天皇・皇后の外国人支援センター訪問の背景にある安倍政権の排外主義への危機感! ヘイトスピーチ、難民問題にも強い関心

リテラ

2018/11/30 15:35


 来年4月いっぱいで退位する今上天皇と美智子皇后が、11月28日、静岡県への私的旅行のなかで、浜松市外国人学習支援センターを訪問した。

浜松市には現在、約2万4200人の外国人が在住しているという。この外国人学習支援センターでは、市が〈日本人と外国人が、ともに安心して暮らすことができるまちづくり〉を進めるなかで、〈互いの文化や価値観に対する理解と尊重を深めるのが大切〉(ホームページより)という理念のもと、外国人のための日本語教室や、本人向けのボランティア養成講座などを開催している。

報道によれば、天皇・皇后は日本語教室やボランティア講座を見学。ブラジル人やインドネシア人の生徒に「どうです、日本の生活は?」「日本の生活には慣れましたか」「大変だったでしょう」などと声をかけ、日本人ボランティアにも「日本の滞在が楽しいものになるよう、皆さんのご努力が大事ですね」などと話していたという。

日本で生活する外国人たちが、安心して暮らせる環境の整備。それは、日本人が異なる文化を尊重するのはもちろん、積極的な支援なしには改善されえない。わざわざ私的な旅行のなかで同センターを訪問し、外国人らと直接話す機会を設けたことからも、天皇・皇后のそうした思いは明らかだろう。

そして、このタイミングの外国人学習支援センター訪問は、やはり、国会でのあの件を想起せずにはいられない。そう、安倍政権が27日、衆院で強行採決させた出入国管理法(入管法)改正案だ。

周知の通り、外国人労働者の受け入れを拡大する今回の入管法改正案は、「新しい在留資格をつくる」ということ以外はほぼ何も決まっておらず、受け入れ数や報酬の水準、日本語習得の支援や相談といった支援計画の中身さえ定まっていない。また、業種によっては100%が技能実習制度からの移行が想定されているが、これをめぐっては長時間労働や賃金未払いといった法律違反・人権無視が常態化してきた。ところが、安倍政権はこうした状況を見直さず、極めて短い審議時間で強引に衆院可決に持ち込んだ。この間、山下貴司法相と法務省による失踪した外国人技能実習生の聴取票をめぐる「データ捏造」まで発覚したにもかかわらず、である。

今上天皇と皇后も、当然、こうした背景を熟知していたはずだ。もっとも、衆院での強行採決を受け、その強引な安倍政権の態度への“カウンター”として外国人学習支援センター訪問を決めたという見方は、さすがに日程的にありえないが、少なくとも、今回の私的旅行は、ふたりの要望を織り込んだものとされている。そして、天皇と皇后が、まるで安倍政権下での外国人排斥の動きに抗するかのような発言を繰り返してきたことは、れっきとした事実だ。

たとえば、美智子皇后がヘイトスピーチ問題に心を痛めていることは、これまで複数の週刊誌で報じられてきたとおり。実際、皇后は節目でその思いを直接的な言葉にしている。昨年の誕生日に際した文書コメントでは、〈心に懸かること〉として、自然災害や原発事故からの復興ともに〈奨学金制度の将来、日本で育つ海外からの移住者の子どもたちのため必要とされる配慮〉をあげた。これは、在日コリアンの子どもらが置かれた政治状況を憂慮する言葉だが、とりわけ安倍政権下では排外主義、差別主義の風潮にのって、各自治体で朝鮮学校への補助金停止が相次いでいる。そのことを意識していないわけがないだろう。

●天皇・皇后は外国人労働者が働く現場に何度も足を運んできた

昨年9月の私的旅行で天皇・皇后は、7世紀に朝鮮半島から移り住んだ高句麗の王族が祀られている埼玉県日高市の高麗神社を訪問、参拝した。報道によれば、天皇は熱心に視察し「高句麗は何年に滅びたのですか」などと宮司に尋ねたという。今上天皇は、2001年の誕生日に際した会見でも、日韓共催のサッカーW杯に絡めて、「韓国から移住した人々や、招へいされた人々によって、様々な文化や技術が伝えられました」と述べ、わざわざ宮内庁楽部の楽師のなかに朝鮮半島からの移住者の子孫がいることに触れたうえで、「こうした文化や技術が、日本の人々の熱意と韓国の人々の友好的態度によって日本にもたらされたことは、幸いなことだったと思います」と好意的に語っている。

また、天皇・皇后は外国人労働者が働く現場を何度も訪ねるなど、常に日本で暮らす外国人のことを気にかけてきた。たとえば2008年には、ブラジル人など日系南米人が多く住む群馬県大泉町と太田市を訪問、派遣労働者として働く日系外国人の人々に「どんな苦労がありましたか」などと質問し、激励している。2013年には東京都板橋区の介護老人福祉施設を訪ね、皇后がフィリピン人職員たちに「日本に来てくれてありがとう」「日本は寒いですよね。体に気をつけてください」と感謝と慰労の言葉をかけた。また、昨年のベトナム訪問に際しても、天皇は「現在我が国には、約18万人のベトナム人が留学生、技能実習生などとして滞在しています」と紹介したうえで「この度の私どもの訪問が、両国国民の相互理解と友好の絆を更に強める一助となることを心から願っています」と語っている。

皇后は、2014年にも難民支援や地雷対策活動を展開する国際NGO「難民を助ける会」のチャリティコンサートを鑑賞するなど、難民問題への関心も強い。

いずれにしても、安倍政権が“現代の奴隷制度”と批判される外国人労働者の環境改善をおざなりにし、経済界の要請にしたがって、入管法改正案をゴリ押しするのとは対象的だ。

天皇・皇后の発言や行動からうかがえるのは、外国人と日本人の双方が理解のため努力し、互いの生活や価値観を尊重するという“人間として対等なかたち”だろう。こうして振り返ってみも、今回の私的旅行での外国人学習支援センター訪問は、やはり、安倍政権が放り投げている来日・在日外国人へのケアの必要性を強く滲ませる、ふたりの“メッセージ”であったように思えてならないのである。

もちろんそれは、外国からの労働者を迎える側の国民にも向けられている。今回の入管法改正案をめぐっては、外国人労働者の劣悪な就労環境や人権侵害を懸念し、その改善を求める声とは違う文脈で、右派からは「事実上の移民政策」として「日本の国柄が変わってしまう」なる批判が盛り上がっているが、前述したように、こうした排外主義と結びつく言説こそ、天皇と皇后がもっとも憂慮している問題のひとつだからである。

ふたりが「天皇と皇后」として発言する時間はあとわずかだ。12月には今上天皇が「平成最後の誕生日会見」にのぞむ。注目したい。
(編集部)

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