毒親になる側も不幸… 虐待を生きのびた『母さんがどんなに僕を嫌いでも』原作者は語る

女子SPA!

2018/12/1 15:45



心身ともに子供を傷つける母親とそれでも愛情を求め続ける息子の、20年以上にわたる関係を描いた映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』。

“虐待する母”という覚悟がいるであろう役にもかかわらず、「役を受けることに一切ためらいはなかった」と言う吉田羊さんの熱演や、傷ついても母と向き合い続ける息子・タイジ役の太賀さんの誠実な役作りもあり、映画を見た人々の感動の輪がいま静かに広がっています。

幼い頃から、母にののしられ、殴られ、施設に預けられ…地獄のような日々で、心身を傷つけられるだけでなく自尊心をうばわれて育ったタイジ。大人になった彼は、素晴らしい友人たちに出会うことで、生きていくことへの自信を取り戻し、母と向き合います。

どんなに母親から拒絶されても、あきらめなかった彼の勇気は大きくふたりの人生を変え奇跡を導くことに…。

映画では、予告編にもある「あんたなんか産まなきゃよかった!」と叫びながら包丁を振り回す母のシーンをはじめとした壮絶な状況が描かれます。これらはフィクションではなく、原作である同名のコミックエッセイに描かれた、作者の歌川たいじさんの実体験です。その歌川さんから、メッセージをいただきました。

(以下、歌川たいじさんの寄稿です)

◆児童虐待サバイバーの原作者から「子供を虐待しない親でいるには」

女子SPA!をお読みの皆さま、こんにちは。作家でまんが家の、歌川たいじと申します。四十歳を過ぎてから絵を描けもしないのにまんが家になり、最近では小説も書いております。

6年ほど前、「児童虐待サバイバーであるご自身の体験を描いてみませんか」というオファーを受けて、「母さんがどんなに僕を嫌いでも」というコミックエッセイを出版しましたところ、思いのほか大きな反響をいただきまして、このたび、映画化される運びとなりました。

今回はそんな私が、女子SPA!読者の皆さまに「子供を虐待しない親でいるには」をテーマに、所感を書かせていただきます。

◆「母親が苦労する社会」が虐待につながる?

2017年に警察が児童相談所に通告した18歳未満の子供への虐待は、5万件を超えました。昨今、耳を塞ぎたくなるような児童虐待のニュースが、耳に飛び込んでくることが多々あります。当然、虐待を犯した親は世間から激しく非難されます。「ひどい親だ!」「重罪にしろ!」そんな声が、ネットのあちこちから涌き出るのを、皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。

子供を虐待してはいけないということは、誰でもわかっていることです。それなのに、なぜ、痛ましい事件が起きてしまうのでしょうか。

虐待の多くは子連れ再婚家庭(内縁関係を含む)、とりわけシングルマザーが再婚した家庭で起こっています。

この日本は、シングルマザーにとって暮らしやすい国ではありません。母子家庭の約半数が貧困家庭です。ダブルワーク、トリプルワークをして、懸命に子供を育てようとするも、平均年収は200万円程度。さらに、シングルマザーに対する世間の冷たい目が追い打ちをかけます。

シングルファーザーが子育てしていたら、周囲の人たちが心配し、こぞって手助けする場合が多いのですが、それがシングルマザーだと「できて当たり前のことができていない」と批判にさらされたりします。子供の運動会にお父さんが行けない場合と、お母さんが行けない場合では、風当たりの風速は全然違いますよね。

その上、職場では「シングルマザーは子供優先で仕事の成果を期待できない」などと厄介者扱いされたりすることも頻繁に見受けられるのです。

女性が自立や精神の安定を求めて離婚すると、まるで苦行のような試練が待ち受けていたりするものなのですね。

そんな中、「やはり自分ひとりでは立ち行かない」と、再婚相手を求める気持ちが起こっても無理からぬこと。再婚相手を頼る気持ちが大きく膨(ふく)らんでしまい、見捨てられることを恐れるあまり、再婚相手が子供を虐待しても止められない…そんなケースが数多くあります。

また、再婚ファミリーもまた貧困に陥るケースが少なくありません。お母さん自身がストレスから精神が不安定になり、「言うことを聞かない」「食べ物を粗末にした」など、ちょっとしたきっかけで虐待したケースも多々あります。

児童虐待はもちろん、絶対に許されるものではありません。しかし、虐待してしまう親を責めるだけで解決する問題では決してないのです。女性ばかりが割を食う社会を少しずつ変えていく必要があるのだと、私は考えています。

◆「毒親」にならないためにできること

拙著「母さんがどんなに僕を嫌いでも」は、私が子どもの頃に母親から虐待を受けた経験を描いてはいますが、決して母親を一方的に悪者として描いてはいません。お読みいただいた方々からは、「自分は虐待まではしたことがないけれど、ストレスが高じたときに子供につらくあたってしまった経験がある」「もし支えてくれる人がいなかったら…そう想像すると、紙一重なのではないだろうか」というお便りがたくさん寄せられました。

誰もが母子ともに幸福な未来を夢見て、子供を産むのだと思います。さまざまな逆風にさらされるうちにストレスが高じ、我が子から「毒親」と思われてしまう。そんな悲劇に見舞われないように、なにかできることはないものでしょうか。

たったひとつ言えることは、「孤立しないこと」だと私は思います。児童虐待が起こった家庭の親たちは、多くの場合、世間から孤立しているからです。貧困家庭で虐待が多く起きるのは、貧困が孤立を生み出しやすいからだとも言えるでしょう。逆に貧困に直面していても、孤立しない親の家庭では虐待が起きることは少ないのです。

「頼れる人など誰もいない」「どうせわかってもらえない」「暮らしの実態を誰にも話せない」と意固地になるのではなく、相談できる人、話を聞いてもらえる人を確保することが、とても大切です。

人づきあいするお金がない、コミュニケーションが下手だというのであれば、公的機関やNPOの相談サービスなどをぜひ、利用してほしいと思います。

我が子を虐待してしまう可能性は、多くの人がゼロではないと、私は思っています。「うちの母親も、そんな、誰が落ちてもおかしくはない穴に落ちたのだろう」と、私はそう解釈しているのです。

そうならないために、相談できる相手は絶対にいるのだということを、日本の女性みんなに、ぜひ覚えておいてほしいのです。

<文/歌川たいじ & 女子SPA!編集部>

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