井上道義(総監督・指揮)×森山開次(演出・振付)が強力タッグを結成! “踊るオペラ”『ドン・ジョヴァンニ』を東京・富山・熊本で上演

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2018/12/1 15:05



2019年1~2月、2018年度全国共同制作プロジェクトとしてモーツァルト/歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全幕が東京芸術劇場、オーバード・ホール(富山)、熊本県立劇場で上演される。総監督・指揮の井上道義が演出を委ねたのはダンサー・振付家として活躍しオペラ初演出となる森山開次。外国人キャストも含め全編日本語での上演(英語字幕付)となり、女性ダンサー10人も出演する。2018年11月27日に行われた記者会見に井上、森山、歌手陣が登壇し、フォトセッションにはダンサーたちも登場した。
井上道義
井上道義

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756‐1791年)がロレンツォ・ダ・ポンテの台本を得て作曲した『ドン・ジョヴァンニ』(1787年)は、女好きの貴族であるドン・ジョヴァンニを中心に展開する喜劇的なオペラとして人気が高い。井上は2015年に本プロジェクトで同じダ・ポンテの台本、モーツァルトの音楽による『フィガロの結婚』(演出:野田秀樹)を手がけた。井上は今回森山を演出に迎えた理由について「物凄く素晴らしい才能で、いろいろな分野で活躍できる人。僕の目は絶対に間違いがない」と語り、「歌手もオーディションし今回は大いに冒険をします」と決意を述べる。そして自ら日本語監修を担い全編日本語上演に挑む。これは森山が演出しやすいようにということでもあるが、「良い意味で気楽に、誰が聴いても見ても合点がいくような入り方」で観客にアピールしたいと話す。
森山開次
森山開次

森山は天才肌のダンサーとして注目を浴び、振付も手掛けて秀作・話題作を連打し芸術選奨文部科学大臣新人賞、江口隆哉賞等を受賞している気鋭だが、オペラ初演出に期するものがあるようだ。「僕の名前を挙げていただくことは勇気が要ったと思います」と井上に感謝し「委縮することなく思い切って挑戦することが僕の役割。オペラに関してまだまだ及ばず知識も浅いですが、知らないでいる強みもあります。『こんなことはどうだろうか?』とムチャぶりをするかもしれません。ダンスが入るオペラは珍しくはないですが、より身体性を追求していく時間になれば良いなと思っています。楽しいクリエイションができれば」と進境を語った。
ヴィタリ・ユシュマノフ
ヴィタリ・ユシュマノフ

ドン・ジョヴァンニのヴィタリ・ユシュマノフは「バリトンの中で一番好きな役。初めて歌ったのがドイツ語、2回目は原語(イタリア語)、そして3回目は日本語になります。大きなチャレンジですが、日本語は綺麗な言葉で日本も大好きなので、がんばります!」と意欲満々。
髙橋絵理
髙橋絵理

日本語上演は歌手陣にとって新鮮な体験のようだ。最年長で42歳だというレポレッロ(ジョヴァンニの従者)の三戸大久は「原語世代なので、日本語でやるというのが今回初めて。最初は戸惑いがありましたが、若い世代で新しい言葉でやっていけることに興奮や期待を感じています」と話す。ドンナ・アンナ(騎士隊長の娘)の髙橋絵理も「アンサンブルでは一番トップのラインを歌うので、きちんと日本語で皆さんに届けられるように歌えたら」と続く。
鷲尾麻衣
鷲尾麻衣

騎士長のデニス・ビシュニャはオーディション時にダンスしたことを思い返し「ステージでもダンスするかな?」と笑わせる。ドンナ・エルヴィーラ(ジョヴァンニの元婚約者)の鷲尾麻衣は「エルヴィーラはヒステリックで感情を押し殺さず、大好きな人に無我夢中。女性はみんなヒステリックな部分を少なからず持っていると思うんです。そういう部分を舞台上でぶちまけられるというのは私にとっても喜びです(笑)」と豪快に話す。ドン・オッターヴィオ(アンナの婚約者)の金山京介は「32歳で一番年下だと思いますが、オペラのプロダクションで(歌手陣の年齢の幅が)上から下まで10歳前後というのはあまりなく、若いプロダクションだと感じています。オッターヴィオは、このオペラの中で唯一のテノールなので、テノールらしさを出せれば」と落ち着いた口ぶり。
小林沙羅
小林沙羅

村娘のツェルリーナを小林沙羅と藤井玲南がダブルキャストで競演する。小林は5歳の頃から17歳までクラシック・バレエを習っており「踊ることが大好き!」と目を輝かせ、「オーディションの時に3回まわってイスに座るというのがあったのですが、『絶対に歌いたい!』と思う気持ちが強くて、4回ぐるぐる回ってしまいました(笑)」と明かす。藤井は「森山さんの演出は、自分の持っているものを曝け出さないと付いていけないなというくらいエネルギーに満ちあふれています。誰も見たことのないような舞台になっていくんじゃないかな」と感じることを語る。
藤井玲南
藤井玲南

マゼット(ツェルリーナの夫)の近藤圭はバレエ一家に育ったが白タイツを履くのに抵抗がありバレエを習わず悔いているというエピソードを披露。バレエやダンスを見るのは好きで「森山さんの演出ということで、どんな化学反応が生まれるのか凄く楽しみです」と期待を述べた。
登壇者およびフォトセッションに参加したダンサー陣
登壇者およびフォトセッションに参加したダンサー陣

かつて歌手志望だったという森山はオペラ歌手たちとどうコラボレーションするのかを問われ、「踊るということは僕の中では身体という言葉と同義語です。『オペラ歌手は動かない』というステレオタイプもありますが、動かなくても踊っているような身体ができると思う。止まっていることすらも踊りだと思えば、すべてが踊りとして捉えられる」と話した。それに対し井上は「彼の言葉はとても深い。『止まっていても踊れる』というのは、日本のお能の世界の舞に近い」と指摘。「彼の良さは、ダンスを子供の頃からやっていないこと。バレエのパ(ステップ)から入ってしまうと抜けられない。遅く始めたからこそ専門性というおかしな分断から逃れられている。専門の中でのつまらない取り決めというか必要じゃないものは取り去ってくれる」と森山の才能をあらためて高く評価する。
舞台装置模型
舞台装置模型

森山が最初に受けたインスピレーションは「女性をしっかりと描いていきたい」ということ。「ドン・ジョヴァンニを取り囲んでいく女性の姿が印象に残る舞台だと思っているので、それをしっかりと描いていくことになると、ドン・ジョヴァンニ自体がまるで女性の子宮の中で暴れ回っているようなイメージを持ちました。読み替えをする演出ではないですが、バックグラウンドに女性たちを描いていきます」。そのためダンサーも10人全員が女性だ。「オーディションをしていく中で、女性だけになりました。女性を際立たせていこうと。その中で男性陣が生きてくれば」と狙いを説明した。

森山が「至極の踊るオペラ」(公演チラシ)と称する『ドン・ジョヴァンニ』。21世紀のいま、モーツァルトの名作が日本語で歌われ新たな生命を受け、オペラとダンスが分かち難く結び付く刺激的な演出で物語られる。とんでもなく面白い舞台になりそうだ。

取材・文・撮影:高橋森彦

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