「来訪神」の祭りがユネスコ無形文化遺産に…町おこしや後継者不足解消に期待する一方、課題も

AbemaTIMES

2018/11/30 19:00


 ユネスコの政府間委員会は、秋田県男鹿の「なまはげ」や沖縄県宮古島の「パーントゥ」など全国8県、10件の伝統行事をまとめた「来神、仮面・仮装の神々」が無形文化遺産に登録された。同じく2009年に登録された鹿児島県甑島の「トシドン」に追加される形となる。

2003年に登録が始まった無形文化遺産は"言い伝え"などによる伝統表現や儀式や祭礼行事、伝統工芸、技術などを保護する目的のもので、これまで日本からは歌舞伎や能楽、和食、和紙の技術、山車や鉾が登場するお祭りなど21件の伝統芸能などが選ばれている。海外ではイタリアのピザ職人の妙技、スペインのフラメンコやフランス料理も登録されている。

「来訪神」には、秋田県男鹿市「男鹿のなまはげ」や石川県輪島市能登町「能登のアマメハギ」、沖縄県宮古島市「宮古島のパーントゥ」、山形県遊佐町「遊佐の小正月行事」などがある。

民俗学者の畑中章宏氏は「正月やお盆など節目に仮装をしたり仮面をかぶってやってくる神様で、五穀豊穣、厄を払う、幸をもたらすというような役割だ。いつ、どういう理由で始まったのかは、それぞれの地域で口伝のような形で伝えられていたりはするが、歴史的な事実は突き止めにくい」と話す。

 「宮古島のパーントゥは、体中につる草を巻きつけ、その上に泥を塗って、新築の家や集落の人、観光客の人に塗りたくる。かなり参加している感覚が強いお祭り。ただ、泥を塗られた人やカメラを汚された人が、クレームをつけるようなことが実際に起こっていて、パーントゥも数年前からは公開日を直前まで明かさないこともある。八重山の方には、一切撮影禁止の"アカマタ・クロマタ"というものもある」。

こうした祭りが沿岸部に集中している理由について、東京文化財研究所の久保田裕道氏は「東北から北陸にかけての日本海側では、海の向こうから何かがやってくるという歴史なものも踏まえている。たとえばなまはげの場合、中国大陸から漢の武帝にくっついてやってきた鬼だというのが地域の伝承なので、これも大元を辿れば来訪神だ。沖縄地方には海の向こうに"ニライカナイ"という神様がいる島などから来るんだろうと考えられている」と説明した。

 無形文化遺産に登録されることで世界的に知名度が広がり、伝統文化の保存などの道が開けることから、地元ではその効果を期待する声もある。「川越氷川祭の山車行事」のケースでは、2016年に「山・鉾・屋台行事」で登録されたことを機に知名度が大きく上がったそうだ。 その一方で、観光客急増による伝統文化の娯楽化や、祭りの趣旨を十分理解していない観光客とのトラブルなどを危惧する声もあがる。

 久保田氏は「無形文化遺産は、価値を図るのではなくその土地でやっているものを選んでいくので、実際には登録ではなく記載という。代表一覧表に記載するだけのこと。だから価値をつけるのではなく、こういったものをみんなで守っていきましょうというリストに加えていく。世界遺産の方は絶対的な価値で、世界的にこの価値を認めようという形で評価されるが、無形文化遺産の方は基本的には多様性ということなので、その土地の人が価値を認めていれば、世界中の人が認めなくても大丈夫だ。それぞれの国がしっかり保護していて、書類がしっかり完備していれば基本的には通る」と話す。


すでに全世界で399件が登録されており、1位の中国(39件)に次いで、日本は21件で2位だ。「そもそも無形文化遺産の制度自体、日本の方が事務局長をやっていた頃に中国、韓国とともにリードして作った制度。それ以前から日本は無形文化遺産の保護をしっかりやってきたので、すぐに申請することが出来た。他の国からの意見もあり、今は2年に1回しか出せないような状況になっている」。

 なまはげの場合、2011年に続いての再挑戦だ。自身もなまはげとなって行事を守ってきた双六なまはげ保存会の三浦幹夫会長はによると、少子高齢化の影響を受けて地元の青年団などの人数も減少、後継者不足が悩みの種だという。「これ以上派手なことはできないかもしれないけど、留学生とか若者を引き受けて繋げるのが私の役目かなと思っている。(海外の方にも)ぜひとも日本の文化を見に来ていただければ」と話す。

 東京でなまはげの出張サービスを展開している「出張なまはげ」のばけおにさんにも「廃れてきているので、これを機会に皆さんに知っていただいて復活してもらえるといい」と期待を寄せる。

 しかし、これについて久保田氏は「大きな街でやっているお祭りはたくさん人を呼び込めるし、スタンプラリーなどの仕掛けを作ることもできるので、観光客も増えていると聞く。東日本大震災のあと、家も財産も流され、近親者も亡くすという中、祭りを無くしたくないと流されてしまった獅子舞の道具などを拾い集める姿を見た。その意味で、無形文化遺産になることは一つの励みになると思う。ただ、来訪神のような小さな村落でやっている行事の場合、受け入れ態勢の問題もあるので、別のものとして考えないといけない」と指摘。

実際、今回の10件のうちの一つ「能登のアマメハギ」について、能登町教育委員会の担当者は「観光資源ではない。観光化をやるならちゃんとやらないといけないが、現状維持が精一杯」と話している。

 畑中氏も「宮古島でも、若い人の中にはやりたくない人もいる。パーントゥの場合、"単なる泥ではなく、ンマリガー"という、産湯と死に水をとる泉の泥を体につける。つまり地域の年配にとっては、"外の人に来てもらってまで続けるようなことではない"と言う話にもなる。見物客の目を意識して新しく贅沢にしたり絢爛にしたり、他の地域にあるものを取り入れたりもする場合もあるが、あくまでもその地域の人々の幸福であったりを目指すものそもそもお祭りが共同体の人々にとっての切実な思いをいろんな形で表現するもの」との考えを示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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