嵐の中、人は本当の気持ちを叫び続ける――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第8話

日刊サイゾー

2018/11/30 23:00


(前回までのレビューはこちらから)

父親と娘の関係というのは、微妙なものである。当然「肉親」としての情はあるだろうが、一方で、年頃になると父親を嫌ったり、避けたりする人が多くいるのも事実だ。同じ「異性の親」であっても、母親と息子の関係は、もっとドライな感じがする。それとはまた違った感情が、父と娘にはあるのだと思う。

ドラマ『黄昏流星群』(フジテレビ系)第8話では、父親に対する娘の感情がひとつ露わになった。

瀧沢家にがやってきた。それぞれが胸の内に秘めていた思いが一気に吹き出し、緊張の中でも平穏を保っていた三人の関係が崩れ去った。家族とはこれほどまでに脆く、壊れやすいものだったのだろうか。

結婚を前にして、不倫相手の大学教授・戸浪(高田純次)とともに失踪した、娘の美咲(石川恋)。二人の関係を知らなかった母親の真璃子(中山美穂)は驚くが、なにより、夫の完治(佐々木蔵之介)がそれを知っていたにもかかわらず、黙っていたことにショックを受ける。

美咲の婚約者・日野(ジャニーズWEST・藤井流星)の元に謝罪に行く完治と真璃子。全てを知っていた日野は大人の対応をするが、彼の母・冴(麻生祐未)の怒りは激しく、帰ろうとする完治と真璃子に塩を撒く始末。二人はただただ謝るしかなかった。

冴にしてみれば、病に冒され、残り少ない命の中で、ようやく見届けられると思っていた息子の結婚がなくなったのである。絶望と怒り、そして悲しみは十分に理解できる。

一方で、完治と栞(黒木瞳)の関係も、微妙な時を迎えていた。美咲から「父と別れて欲しい」と言われた栞が、完治に別れを告げ、避けるようになったのだ。「どうして会ってくれないのか?」と問う完治に、「今の職場が気に入っている。社内で変な噂が立って辞めるようなことになったら困る」と答える。

これは、本心なのだろうか。それまで、栞は「瀧沢さんのご迷惑になるから……」と言い続けてきた。おそらくはこちらが本心なのだろう。しかし、相手を慮る言い方では、別れてもらえないと考えた。だからこそ、今回は、「自分が困る」、「自分のことを思ってくれるなら別れて欲しい」と、自分の気持ちに嘘をつき、別れを突きつけたのだと思う。

完治の家庭では、真璃子が少しずつ本音を話すようになっていた。娘のことをあまり心配していない様子の完治に、「他になにか気になることがあるんじゃないのか?」と、栞の存在を匂わすようなことを言うのだ。

そんな時、瀧沢家を戸浪の妻・和代(松本留美)が訪ねてくる。

往年のドラマファンなら、ここで「おおっ!」と思ったのではないだろうか。松本留美といえば、かつてドラマで数々のクセのある役を演じてきた、名バイプレーヤーである。今回のような、「夫の不倫相手の家に乗り込む」などというシチュエーションは、彼女にとってはお手の物であろう。思った通り、彼女は「絶対に離婚はしない」と言い切る、気の強い妻役を実に見事に演じていた。

一方、完治の会社でも動きがあった。「想い出ボックス」の成功により、社内でも認められた完治。何かとつらく当たってきた課長の川本(中川家・礼二)とも和解し、出向先での仕事にも、これまでなかったような楽しさを覚えるのだった。

そんな時、完治に美咲から連絡が入る。これから戸浪とロンドンに行くため、成田空港にいるというのだ。急いで駆けつけた完治に、美咲は正直な思いを話す。

栞に、「父と別れて欲しい」とお願いしたこと。それは、父を取られてしまうのが悔しいという理由からだったこと。初めて聞く娘の思いに、完治も戸惑う。想像するに、そう言われて、完治はどこか嬉しかったのではないだろうか。そして完治は美咲に言う。

「お前はいろんな人を裏切って行くんだ。絶対幸せになれ」

裏切るということは、相手の信頼や気持ち、もしかすると未来や人生までをも背負うことなのかもしれない。人を裏切ってはいけない。でももし、どうしても裏切らざるを得ない状況に陥ったなら、それだけの覚悟はしておくべきだろう。

その後、行きつけの飲み屋で偶然会い、完治の強い気持ちを知った栞は、自分も同じ気持ちだと告白し、二人は改めて、一緒に山に行く約束をする。

しかし、またしても栞を不幸が襲う。目のかすみ、手のしびれ、そんな症状を感じて、医者にかかった彼女は、母親と同じように糖尿病にかかっていたのだ。

母の苦しむ姿を間近で見てきた分、それが自分の体をも蝕んでいることに、絶望を感じたのかもしれない。彼女はまたしても、完治の前からいなくなろうとする。

そんな頃、真璃子は、日野と会っていた。以前借りていたハンカチを返していたのだ。もうこれで最後になる、そう言う栞に、日野はお願いごとをする。それに応じ、日野の家でお茶を飲む真璃子。彼女の手を握る息子の姿を、冴は目撃してしまう。そのショックからか、冴は倒れ、病院に運ばれる。容体も落ち着き、真璃子を送る日野。別れる前の車の中で、二人は抱きしめ合う。

今回、演出上の小物としてうまく使われていたのは、プリクラだった。美咲がいなくなった部屋で、真璃子は母娘で撮ったプリクラを見つける。4枚綴りで、1枚切り抜かれた写真。その1枚は、ロンドンへと旅立つ美咲のスーツケースに貼られていた。美咲の、母への思いが感じられるいいシーンだった。

次回は、完治が銀行への復帰を打診され、栞の病気は、より深刻なものになっていきそうだ。嵐の中で、徐々に本当の気持ちを吐き出すようになっていった家族。これまで本当の気持ちを抑えてきた真璃子は、日野の思いを受け入れるのか――? 彼らをとりまく嵐はまだまだ続きそうである。

(文=プレヤード) 

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