧問。新潟リハビリテーション大学特任教授。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業。幅広いジャンルで人間心理をテーマにした著書は累計200万部を超える。
最新刊は、『先延ばしする人は早死にする! 「あとで」を「すぐやる」に変える心理学』(世界文化社/税込1,404円)。

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